自宅にはコツコツと集めた8㎝シングルCDがJ-POPを中心に約4000枚。小学生の頃から地道に音楽の知識を積み上げた藤田は、大学入学以降イントロクイズの才能が開花し数々の大会を制すように。今では数多のイントロクイズ企画を仕掛け、イントロマエストロの肩書とともに音楽の伝道師としての役割も果たす。音楽業界が変貌する中、実はイントロクイズをフックにすれば、音楽をもっと幅広く聴いてもらえるようになるのではないか? クイズと音楽、その2つに軸足を置く藤田だからこそたどり着いた「サブスク時代のイントロクイズの面白さ」について、自らの経験とともにたっぷりと語ってもらった。(2020年3月5日収録 聞き手:海辺暁子)
プロフィール
藤田太郎(ふじたたろう) 1979年、千葉県生まれ。学生時代にイントロクイズの全国大会で優勝。「約30,000曲のイントロを最短0.1秒聴いただけで曲名を正解するイントロマエストロ」として『マツコの知らない世界』をはじめ、数々のテレビ・ラジオ番組に出演。現在はイントロクイズのイベントの企画・プロデュースを中心に活動中。2019年には『超逆境クイズバトル!!99人の壁』に「90年代J-POP」で出場し、グランドスラム達成。趣味は和太鼓。
クイズ番組と音楽
両方に夢中になった少年時代
―― 藤田さんは今やイントロマエストロとして、多方面で活躍されていますが、そもそも音楽に興味を持ったきっかけは何だったんでしょう。
小学校5年生くらいの時に転校してきたクラスメイトの影響が大きかったかもしれません。彼はレンタル屋さんで好きなCDを借りてきてはオリジナルのカセットテープを作っていたんですね。当時、周りにそのようなことをしている友達はいなかったのですごく新鮮で、そのカセットテープをちょくちょく貸してもらってたんです。で、そのうち自分でも作り始めるようになりました。それがきっかけですかね。もっと幼い頃には歌謡曲好きな祖母と一緒に『ザ・ベストテン』や『ザ・トップテン」(※共に昭和時代に人気を博したランキング形式の歌番組)を欠かさず観ていましたから、そのこともベースになってるかもしれません。
―― なるほど。周りに音楽好きな方がいらっしゃったんですね。
はい。その後中学生になって、ラジオでも歌のランキング番組をたくさんやってることを知ったんですね。中2から高3までの5年間は毎週、テレビ・ラジオの12番組のランキングをチェックしてノートにつけていました。
―― 毎週12番組のランキングをチェックするってすごいですね。
とにかく全部知っておきたい、全部チェックしないと気が済まないという思いがなぜか当時は強くありました(笑)。
―― 小中高と音楽にどんどんハマっていった藤田さんですが、そこからイントロクイズに興味を持ったきっかけはなんだったんでしょう。
僕は元々『アメリカ横断ウルトラクイズ』(※かつて人気を集めた視聴者参加型クイズ番組)が大好きだったんですよ。クイズ自体が好きと言うよりは、番組内のヒューマンドラマが素晴らしくて、小学生の頃は毎週テレビにかじりついて、さらにビデオにも録画して、テープが擦り切れるほど何度も観てました。親父に「また観てるのか」なんて言われながら。
―― 「また観てるのか」は『ウルトラクイズ』ファンのあるあるフレーズですよね(笑)
番組に参加するのが夢だったんですけど、残念ながら僕が中学の時に放送が終わってしまったんです。ただ、僕が大学入学した年(98年)の夏に、一度だけ『ウルトラクイズ』が復活したんです。そんなこともあって、大学の入学式でひときわ派手に部員を募集していたのが、法政大学クイズリバティというクイズサークルだったんです。「復活する『ウルトラクイズ』に出よう!」という謳い文句で。
―― それはすごいパワーワードだ。
「そういえば昔、ハマってたよなぁ」と懐かしい気持ちで入部を決めました。その後、新入生歓迎の早押しクイズ大会に参加したんですけど、その中のひとつにイントロクイズがあったんです。
―― おぉ、出ましたね、ここで。
そこでめちゃくちゃ活躍してしまって(笑)。さっき中学、高校時代にCDランキングをノートにつけてたって言いましたけど、部活でラジオが聴けないときは録音してたんですよ。部活が終わって、帰ってきてから録音を聞くんですが、DJが「第10位は!?」といって曲のイントロがかかって、曲名をメモってテープを早送り、「第9位は!?」で曲のイントロがかかって、曲名をメモって早送り、を繰り返していたのが功を奏しましたね。
