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INTERVIEW

今年の『高校生クイズ』が大きく変わる! 参加のハードルを下げ、「日本の未来を変える最強頭脳No.1決定戦」をテーマに高校生たちをショーアップ/中村文彦(演出)&一色彩加(プロデューサー)インタビュー

5月8日にその開催が発表された『第43回全国高等学校クイズ選手権』。「日本の未来を変える最強頭脳No.1決定戦!」をテーマにした今大会を担うのは、昨年の『高校生クイズ』からプロデューサーを担当する一色彩加と、今年の演出に抜擢された中村文彦。2人に番組にかける想いを聞いた。
(2023年4月28日収録 聞き手:大門弘樹 写真:友安美琴)


写真左/一色彩加(いっしきあやか) 1985年、神奈川県生まれ。2008年に日本テレビに入社し営業局へ配属。2022年6月にコンテンツ制作局へ異動し、『高校生クイズ』『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』『THE突破ファイル』『所さんの目がテン!』でプロデューサーを担当。
写真右/中村文彦(なかむらふみひこ) 1991年、広島県生まれ。2013年に日本テレビに入社し情報カルチャー局(現コンテンツ制作局)へ配属され、『高校生クイズ』のADを担当。『最強の頭脳 日本一決定戦!頭脳王』ディレクター・演出、『クイズハッカー』企画・演出などを経て、現在は主に『ヒルナンデス!』木曜日演出、『1億3000万人のSHOWチャンネル』ディレクター、『バズリズム02』演出を担当。

