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『東大王』水上颯卒業!「最後1個だけわがままを」全員とクイズを通した「対話」の時間

水上颯 twitter公式アカウント(@sou_mizukami)より

3月18日放送『東大王』は、水上颯卒業SPの完結編。4月から研修医となるため、これが最後の番組出演となる水上。10連勝がかかったラストマッチであり、チームメイトと戦う最後の時間。番組終盤では、メンバーとの1対1マッチによる「対話」もあった。

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「嫌だよ、最後だし、ちゃんと勝ちたい」

先週放送された前半3ステージは、東大王チームが3戦全勝。後半も楽勝ムードに思われたが、4thステージ「12アンサーズ」では3問連続で全滅、6thステージ「ドカーンファイブ」でも3連続で落としてしまう。

そんな状況でも誤答したチームメイトを気遣う水上に、「あんな優しいことができるようになったのね」「最初のころは酷かったね」と振り返るヒロミと山里亮太。特番時代、ほとんど笑わない水上を見てきた2人だからこそ、リーダーとして振る舞う水上が感慨深い。そこへ「卒業回でこんな言われ方することあります!?(笑)」と水上がツッコむ姿も、番組開始当時では考えられなかったことだろう。

5thステージは、この日2回目の「難問オセロ」。これまで何度も苦戦を強いられてきた難問オセロで、水上と鶴崎修功が顔を寄せ合って戦略を練る光景も見納めだ。

1回目の2ndステージでは、東大王チーム圧勝ムードのなか、芸能人チームが全滅して勝利している。最後の難問オセロで、水上は勝ち方にこだわった。中盤、2番「海石榴」が読めず、鶴崎と水上が相次いで失格。それでも2番にこだわり、次の砂川信哉が「つばき」を正解して決める。ジワジワと左上隅から赤い駒で埋め、残りは6番と12番のラスト2マス。東大王チームの勝利は確定しており、「12番だと絶対に勝てる」と鶴崎は言うが、水上は「嫌だよ、最後だし、ちゃんと勝ちたい」と6番を指名する。

先に12番を開けると、次の芸能人チームの6番は隅の超難読漢字になる。出題によっては相手チームが全滅するかもしれない。6番から開ければ、次の12番は相手のパスになり、最後は東大王チームの手番になる。相手のミスで終わるより、自分たちでとどめを刺したほうが美しい。

ただ、水上自身には既に解答権がない。この勝ち方を成立させるにはチームメイトの力が必要だが……全く問題なかった。林輝幸が6番「金合歓(アカシア)」を、鈴木光が12番「蘆薈(アロエ)」を難なく正解し、見事に期待に応える。水上最後の難問オセロは、26対10で東大王チームの勝利に終わった。

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山下真司の奇跡に「やられたなコレ~」

いよいよFinalステージ、1対1の「超難問早押しバトル」。対戦を前にして、水上は語る。

「僕たちクイズやってる人からすると、クイズが一番の対話なんですよね。最後、お世話になった人たち1人1人とクイズを通して対話していきたいです」

ここまで東大王チームが3勝し、特別ルールで水上のライフは2つに増えている。というわけで、トップバッターは水上から。2018年6月には「通算29人抜き」を達成している水上、ここで芸能人チーム全員と「対話」して一気に勝利か……と思いきや、意外な人物が立ちはだかった。

水上が3人抜きし、芸能人チームは4人目の山下真司。出題は画像から都道府県を答えるもの。早押しには自信がない山下だが、1枚目を見て水上に押し勝った。「長瀞なんだよね……」と悩み、「長野県」と解答。長瀞町は埼玉県にあり、この道筋は間違っているのだが……なんと正解!

写真に映っていたは長野県上松町の「寝覚の床」で、長瀞でも埼玉県でもない。2重3重の勘違いの果てにミラクルを起こした山下に、ボタンを押していた水上も「やられたなコレ~」と笑ってしまう。映像を振り返ると、山下が「長野県」と答えたとき水上は抑えきれず笑っている。あれは「長瀞を長野県と勘違いしたこと」に笑っていたのではなく、「先に長野県を答えられてしまったこと」に対する苦笑いだったのだ。

しかし、幸いなことに水上のライフはまだ残り1。水上は東大王チームの最後列に回り、次の伊藤七海が7人抜き。続く鈴木光が3人抜きし、芸能人チーム大将の伊沢拓司までたどり着く。水上と戦うには、東大王チーム残り3人を倒さねばならない。「1人1人倒します」と意気込む伊沢と、「1度も勝ったことがないので」と胸を借りる鈴木光。出題は両者とも得意とする絵画問題。1枚目が映った瞬間にランプがついたのは……鈴木光。 解答は「ゴッホ」。正誤判定のあいだ、水上と伊沢の顔がアップで映る。その結末は、正解……!