―― 日課だったランキングメモにまさかそんな効果があったとは…。では『ウルトラクイズ』目当てにクイズサークルに入って、たまたま自分の得意分野を見つけた感じですね。
その通りです。当時、その大学はイントロクイズ好きが多かったんですよね。なので、すごく好意的に受け入れてくれて。先輩に「お前は絶対イントロの道を進んだ方がいい」と背中を押されて、それから本格的にイントロクイズに強くなろうと勉強を始めました。
―― 先輩たちもすごい奴が入ってきたぞ、と驚いたでしょうね。
そうだったと思います。僕もすぐナンバーワンになれると思ってましたね。でも、入部して4ヵ月後に開催されたイントロクイズの大会に出たんですけど、58人参加で4位だったんです。僕はランキングをメモしていた92年から97年まで(の曲)は誰にも負けない!という肌感覚があったんですけど、それ以前の古い曲はやっぱり上の世代の方たちに全く敵わなかったです。挫折とまではいきませんがすごく悔しくて。
ちょっと落ち込んでいた時、法政リバティの先輩が、渡辺啓一郎さんというすでに大学は卒業されていたもっと上の先輩と、明治大学クイズ研究会創始者の石渡健太郎さんを紹介してくれたんです。渡辺さんと石渡さんは僕より7つ、8つくらい年上で、一世代上の音楽にとても詳しくて。お二人によく新宿の歌謡曲バーに連れて行ってもらったんですけど、その時に、音楽の豆知識と共に「昔の曲って良い曲いっぱいあるんだよ」と生きた情報を教えてもらえたことはすごく大きかったですね。
イントロクイズにハマると、クイズに強くなるため「だけ」に音楽を聴くことを選んでしまいがちなんですが、そうならなかったのはイントロクイズを始めてすぐのタイミングで、渡辺さん、石渡さんのお二人に出会えたおかげです。お二人と出会わなければ「イントロマエストロ」として活動していくことは間違いなくできなかったと思います。
人気イベント
『イントロクイズナイト』の始まり
―― 藤田さんは『イントロクイズナイト』というかなり大きなイントロクイズのイベントを定期的に主催されてますよね。どのような経緯で始まったんでしょうか?
2016年にTBSのバラエティ番組『マツコの知らない世界』に出演し、「イントロクイズの世界」を紹介させていただいたのですが、それを観てくれた「QUIZ JAPAN」編集長の大門さんから、「今度東京カルチャーカルチャー(以下カルカル)でイントロクイズのイベントをやりたいんだけど、一緒にやらない?」と誘っていただいたことがきっかけですね。「ぜひ!」と返事してからすごいスピードで話が進み、2017年5月30日に1回目を開催しました。1回目終了後に、カルカルの店長の横山シンスケさんが一言、「このイベントは『ヤバい』ね(笑)」と、おっしゃったことをすごく覚えています。
―― 『やばい』とはどういうことでしょうか?
横山さんって、ロックが大好きな、とっても顔が広いイベンターさんなんですけど、その方が、「このイベントは俺がやりたかったことが全部詰まっている」と。横山さんからしたら「ロックにはこんなにいい曲がたくさんあるのに何でみんな知らねえんだよ、聴いてくれよ!」というロックンローラーの熱い思いがここですべて放出できると考えたみたいで。ロックの良さを伝えたいけど、自分の趣味ばかりを人に押し付けるわけにはいかないし……と悶々としていたのが、イントロクイズという装置を挟むことによって、みんなにいろいろな音楽を伝えることが自然とできるんじゃないかと。
―― 気付いちゃったわけですね。
気付いちゃったわけです。「これは革命だ!」と俄然盛り上がりまして(笑)。
―― 確かに普通のイベントなら好きな曲があってもBGMや出囃子でかけるくらいしかできないですもんね。
そうなんですよ。イントロクイズならBGMではなくド真ん中の主役として曲をかけることができて、しかもそのアーティストが好きで集まっているわけでない人にも届けられますから。
―― ロックの良さをたくさんの人に知ってもらいたいという思いが強かった横山さんにはうってつけのイベントだったわけですね。
そうだったようです。で、横山さんから「これ絶対面白いから毎月やってよ」とノリノリで(笑)。
―― 毎月やったんですか!?
