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INTERVIEW

CBCの大人気クイズ番組『天才クイズ』再始動の裏側とは? プロデューサー&ディレクター&作家インタビュー

1967年から37年間のレギュラー放送でのべ11万人の小学生が出場した、CBCの大人気クイズ番組『天才クイズ』がこの夏『新天才クイズ~2023夏~』として再始動! 2022年8月放送の『復活!天才クイズ』が好評を博し、今年も特別番組としての復活が決定した『天才クイズ』。自身もこの番組を見て育ったというプロデューサー・平岩莉央とディレクター・畑本将嗣、そして今回から新たに構成&クイズ作家として参加する矢野了平に、再始動の裏側を聞いた。

<プロフィール>
プロデューサー・平岩莉央(ひらいわりお)
1992年、愛知県生まれ。中京大学を卒業後、2015年にCBCテレビに入社。報道部、営業部を経て、コンテンツ戦略部に所属。ドラマ『民宿のかくし味』『マクラコトバ』、CBCテレビ開局65周年記念番組『ツナガル、夜に。』などの企画やプロデュースを担当。

ディレクター・畑本将嗣(はたもとまさし)
1982年、愛知県生まれ。名古屋大学を卒業後、2005年にコックスプロジェクトに入社。『こども鉄道博士選手権』や『前略、大とくさん』『ウチ、“断捨離”しました!』などの制作を担当。

構成&クイズ作家・矢野了平(やのりょうへい)
1977年、埼玉県生まれ。大学時代は東洋大学クイズ研究会に所属し、2001年にCAMEYOに入社。放送作家として『高校生クイズ』『くりぃむクイズ ミラクル9』『水曜日のダウンタウン』『今夜はナゾトレ』など多くの人気番組に携わる。

――まずは今回の『天才クイズ』再始動に至った経緯をお聞かせいただけますか?
平岩 2022年放送の『復活!天才クイズ』で初めてプロデューサーとして携わったんですが、そのときに「今の時代に『天才クイズ』をやっても通用するんだ」と感じたんです。チームでお揃いのTシャツを着ていたり、親御さんが応援うちわを持っていたりしているのにすごく感動しましたし、レギュラーとまではいかなくても年に何回か特番を放送できたらいいなと思い、『新天才クイズ』として復活させるに至りました。
――前回から携わられていたんですね。
平岩 そうなんですよ。ちなみに私はそのタイミングで改めて『天才クイズ』が東海地方でしか放送されていなかったことを知って、かなりの衝撃を受けました(笑)。みんな知っているものだと思っていたので。
畑本 子供のときはわからないですよね。
平岩 前回も今回もいろんな方から「『天才クイズ』のプロデューサーやるんだって?」と声をかけられましたし、『天才クイズ』はそれだけ社内外でも注目度が高いというか、みんなから大事にされている番組なんです。
畑本 周りのスタッフから「『天才クイズ』復活するんでしょ?」って言われて、「えっ、何で知ってんの?」みたいなね(笑)。
平岩 中日スポーツさんは今回「1面にドンと『天才クイズ』の歴史をまとめたい」とご連絡をくださって、とても嬉しかったです。
――畑本さんも前回から携わられているんですか?
畑本 弊社がもともとレギュラー時代の制作に携わっていて、僕は『オトナの天才クイズ』(2016年放送)からディレクターを担当しています。大人たちがテーマソングを大合唱したり、一生懸命クイズをしたり、当時の視聴者が盛り上がるのはよくわかるんですけど、平岩さんがおっしゃったように『復活!天才クイズ』では今の子供たちも楽しんでくれているのが伝わってきて。僕が見ていた頃の『天才クイズ』では涙はあんまりなかった覚えがあるんですけど、今回は最後のほうで悔し泣きする子が続出してうるっときましたし、素敵な番組になりましたね。そういう子供たちの一生懸命さや健気さが出せたらなと思いながら作っています。
▲『新天才クイズ~2023夏~』より。