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何度も何度もクイズ会議が開かれた2022年

――まず、お二人が日本テレビに入社される前の『高校生クイズ』との関わりから教えていただきたいんですが、放送はご覧になっていましたか?
中村 高校生の頃はリアルタイムで見ていましたね。大学時代の友人には『高校生クイズ』の予選や全国大会出場経験者が何人かいます。
一色 私も見ていました。私が高校生の時に、弟が通っていた学校が優勝したんです。テーマ曲を歌っていたアーティストさんが学校に来てスペシャルライブをしてくれて、それを見に行ったのは思い出に残っていますね。そのとき全校生徒の前で表彰される優勝チームの子たちや優勝旗を見て、「“賢い”ってかっこいいんだ!」というのを肌で感じましたし、すごく身近な存在の番組でした。
――日本テレビ入社後、そんな『高校生クイズ』の現場に初めて入られたときはどんな心境でしたか?
中村 初めてADとしてついた番組が『第33回全国高等学校クイズ選手権』なんですけど、それがちょうど、「知力の甲子園」から世界横断に内容が変わった年なんです。「これまでに培ってきたノウハウを一度忘れて新しいことをしよう」というタイミングだったので、どう演出すれば高校生が輝くのかシミュレーションを繰り返して、その一つ一つが形になっていく過程はすごく楽しかったですね。
――第33回というと、タイやフランスでロケが行われた回ですね。
中村 そうなんですよ。ちなみに出国前の2回戦は羽田空港格納庫で実施したんですけど、もともと「日本を象徴する場所で実施したい」との思いで富士山周辺も候補地として挙がっていて。「8月の富士山周辺で何ができるのか」ということで、富士山の周りで二人三脚のシミュレーションもやったのですが、8月は晴れの日がかなり少ないことが判明して断念しました。
――昔の『高校生クイズ』は富士山で全国大会を行う回もありましたけど、確かに曇っていることが多かったですね(笑)。一色さんはいかがですか?
一色 番組制作のほうに興味を持って2022年6月に営業局からコンテンツ制作局に異動してきて、最初に担当したのが『高校生クイズ』なんです。「もうすぐ1次予選が始まります」みたいなタイミングで入らせていただいて。高校生の青春を間近で見られて、本当に勉強になりましたし、楽しかったです。そこで「来年もぜひやりたい」と思って今年も担当させていただいています。
――営業局に配属されていたときも『高校生クイズ』に関わられていたのでしょうか?
一色 はい。『高校生クイズ』は制作にとっても営業にとっても編成にとっても重要な歴史あるコンテンツで、全社一丸となって作っています。長い間、一社提供で冠スポンサーがついてくださっていたので毎年、演出担当の方が営業局に来てその年のテーマや意向を説明してくださっていましたね。
――冠スポンサーのお話が出ましたが、『高校生クイズ』は回によってコンセプトも様々なので、スポンサーにコンセンサスを得るのも大変なのかなと思ったのですが、実際はどうでしたか?
一色 今は冠スポンサーという形ではなくなってしまったんですが、当時は大変な部分もありましたね。もちろんスポンサーさんの意見はすごく大事ですが、日本テレビとしても『高校生クイズ』は重要なコンテンツなので、お互いが納得できるところを見つけるために何度も話し合っていました。毎年番組をやっているとやはり新しい工夫を求めるご意見も出てきます。ただ、それは制作側でも意識していたポイントなので、だからこそ『高校生クイズ』は常に変化・変革し続けているのかなと思います。私自身も昨年から制作側に移って、番組の価値を守り続けていくためにも、常にブラッシュアップしていければと思っています。実は営業局のメンバーもライオンさんをお連れして各地方の予選を見に行っていたんですが、高校生たちの熱量だったり、クイズへの思いを直に感じられるせいか、そのときのライオンさんの反応は『高校生クイズ』ならではのものでしたね。
――昔は地方での予選がたくさん行われていて、そこでは商品のサンプリングなんかもされていたんですよね。
一色 サンプリングもしていましたし、アーティストさんや芸人さんに来ていただいて、クイズをやるだけではなくて一つのイベントみたいにしていたんですよね。そういうところも高校生たちの思い出に残っていたりするので、また地方予選をやりたいという思いは常にあるんですけど、今年はまだ難しかったです……。
――こういった視聴者参加の番組には、コロナ禍というのが相当なハードルになっているんだろうなと感じます。