いやいや、「さすがに毎月は無理です」とお断りし、今は年に2~3回くらいのペースでやらせてもらってます。あと今、このイベント以外にも横山さんが、イントロクイズの企画をいろんなところにプレゼンしてくれてて、決定になった企画を一緒にやらせてもらってます。一方で大門さんとも、2018年にオープンしたクイズ専門店「QUIZROOM SODALITE(クイズルームソーダライト)」でイントロクイズ出題のプレゼンターとして2年以上お世話になっていますし、そのほかの方からもイントロクイズのイベントやトークライブをやってほしいと声をかけていただいて、いろいろな切り口でイベントをさせていただいています。『イントロクイズナイト』から知り合った方々とは当時よりもさらに濃いお付き合いをさせていただいてて、本当に感謝しかないですね。
―― イントロクイズの魅力はどんなところだと考えていますか?
いろいろなクイズの中でも、はじめるのにハードルが低いというか、かなりとっつきやすいジャンルというところですかね。「クイズ」なんですけど、ベースが「音楽」なので、好きな曲、好きなアーティストが出た瞬間に誰しも早押しで正解できたりしますし。
―― 確かに自分に置き換えてみると、一般のクイズ王相手ではひとつも取れる気がしませんが、イントロクイズの場合、自分の好きなアーティストが出れば一つ二つ取れそうにも思います。
実際「クイズはやったことがないけど、音楽が好きで、イントロクイズだったら答えられるかもと思ってイベントに参加しました」という方も結構いらっしゃいますね。普通のクイズでは出会えなかった人たちが「イベントに来て、すごく音楽に対する興味の幅が広がった」と言ってくださる方も多くて。実はそれが一番やりたかったことなので、そう言ってもらえた時がすごく嬉しいですね。「クイズ」好きだけではなく、「音楽」好きも楽しめるというのが一番の魅力かなと思います。
CDが売れなくなった今、
音楽業界では産業革命が起こっている
―― 今はCDが売れなくなって音楽業界の危機だとも言われていますね。
レコードやCDは枚数が売れた分だけレコード会社にお金が入るというシステムだったんですけど、今はYouTubeやストリーミングなんかで誰でもすぐに聴けるようになりましたよね。海外を見ると今やみんな聴き放題、いわゆるサブスク(※サブスクリプション=定額聴き放題サービス)を利用していて、完全にストリーミング(音楽配信サービス)文化にシフトしています。それでもアメリカなんかは音楽業界全体の売り上げが上がってきています。その波がまだ日本に来てなくて、現状では一人で複数枚購入するようなCDはかなり売れているんですけど、実際には多くの人はCDを購入せずにYouTubeやサブスクなどで好きな曲だけを聴いているという現状があります。
―― 確かに私もCDを買わなくなってしまいましたね…。
ただ、ストリーミングで聴くのはすごく便利なんですけど、産業として成り立つようにするには使う人の分母が相当増えないと難しいんです。CDの場合ミリオンセラーなんて言い方をしますけど、1憶2千万分の100万、つまり120人に1人買うというのは、相当すごいことなんですね。でも、ストリーミングの場合は再生回数で計算するので、何千万回、何億回再生されてようやくCDの100万セールスと同じ利益になるんです。それくらい音楽に興味を持ってくれる人を増やさないといけないんですよね。要するに音楽産業の革命が起こっているんです。
―― 最近は日本でもストリーミング文化は盛り上がってきているように感じますが。
そうですね。2019年の年末にL’Arc-en-Cielやサザンオールスターズ、2020年2月にはaikoといったヒット曲が多いアーティストがストリーミング配信を解禁して、いよいよ盛り上がってきましたね。
―― aikoさんのサブスク解禁にはちょっと音楽業界やネットがざわつきましたよね。
様々なアーティストがストリーミング配信を解禁することが続き、誰もが気軽に音楽に触れることができる環境が整いました。ただ、いろいろ聴ける、でも何を聴いたらいいのかわからないという人も多いのが現状なんです。「こんな曲もあるよ」って教えてくれるキュレーターのような人がどんどん音楽を紹介するというムーブメントが広がっていくといいなと思っています。
―― 出会いのきっかけがなければ、せっかくサブスクがあっても何を聴いたらいいかわからないということですね。
そうなんです。実は僕はイントロマエストロとして活動をスタートする前、約15年間、音楽配信会社で働いていたんです。ケータイで着信メロディ、着うたや着うたフルをダウンロードする文化が当たり前になっていった時代に、まさにそのコンテンツを売っていた人だったので、CDが売れなくても、違う形で音楽を楽しんでいる人をずっとみてきたんですよね。CDが売れなくなったからと言っても、みんなが音楽に触れなくなったわけではないんですよね。TikTok みたいなアプリを通して音楽を楽しんでいる人もいるし、カラオケだって行くし、好きな音楽を極めてクラブでDJをやっている人もいる。だからちゃんと紹介すれば、もっと聴いてくれる人がいるんじゃないかっていう思いがずっとありました。