――今回は矢野さんが構成作家・クイズ作家を担当されていますが、どういった流れで矢野さんにお声がけされたんですか?
平岩 昨年、矢野さんがX(Twitter)で『復活!天才クイズ』に触れてくださっていたんですけど、実は我々もそのツイートを発見していて。いろんなご縁が繋がってご一緒いただけることになりました。
――矢野さんは生まれも育ちも関東地方ですよね。いつから『天才クイズ』のことをご存知だったんですか?
矢野 大学生の頃だったと思います。クイズ研究会に入って、東海地方出身のクイズプレーヤーに会うと「彼らには『天才クイズ』という文化がある」っていうことを知るわけですよ。で、ずっと「子供のときにそんな番組に出られるなんて羨ましいな」と思っていたんです。昨年は『アタック25』など歴史ある番組が復活するニュースもありましたし、すごくいい流れが起きていたので、純粋に「応援したい」「羨ましい」という気持ちでツイートしていました。
――矢野さんは『天才クイズ』をどういう番組だと捉えていますか?
矢野 ○×クイズの原点だと思います。『ウルトラクイズ』だったり『高校生クイズ』の予選も同じ○×で、いわば超オールドスタイルですけど、『天才クイズ』ではそれより前から、しかも小学生を対象に「間違えたら脱落、とにかく正解し続けろ!」っていうシステムでやっていたわけですから。視聴者参加型クイズ番組の基礎の基礎というか、普遍的な部分が凝縮された番組でもありますね。今回参加するにあたって見させていただいた過去の映像資料でもそれを痛感しました。
――『天才クイズ』が1967年、『ウルトラクイズ』が1977年、『高校生クイズ』が1983年放送スタートですもんね。
矢野 そうですね。『高校生クイズ』にも作家として関わっているんですが、実はここ数年は○×クイズを使わなくなってきたんです。地区大会で全国を駆け回って○×クイズの魅力を知っていた自分としてはちょっと寂しい部分があったんですけど、そのタイミングでこの『新天才クイズ』のお話をいただけて。改めてまた○×に向き合えたっていうのがとても嬉しかったですね。
――実際の制作過程としては、復活が決まってからどのように作られていったのでしょうか?
畑本 スタッフ6人くらいが集まって週1でリモートの会議を開いて、まず番組のルールと構成を作っていきましたね。どういうルールにするか、どんなタレントさんをどういう役割で起用するのか、何かテーマつけようか、とそんな話を。
平岩 「○×の2択で帽子を使うこと」だけは絶対でした。
▲『新天才クイズ~2023夏~』で使用された帽子。

畑本 あの帽子は『天才クイズ』の象徴ですからね。難しかったのは問題数かな。皆さんに馴染みがあるのって10問やっていた時代だと思うんです。でも、子供へのインタビューを入れたりVTRを面白くするには10問だとちょっと厳しいかなということで、今回は7問に落ち着きました。7問である理由づけは矢野さんに「真夏の七不思議」というアイデアを出していただいて、あとは昔の『天才クイズ』と同じように、前半4問は相談OKの団体戦、残りの3問は相談NGの個人戦という形に決めました。
――3人1組で応募というのもレギュラー時代を踏襲されているのでしょうか?
平岩 はい。私が見ていた頃の『天才クイズ』は同じ小学校の6人1組で応募するルールだったんですけど、そのチームを作るところからもう楽しみが始まっているんですよ(笑)。「弟や妹と組みたいけど、知識がある先輩と組んだほうが勝ち残れそうだし……」みたいな。だから今回もチームで応募してほしくて。
――ちなみに応募数はどれくらいだったんですか?
平岩 220組660名の方が応募してくださいました。数は多くないんですが、東海地方に昔お住まいだった方のお子さんとか、東海地方以外からの応募もありましたね。番組にかける思いやチームメンバーの情報のほか、矢野さんのアイデアでアピール動画も提出してもらっていたので、それをもとに出場する20組60名を絞りました。


――MCはパンサーの向井慧さんですが、向井さん起用の決め手は?
平岩 向井さんも愛知県出身ということで、ご自身のラジオで天才博士のものまねをしたり、『天才クイズ』みたいなコーナーを作ったりされていて、『天才クイズ』愛があるというのを私たちは知っていたんです。昨年の復活のときもラジオで「俺には声がかからなかったんだよ」とお話しされていて(笑)。だから最初から「再始動は向井さんにお願いしたい」という感じでした。そうしたらたまたま矢野さんとも親密なご関係だったので、とても話がうまくいって。
――矢野さんと向井さんはラジオでご一緒されているんですよね。
矢野 そうですね。『パンサー向井の#ふらっと』の月曜日の構成を僕が担当していて、毎週お会いしているんです。僕が知らなかった『天才クイズ』のいいところとか、向井さんなりの番組への愛情や熱みたいなものをいろいろ聞けたので、台本も書きやすかったです。
平岩 矢野さんと向井さんの間で相当詰めてくださっていましたし、打ち合わせもスムーズでしたよね。収録が始まってみると、『天才クイズ』を噛み締めている感というか……。思い違いだったらお恥ずかしい限りなんですが、「この番組を生かすも殺すも自分次第だ」というような気概を向井さんから感じました。
畑本 最初は60人もいて、どの子にインタビューしたらいいのか戸惑いはあったと思うんですけど、一人ひとりの性格がわかってくるとどんどんいいインタビューをしてくださって。子供たちはもちろん、当時の『天才クイズ』を知っている親御さんも楽しませなければ、という責任感もあったんでしょうね。
矢野 そうですね。「子供の頃に本当に好きで見ていた番組の司会ができるって、『笑っていいとも!』の司会になるぐらいの感動がある」とおっしゃっていましたから。