一色 コロナ禍の始まりである2020年はまだ営業局にいましたけど、そのときは『高校生クイズ』を開催するのかどうか、そもそも開催できるのかどうか、という状況でしたね。歴史を途切れさせたくはないですが、諦めなければいけないかなという考えもありました。でも高校生にとってはその1回が大事なチャンスじゃないですか。1年生だとまだ仲間がいなかったり、3年生だと受験があったり、人によっては1、2回しかチャンスがない中で中止にしてしまったら、1回も挑戦できなくなってしまう子がいるかもしれない。なので、「どうやれば開催できるのか」っていうところで知恵を絞って、結果その年は1回戦から決勝戦まですべてリモートで行なうことになりましたが、なんとか開催にこぎつけました。
――そういったコロナ禍でのご苦労を経て、2022年からは都道府県代表制が廃止されたり、Zoomを使った1次予選になったりと、また新たな形になりました。
一色 そうですね。昨年は関口(拓)の企画・演出でやらせていただいて、1次予選の都道府県代表制を廃止しました。もちろん賛否はありましたが、昨年もZoomを使って全国同時に1次予選を実施できるということで、今まで地方大会など現地で参加できなかった子も参加できるような形となり、参加しやすくはなったと思います。2次予選以降は、どうしても「対面でやりたいよね」という思いを捨てきれず、コロナ禍以前のように対面で実施しました。親御さんや顧問の先生方とも相談をしながらですが、高校生のみんなにPCR検査を受けてもらったり、日頃から体調についてこまめに連絡を取らせていただいたり、当日は現場に医師を配置したり。多くの制約があったものの、高校生のみんなが感染対策をすごくしっかりしてきてくれて、1人も欠けることなく大会を実施できたんですよね。もちろんマスクをしての状態ではあるんですが、ほかのチームのメンバーと交流できるような時間も少し設けたりして、その交流している姿を見て「やっぱり対面で実施してよかったな」と感じました。
――問題の方向性については、それこそお二人がご覧になられていた知力の甲子園時代を彷彿とさせるものでしたね。
一色 昨年は関口が何度も何度もクイズ会議を開いていたんです。「クイズにかける夏~努力が報われる日~」をテーマに打ち出していたので、分析、そして対策という努力をしてきてもらうために事前にジャンルを発表したんですけど、その努力が報われるような問題を作り上げなければいけない、というところで、「これってちゃんと“努力が報われる問題”になってる?」と考えながら一問一問選んでいました。すごく大変でしたけど、応援パーソナリティーのQuizKnockさんも「よく考えられていますね」というようなことはおっしゃってくださいましたし、何より高校生たちが終わってから口々に「いい問題だ!」「楽しい!」と言っていたのがすごく印象に残っています。
――ただ、視聴者にとっては問題の難易度が相当高いですよね。
一色 そうですね。「こんなの解けないよ」「すごい」みたいな気持ちが強かったかなと思います。ただ、本気でクイズに取り組んでいる高校生たちがそれを楽しんでいたことは、きっと画面越しにも伝わっていたと思いますし、真剣勝負をお届けできたんじゃないかな、と思っています。
――反響はいかがでしたか?
一色 「一緒にわいわいクイズを楽しむ」という方向性ではなかったので、全体の視聴者層に対して問題がちょっと難しすぎたかな……と反省する部分はありつつ、でも「スポーツのように見られた」というご意見をいただきました。開催中は何度も各チームの取材に行かせていただいていて、彼らの人間性や家での過ごし方、顧問の先生とのやり取り、仲間との関係性みたいなものをフィーチャーしていたので、人間ドラマみたいなものも含めて楽しんでいただけたのではないかなと思っています。もちろん好き嫌いはあると思いますが、いろんな楽しみ方があると思っているので。そういう意味では、彼らの青春だったり友情だったり、『高校生クイズ』で一番見せたかった部分がきちんと届いているなと感じましたね。今年も「問題の難易度は高くしたい」という意向はあるんですけど、それに向き合う彼ら一人ひとりの頭の中を覗けるような感じで番組を作っていけば、視聴者の方は興味を持って見てくださるのかなと考えています。あと、出場者の親御さんとお話ししていると、「うちの子はクイズをやってばかりで心配だったけど、輝いていてよかったわ」なんて言うお母様がいたりするんです(笑)。今年も同じぐらい情熱をかけて問題を作っているので、高校生たちが燃えるような、解き応えのある面白い問題をたくさん出題できるんじゃないかなと思っています。
――中村さんは昨年の『高校生クイズ』の制作にも参加されていたのでしょうか?
中村 2022年は参加していなくて、一視聴者としてワクワクしながら放送を見ていました。「地頭力」から変わっていく変革期の初年度だったと思うんですけど、どういう高校生を見せたいのかっていうコンセプトがはっきりしていたので、ああいうストロングスタイルのクイズ番組はとても面白かったですね。特に決勝は非常に見応えがありました。演出の関口は1つ下の後輩なんですけど、めちゃくちゃ優秀なんですよ。すごく計算したうえで作っている印象があるので、見ていてすごく勉強になりました。