そこでどうやったらより音楽をうまく紹介できるかと考えた時、音楽についてうまく書くライターさんはたくさんいるし、素晴らしいプレイリストを作る人もいる。それなら自分にできることはイントロクイズだな、と思ったことがイントロマエストロの活動を始めるきっかけになってますね。
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様々な音楽への興味をイントロクイズから広げたい
―― 私も藤田さんのイベント『イントロクイズナイト』に参加させてもらったことがありますが、一曲一曲にかける思いが非常に強いなと感じました。
そうですね。イントロを流して答えて終わり、ではなく、サビをきっちり流して極力、解説もきちんとします。「初めて聴いたけどいい曲だな。ちょっと検索してみようかな」と思ってもらったり、次の曲を予想しやすいように出題順をこだわったり、その日に流した曲を一曲でも覚えて持って帰ってもらいたいという思いはすごく強いですね。
―― イントロクイズで出題する曲を選ぶ際のポイントはありますか?
参加される方の年齢層、男女比は参考にしますね。例えば年齢層高めのイベントに呼ばれた時は、年齢層高めの方が中・高生だった年の曲を多くするのが基本ベースです。でもそこで「急に乃木坂46の曲を出題したら、それまで静かだった若手が正解して場が盛り上がるかも!?」という展開を想像して選曲を決めていくという形です。あと、必ず確認するのがイベントの出演時間です。30分なら40曲、60分なら70曲と時間プラス10曲を目安に準備する曲数を決めています。事前情報が少なくて何がはまるかわからない時は、さらに多めに持っていって空気感を見てその場で変更したりもします。
一番のポイントは、年代、ジャンル問わず「この曲は、誰かが正解する可能性があるから出題する」と判断は全て自分の経験からのみ、というところです。ミリオンセラーを記録したヒット曲でも年齢層が違ったら正解が出ないこともありますし、売上枚数だけで判断したら全然ヒットしていない曲なのに、幅広い年齢の方に愛されている名曲もあります。
約20年間、いろんな方へ出題してきた僕の経験値こそが、イントロクイズに参加してくれた方へ新しい音楽を知ってもらうきっかけになると信じている。というところが一番大きいです。そこは『イントロクイズナイト』でもソーダライトのイントロクイズ企画でも、企業の忘年会であっても変わらないですね。
――今後どのようなことを目標にしていますか?
大きな目標がいくつかあって、一つは音楽フェスでイントロクイズを出題したいです。出題は「フェスに出演しているアーティストの曲からです」というルールにしたら面白いんじゃないかと。僕自身は音楽フェスでアーティストのライブを観るのが好きすぎるので、参加したらビール片手にいくつかあるステージを回って観られる限り全て観るんですけど、全て観たいという人は実はそんなにいないと思っていて。
―― 確かに。そう考えてみると私もブラブラとしている空き時間が結構ありますね。
だったらその空き時間にちょっとイントロクイズで遊んでもらって、かついろんな出演アーティストに興味を持ってもらえたら最高じゃないですか。音楽フェスに参加する全組を知らなくても、何組かの推しアーティストはほとんどのお客さんが持っているわけですから、「このアーティストのイントロクイズ問題は絶対に負けられない!」という意気込みで参加してもらえたら盛り上がるんじゃないかなと。イベントが定番になれば「予習しようか」とストリーミングなりダウンロードなりで曲を聴く人も増えてくるでしょうし。
―― 音楽業界にも還元できるというわけですね。
そうですね。あと、フリースタイルダンジョンのような形で、音楽フェスに出演しているアーティスト同士がイントロクイズで対決するというのも考えたりしています。それぞれのファンが周りで応援しながら見守っているみたいな。
―― なんだか楽しそうなアイデアが次々と…。
他には大物アーティストのライブの前座でやらせてもらいたいという野望もあるんですけど、それらが成功して世間にイントロクイズブームが来れば、紅白出場も夢じゃないなと思っています。
―― おぁ、それはすごい! 紅組と白組から代表者3人ずつ出場してイントロクイズをやるとか、普通にありそうですよね。
漫才師のミルクボーイさんが「M-1」で優勝した後すぐに紅白に出場したじゃないですか。「M-1」ぐらいイントロクイズが話題になって、ワンコーナーで出題させてもらえるようになることが最終目標です。もう一つ、ラジオパーソナリティになりたいという夢もあったんですけど、ありがたいことにその夢が叶って4月からラジオで番組DJをやらせていただくことになりました。
―― そうなんですね。おめでとうございます!