――昨年はロケでしたが今年はホールで収録されたということで、構成としてはよりオリジナルに近いものを目指されたんでしょうか?
畑本 そうですね。
平岩 前回はそもそもホールが使えない状況だったので大学の構内でロケをしたんですが、今回はまたホールが使えるようになりまして。画面を見たときに一目で「あ、『天才クイズ』だな」とわかるようになったんじゃないかなと思います。社内を案内するときに「ここがホールです、『天才クイズ』の」って言うとだいたい皆さんに通じるぐらいの場所なので、ここに帰ってくるんだったら、ぱっと見ただけで『天才クイズ』だとわかるような番組にしたいなと。
畑本 昨年はルールも得点制でイレギュラーでしたしね。セットや立ち位置は新しくなっているんですけど、スタジオに子供をドーンと集めて、そこで○×クイズをして、負けた子はどんどん座っていって、勝ち残った子が全問正解の天才賞を目指していくっていうのはまさにオールドスタイルというか。
平岩 かつての『天才クイズ』らしさを大事にしながらも、演者さんの出方だったり、矢野さんに入っていただいたり、そういったところで『新天才クイズ』として生まれ変わったより楽しい番組を目指さなければ、という思いでやっています。
――矢野さんが作られたクイズについてはいかがでしたか?
平岩 ものすごく考え抜かれているんだなと感じるクイズでしたね。
畑本 「○×クイズっていうのは本当に難しいんですが、毎週、珠玉の問題をお出ししていきます」ということで問題を毎週提出していただいたんですけど、選びながら純粋にクイズを楽しんでいました(笑)。
矢野 「真夏の七不思議を解き明かそう」というテーマが決まってから問題を作り始めたんですが、小学生になった気分で「身の回りにある夏の不思議」を探すことから始めたんですよ。これまでは自分の知っていることをクイズにしていたんですけど、今回はその疑問をなるべくそのままクイズに落とし込む問題作りをしたので、自分でも初めて知るようなことがたくさんありました。発見が多く、それでいて過去のノウハウもうまく生かせたかな、という感触です。
▲『新天才クイズ~2023夏~』より。

――もう一つ気になるのは天才博士に関してなんですが、今回はどのように復活させたんでしょうか。
平岩 レギュラーとしてやっていたときの3代目に近い、着ぐるみです。ただ、当時の博士はどこかに旅立ってしまっていて(笑)。
――それは残念ですね。
平岩 当時の問題なんかは見つかったんですけど、博士には出会えなかったんです。なので、当時の博士をモチーフに可愛く親しみやすいデザインにリニューアルした天才博士が登場します。パーツの形や位置を細かく相談させてもらって、サイズ感も「向井さんの身長がこれぐらいだから、画面的にはこれぐらいのサイズだと素敵だよね」という感じで具体的に詰めていって。実は当時の『天才クイズ』に関わっていた方がデザイナーさんのいる美術チームの部長さんだったりして、そういった方たちの存在も支えになりましたね。
畑本 技術さんもそうですよね。技術チームの部屋に行って打ち合わせをしていたとき、後ろのほうで大ベテランのおじいちゃんスタッフが渋い顔しながら「天才クイズだどんとこい♪」って番組テーマソングを口ずさんでいるんですよ(笑)。何も言ってはこないんですけど、ちょっと気にしてくれていたんでしょうね。直接関わっていない当時のスタッフも含めた、全員の愛情が詰まった番組になったんじゃないかなと思います。
▲レギュラー番組時代のプロデューサーが大切に保管していたという、『天才クイズ』のお宝資料。なお、2023年8月25日(金)午後3時49分~7時のCBC『チャント!』内では、再始動にあたりCBCテレビ内で発見された品々が取り上げられる予定だ。

――手応えばっちりということですね。いよいよ8月26日に再始動の第一歩となる『新天才クイズ』が放送されますが、今後への思いもぜひお聞かせください。
平岩 スポンサーさんのご意向もあるので、一概に「ずっとこの番組を続けていける」とは言えないのですが、CBCとしては、東海地方の子供向け視聴者参加型クイズ番組、教育番組として「再始動」と言っているだけの覚悟をもって今回臨んでいます。この火を絶やさずに繋げていきたいですし、今回はTVer、Locipoでの配信で東海地方にお住まいの方以外もご覧いただけるようになるので、ぜひ全国の方に楽しんでいただきたいです。
矢野 当時からクイズの環境は大きく変わっていて、クイズがより身近なものになった今このタイミングで復活するということには意味がある気がするんですよ。これをきっかけに「クイズに参加するのって楽しいよね」っていう小学生がもっと増えていって、テレビ番組の枠に収まらない大きなムーブメントになったらいいなと思っています。
畑本 かつて『天才クイズ』を見ていた子供たちがちょうど親世代になったので、そういう方がお子さんに「こういう番組があるよ。出てみない?」って勧めてくれることもあると思うんです。すごくいいタイミングで復活させることができました。ここから半年に1回、1年に1回でも放送していって少しずつ裾野を広げて、今の時代にもまた『天才クイズ』が文化として根付いていけばいいなと思います。



『Pascoプレゼンツ 新天才クイズ~2023夏~』
放送日時:2023年8月26日(土)午後1時~午後1時30分
放送局:CBC
出演者:MC・向井慧(パンサー)、応援隊・村上佳菜子/あばれる君

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