2023年のコンセプトは
「日本の未来を変える最強頭脳No.1決定戦」

――今年はそんな関口さんに代わって中村さんが演出を担当されるということで、コンセプトなど現時点での構想をぜひおうかがいしたいです。
中村 今回は「日本の未来を変える最強頭脳No.1決定戦」をコンセプトにしたいなと思っていて。クイズをやっている人って、ネットで調べればすぐ答えがわかるような今の時代に、たくさんの時間と労力を使って頭の中に知識を蓄えているわけですよね。僕はそうやってクイズで蓄えた知識が将来、何かの役に立ったり、全く違うジャンルの知識と結びついたりっていうことが起きると思っているんです。最近は暗いニュースが多いですけど、そんな中でも、高校生たちの努力を描くことで「日本の未来は明るいぞ」っていうのを感じてもらえる番組にしたいですね。
――クイズって知っているか知らないかの非常にシンプルなものなので、興味がない人たちからは「そんなこと知っていてどうするの?」と言われるじゃないですか。でも、水上くんや伊沢くんみたいな子たちがキラキラしながら解答している姿を見ていると、確かに夢のある未来を想像できますね。
中村 日本を代表するリーダーたちだって、めちゃくちゃ勉強して、知識を蓄えて、それで今があるわけなので。クイズってすごく可能性のある分野というか、学校の勉強にしてもまずは暗記からやるじゃないですか。知識を蓄えるという行為は決して間違ったことではないと思うので、「覚えてどうするの?」みたいな印象もプラスの方向に変えられたらいいなと。今年1月に川崎でやっていた『STU XXV』というクイズ大会を見に行ったんですけど、参加されている皆さんの知識量は本当にすごかったです。僕はそんな彼らの凄さを、うまくエンターテインメントにしていくのが、今回の僕の使命かなと思っています。
――いまや、AIチャットが何でも答えてくれる時代ですけど、そんな時代でも、それでも人間が答える意味や感動みたいなものを、ぜひ『高校生クイズ』から感じたいと思っています。
中村 そうですね。それを感じさせられる瞬間をどれだけ作れるかが本当に大事だなと。クイズの問題は有限なので、一度は見たことがあるような問題も中にはあるかもしれないですけど、そこに答えるまでの過程にちゃんとドラマやストーリーがあったら全然違うものになると思うんですよね。だから、そこにしっかり演出をかけていくことが、彼らのかっこよさや努力を伝える一番の方法なのかな、と考えているところです。歴史ある番組ですし、多くの方が見てくださっているので、せっかくなら「出たいな」「やっぱりこれは日本一の舞台だな」と思っていただけるような番組にもしたいですね。
――大会のルールやシステム的なところは2022年からどう変わるのでしょうか?
中村 実は今年、出場方法を刷新しようと思っていて。賛否あると思うんですけど、「3人1組」というところで参加したいけどメンバーが見つからないという高校生の芽を潰すのがもったいないので、裾野を広げるために出場方法を「2人1組のペア」か「個人」にしました。
――なるほど、それは参加する高校生にとってはうれしい改革かもしれませんね。それと昨年2022年の1次予選では、都道府県代表制ではなく全チームで予選が行われ、同じ高校であっても上位であれば2次予選へ進むことができました。今年はどのようになりますか?
中村 昨年に引き続きネット予選もやりつつ、日本テレビで行う2次予選も都道府県代表ではなく上位30校が出場できることになります。ただ、「高等学校クイズ選手権」なので、今回は各高校を代表する30チームに集結していただきます。
――なるほど、2次予選に進出できるのは各高校の代表チームのみということになるんですね。
中村 はい。そして、7月22日、23日の2次予選を勝ち上がった高校で、8月の決勝大会を行なって日、本一を決めていく形になりますね。決勝大会ではいろんなことに挑戦しようかなとは思っていますが、システム自体はすごくシンプルにする予定です。高校生の皆さんも緊張している中で初めてのことをやるのは、とても大変なことだと思うので。
――ルールがたくさんあると視聴者にもなかなか伝わりづらいですもんね。
中村 今回、決勝大会の最初はビデオライターを使った筆記クイズにしようと思っているんですよ。早押しクイズもすごくワクワクしますけど、高校生もあれを1回使ってみたいんじゃないかなと思って(笑)。
――そうですね。今の高校生にとっては早押しクイズは普段の活動でやったことがあっても、ビデオライターを触ったことはないと思いますので、ビデオライターの方が非日常感があるかもしれませんね。出演者に関してはどの程度決まっていますか?
一色 メインパーソナリティーは木村昴さんに、そして応援パーソナリティーは今年もQuizKnockさんにお願いしました。華々しい活躍をされている木村さんが加わり、QuizKnockさんとともに高校生クイズを盛り上げてくれると思います。本番までに木村さんとも打ち合わせを重ねながら、最高の大会にするべく、スタッフ一同全力で頑張ります。
――伊沢さんやふくらPさんがホームとも言える『高校生クイズ』に応援パーソナリティーとして帰ってくるっていうのは熱いですよね。
中村 夢がありますよね。実際に『高校生クイズ』に出場した彼らだからこそ話せることがたくさんあると思うので、ぜひそういうところでもお力をお借りしたいです。
一色 5代目総合司会の安村(直樹)アナはもう手伝ってもらうことが決まっていますね。彼は『高校生クイズ』愛がすごく強くて、毎年「来年もやりますか?」と連絡をくれるんです(笑)。取材に行ってもらったうえで、出場者を応援し、寄り添い、励ます立ち位置で入ってもらおうかなと思ってます。
中村 その一つとして実況や高校生の事前取材をやっていただこうと思っています。映像面の演出は僕がやっていくんですけど、音の面では実況を通して安村アナに多くを担ってもらうことになります。取材したからこその出場者の魅力が伝わればいいなと思っています。
――ちなみに昨年、演出の関口さんにインタビューさせていただいたときに、「知力の甲子園」以降を演出されていた五味一男さんと河野雄平さんについておうかがいしたんですが、中村さんにもそのお二人の考え方や作り方みたいなものは引き継がれているんでしょうか?
中村 僕もずっと五味さんと河野さんの下でやってきたので、割と染み付いているというか、そのイズムは引き継がれていると思います(笑)。普段からちょっとした相談をしているんですが、いつでもアドバイスをくださるので、すごく助かっていますね。
――今回演出を担当されることをお二人にご報告されたときは、どんなリアクションでしたか?
中村 河野さんはすごく親身になって「何かあったらいつでも言ってくれ」と。五味さんも応援してくださいました。ちなみに五味さんが立ち上げた『頭脳王』では僕は編集をやっていたんですけど、リアクションのカットを見た五味さんに「これ1秒10フレでしょ、短いよ」と言われたことがあって。1秒=30フレームなんですけど、見たらホントに1秒10フレで、「リアクションはどんなに短くても1秒15フレ以上じゃないと、パカパカしてよくないよ」と。
――たった5フレーム、6分の1秒の差に気づかれたんですか!?
中村 そうなんです。それがすごく印象に残っていますね。大尊敬している五味さん、河野さんたちが作り上げてきた番組の演出できるのはすごくやりがいがありますし、そのこだわり具合をまじまじと見てきたので、少しでも近づけるように「あの二人だったらどうするのかな」ということを考えながら頑張っていこうと思っています。高校生をかっこよく見せるために、いかに高校生をショーアップできるかっていうところで鋭意作業中で、さっそく優秀な照明チームにも声をかけていまして。関口も含めたあの3人の名に恥じないよう、示しのつくものは作りたいですし、出場者、視聴者の方にも「やっぱり『高校生クイズ』が一番だよね」と思ってもらえるものにしたいですね。ぜひその他の出演者の続報と放送を楽しみにしていただけたらと思います。

第43回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2023
https://www.ntv.co.jp/quiz/

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