「9連勝行ってダメで、5連勝行ってダメでと繰り返してきたので、最後に10連勝できて嬉しいですね」と水上。「最後に良い送り出し方ができたら」と、この場面で初めて伊沢に勝った鈴木光も笑顔を見せる。チームでつかみ取った10連勝だった。

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鶴崎「クイズは生涯できる競技である」

まだ番組は終わらない。「卒業マッチ」と題して、東大王それぞれと水上による、1対1の早押しクイズ対決が行われた。問題は1問だけ。水上が語った「クイズを通した対話」が、東大王のメンバーたちと行われる。

対決が終わるたび、メンバーからの贈る言葉と、水上からの最後の言葉が交わされる。岡本沙紀には「自分をクイズで表現してほしい」、紀野紗良には「人として一段深くなった」、伊藤には「自分の後継者が見つかった」と、声をかけていく。砂川信哉は泣きながらも水上から正解を奪った。これもひとつの「対話」だ。

順番は正規メンバーに移る。林には「1番最初ですごいミスをして……」と、初登場回でついたあだ名「ジャスコ」を振り返り、誰よりも努力してきた向上心に尊敬してきたことを伝える。鈴木光は「(水上さんは)当たったら楽屋に帰るまで喜んで、負けたらタクシーが来るまで不機嫌」と笑いを誘い、「それくらいクイズに一生懸命」と表現。水上は自分の理想に全力で向かう鈴木を「理想の東大生」と語った。

最後の相手は鶴崎。「ここで倒します」という鶴崎に「待ってるぜ」と水上。出題されたひらめき問題は、水上が獲った。共に6年間を過ごした鶴崎は、3つのフレーズで水上を語る。

「水上颯はクイズ界のスーパースターである」
「水上颯は私にとって教師である」
「クイズは生涯できる競技である」

医者になっても、『東大王』に出られなくなっても、クイズを続けることはできる。「水上颯はクイズを止めないと思っているし、そうであってほしい」「これからも一緒にクイズをやってほしい」と鶴崎は話す。これまで過ごした時間を振り返るメンバーが多いなか、唯一、鶴崎だけが水上の「未来」について語った。

水上にとって、大学のクイズは鶴崎と共にあった。クイズの盟友であり、切磋琢磨し合える仲。東大王でずっと一緒に戦ってきたことに感謝し、「俺の意志は鶴崎が汲んでくれると思っている」と、鶴崎に大将のバトンを渡す。4月からまた、新しい東大王チームが始動する。

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「最後1個だけ、わがまま言っていいですか?」

まだスタジオには、「東大王」として切磋琢磨してきた仲間であり、敵がいる。芸能人チームに座る伊沢だ。

「僕たちのあいだで最終的にコミュニケーションと言ったら、クイズをするしかないので……。あぁ!それが出来なかったことが大変悔しいですし、申し訳ないですね」

伊沢は、Finalステージで水上までたどり着けなかったことを悔やんでいた。なおも語ろうとする伊沢をさえぎって、水上が「最後1個だけ、わがまま言っていいですか?」と言葉を挟む。わがままの内容は「伊沢さんと1問」。正真正銘のラストマッチに湧くスタジオ。「ありがとう!やりたかったんだぁ……」と伊沢はひな壇から飛び出して解答席に向かう。

水上がクイズを始めたきっかけは、高校生クイズで活躍する伊沢だった。「僕の中でのクイズのスター」と、一緒に東大に入り、番組に出て、クイズを濃密にやりあってきた。最後は伊沢と対決する。それが美しい終わりかたでもあるだろう。

「楽しすぎる……」とニヤニヤしていた伊沢は、出題と共に顔を引き締める。水上が大きく息を吸う、2人ともボタンに手をかけた。

出題は「部首名しりとり」。「くさかんむり→○→○→ころもへん」が映った瞬間に2人とも押し、伊沢にランプがついた。モニタは消えている。シンキングタイムのあいだに、残像から答えを導き出そうとする伊沢。「りっしんべん→んまわし」と絞り出すも不正解(「んまわし」は古典落語の演目の一つ)。

伊沢の誤答を聞き、水上は静かにうなずいた。水上の『東大王』最後の解答は「りっとう→うけばこ」。正解音が響き、静かにカメラに礼をする。「クソ!」と悔しがる伊沢だが、その顔は笑顔だ。これで全ての対決が終わった。

東大王チームが涙で見守るなか、水上は最後の挨拶に立つ。

「長いようで短い期間だったと思います。この3年間ものすごく短くて、でも濃密で、みなさん楽しんでいただければ幸いです。僕がいなくなっても、東大王、ますます強くなっていくと思うんですね。残していった人たち、みんなチームとして、より一層強くなってくれると思います。ホントに、これからもこの番組を楽しんで見ていってほしいですし、『東大王』という番組をよろしくお願いします」

たくさんの素晴らしい戦いを見せてくれた水上颯。『東大王』は卒業してしまうが、鶴崎の言うとおり「クイズは生涯できる競技」。またどこかでその勇姿を見られたらと思う。

『東大王』(2020年3月18日放送)
司会:ヒロミ、山里亮太
解説:伊沢拓司
東大王チーム:水上颯、鶴崎修功、鈴木光、林輝幸、砂川信哉、紀野紗良、岡本沙紀、伊藤七海
芸能人チーム:伊沢拓司、アンミカ、井上裕介(NON STYLE)、富永美樹、八田亜矢子、馬場典子、原西孝幸(FUJIWARA)、藤本敏史(FUJIWARA)、宮川一朗太、山下真司、ゆきりぬ、篠原梨菜

【ライタープロフィール】

井上マサキ
路線図マニアでテレビっ子のライター。『99人の壁』でグランドスラム達成(ジャンル「路線図」)。著書に『たのしい路線図』。宮城県出身。二児の父。

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