ありがとうございます。bayfmというFM局で毎週水曜日の夜9時から、『9の音粋』という番組で2時間たっぷりとJ-POP&歌謡曲を紹介します。ぜひ聴いてください。
―― 具体的にどのようなお話をされるのか決まっていますか?
やはり得意分野のイントロを切り口として音楽について幅広く紹介出来たらと思っています。イントロクイズを出題する企画もやりますよ!
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様々な音楽への興味をイントロクイズから広げたい
―― いろいろなアイデアで企画をされてますが、ご自身は今でもイントロクイズの勉強はされるんですか?
しますね。今の時代に合っているなと思うのは、昔だったら水曜日にCDが発売されて翌週にシングルランキングの発表があるという流れだったじゃないですか。今はもう全然違って、ヒット曲の定義が難しくなってきていて。
―― ストリーミング台頭の時代、CD売り上げランキングだけでは計れないものがありますね。
ええ。ただ一つだけ言えるのは「長く聴かれる曲はヒット曲」だなと。あいみょんにしても髭男(※official髭男dism)にしてもKing Gnuにしてもそうなんですけど、一気に爆発というよりは、(ストリーミングの)ランキング上位に入ったら落ちないんですよね。良い曲はずっと聴かれ続けるので、発売日に慌ててチェックせずに少し待って様子を見ても間に合うんですよ。
――確かに。ストリーミングサービスは発売日から数週間のインパクトよりも、曲自体の魅力がより大事になってきますよね。
良い曲が一曲でもあればファンも増えるし再生回数もどんどん伸びますから。例えば『パプリカ』は、発売されてからすぐイントロクイズで出題したんですが、その時は誰も答えられませんでした。それが今や最初の雑踏音で解答権の争奪戦になります。
そういうこともあって、水曜日になったら今週の曲全部聴いて覚えなきゃっていうのはやらなくなりましたね。しかも昔は新曲が出たらCDを買いに行ったり、レンタルCD店に行ったりという手間がありましたが、今は全てスマホで事足ります。イントロの勉強が手軽で時間をかけずにできる時代になりましたね。
―― ストリーミングの時代に移行してくることによって、より曲のイントロ部分って大切になってきませんか?
なってますね。最近人気のアイドル、BiSHやBiSの楽曲プロデュースをしている松隈ケンタさんという方がいらっしゃって、一緒にお仕事もしたことがあるんですけど、松隈さんのチームは、とにかくイントロで曲に引き込ませることを大事に制作にされていますね。
―― ストリーミングで次々聴ける時代ですから、まずイントロ部分で惹きつけるのは大切なんですね。
BiSHのライブに行くと、イントロが一音出た瞬間にわっと盛り上がるんですよ。その連鎖が続いてライブがどんどん盛り上がっていくっていうのは、イントロにこだわっているからということは絶対にあると思います。
―― 曲の出だし部分が重要になってくるストリーミング時代に、イントロクイズは非常にマッチしているということですね。最後に、藤田さんはなぜそこまで音楽の良さを伝えることに対して強い思いがあるのでしょうか。
一つは今までお世話になった音楽業界への恩返しの意味があります。そしてもう一つは、イントロクイズという40年前以上からポピュラーミュージックを楽しむ方法として定着している音楽ゲームが、まだ誰もやっていない音楽の良さを伝える楽しいツールになるんじゃないかと気付いたからです。どんなことができるか、まだまだ模索中なところもたくさんありますが、これからも音楽を広めるためにどんどんと仕掛けていきますのでご期待ください!
―― ありがとうございました。これからも楽しいイベントを期待しています!