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クイズという文化は新型コロナウイルスの大流行とどう向き合うのか?

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が止まらない。この原稿を書いている4月6日(月)の時点で、日本国内の感染者数は4000人を超え、明日から1カ月間の緊急事態宣言が発令されるというニュースも飛び込んできた。

新型コロナウイルスの猛威は、クイズというカルチャーにも大きな影を落としている。クイズ番組では、『オールスター感謝祭2020春』(TBS)の放送が延期され、『99人の壁』(フジテレビ)は「100人を一か所に集めてクイズを行う」という企画の特性上、次回収録の目途が立たない状況という。また、学生クイズプレイヤーにとって最大のイベント『abc』をはじめとするクイズ愛好家たちの大会も、次々と開催延期を余儀なくされている。

実は私が店長を務めるクイズ専門店「クイズルームソーダライト」も、2月26日に「3月いっぱいの営業休止」に踏み切っている。これは安倍総理が小中高・特別支援学校の全国一斉休校を要請した記者会見の1日前というタイミングだった。当時はまだ「100人規模のイベントの自粛要請」についてさえ賛否両論があった頃。ソーダライトのようなキャパ20名足らずの店を休みにするのは、「やりすぎではないのか?」といった声も聞かれた。しかし、ライブハウスのような密閉空間でのクラスター感染がニュースとなっていたことから「人が少なかろうと、密集した中で声を出しあうというクイズのリスクはかなり高いのではないか?」と判断し、営業自粛とさせてもらった。

残念なことに、現段階では当時の判断を「やりすぎだった」と言える状況にはなっていない。それどころか、新型コロナウイルスのすさまじい感染力は、日を追うごとにアラートのレベルを更新していっている。当初、ソーダライトは座席数を減らし、イベント中も窓を全開にするという形で4月からの営業再開を予定していたが、一転して「無期限の休業」を決断せざるを得なくなった。最近、地上波のテレビ番組でも何度か紹介されたこともあり、営業面だけを考えるなら痛恨の極みだが致し方ない。一刻も早く事態が収束することを祈りつつ、当面は家にいながらクイズが遊べる仕組みを模索し、オンラインでの営業に軸足を移すしかないだろう。

それにしても、今回の新型コロナウイルスによってスポーツやポップカルチャーが受けたダメージがいかほどのものになるか、想像をすることもできない。中でもクイズ・謎解き・eスポーツなど、自らがプレイヤーとして舞台に立つことができる参加型ライブエンターテインメントは、これから文化が成熟していくという時に急ブレーキをかけられる格好となってしまった。

クイズの場合は、醍醐味のひとつである早押しクイズを、皆で集まって楽しむことができなくなったことが大きな失望となっている。しかし逆に言えば、新たなクイズ文化を模索する時間ができたと前向きに捉えるべきなのかもしれない。例えば『みんなで早押しクイズ』のようなアプリはオンライン早押しツールとして市民権を得ているし、『クイズマジックアカデミー』はアーケードゲームだがPCやスマホにも対応している。それ以外にもオンラインミーティングツールを使ってバーチャルにクイズを楽しむことだってできるではないか。

芸術にしろ文学にしろ、弾圧などのピンチをものともせず、大輪の花を咲かせてきた。きっとクイズにも、今回の危機的状況を乗り越えるだけのエネルギーがあると信じている。(QUIZ JAPAN編集長・大門弘樹)

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