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若手強豪サークル「Period」が初優勝! 『天7−クイズサークル日本一決定戦−』レポート

若手強豪サークル「Period」が初優勝! 『天7−クイズサークル日本一決定戦−』レポート

2017年9月17日(日)、川崎市総合福祉センター「エポックなかはら」にて、クイズサークル対抗戦を銘打ったオープン大会『天7』が開催された。

今回で7回目の開催を迎える『天』は、もともと2002年にTBS系列で放送されたクイズ番組をルーツとしている。学生サークルと社会人サークルのナンバーワンを決めるという、深夜ならではのマニアックなコンセプトという位置づけの番組であった。

この番組の社会人編で優勝した古豪サークル「グランドスラム」が、2007年に「クイズサークル実力日本一決定戦」と銘打った企画『天2』を実施したことで現在のものに近い路線が確立され、そして『天2』を制した「短文クイズサークル・A(あ)」が、2009年に『天3』を主催したことから、それ以降「前回大会の優勝者が、次回大会の主催者となる」という形で続いていく、おおよそ2年に1度開催されるクイズ界のビッグイベントとなった。

2015年に開催された『天6』は、少々毛色の違う形式にもしっかりと対応し盤石の力を見せつけた「短文クイズサークル・A」が、同シリーズ史上初となる2度目の戴冠を果たした。『天7』は、この「全国ナンバーワンの座に輝いたサークル」が満を持して主宰する、まさしく珠玉の大会なのである。

今回の『天7』に参加したのは、28チーム総勢326名。各々が自らの所属するサークルの威信をかけ、熱い火花を散らす。中でも一際注目を集めたのは、関西の強豪が結集した「クイズサークル“椿”」や、『第15回アメリカ横断ウルトラクイズ』優勝者・能勢一幸や初代クイズ神・渡辺匠を始めとするベテランが軒を連ねる関東の古豪「玉Q」、そして『abc』『EQIDEN』『ノックアウト』と「日本一決定戦」を冠した大会を3度制した鈴木淳之介を筆頭に今最も勢いのある学生・若手社会人プレイヤーたちで結成された新興サークル「Period」。これらの他にも優勝候補と目されるサークルを挙げ始めれば枚挙に暇がなく、大混戦が予想されるマッチメイクとなった(なお、『東大王』で活躍中の伊沢拓司・水上颯・鶴崎修功の3名は、それぞれ「玉Q」「Period」「TQC」に分かれて参戦)。

■第1ラウンド
7チームから3チームが勝ち抜けとなる第1ラウンドで行われるのは、5セット制早押しクイズ『天地創造』。20問からなる各区間に2人までのプレイヤーがボタンにつき正答数を競う。ただし、誤答でそのプレイヤーは即失格となり、さらに同チームの2人が両方誤答してしまうと、今までの累積ポイントが半減されてしまうという、非常に誤答に厳しい形式だ。予めエントリー時に行われた抽選によって28チームが7チームずつの4リーグに分けられ、それぞれ熾烈な争いを繰り広げた。

リーグAは「博多クイズコミュニティー」と「酔っ払いのクイズ部」が平均してポイントを稼ぎ、残り1枠の勝負に。最終区間で1ポイントのリードを保持していた「尾張旭フリバ会」を、残り2問の2連取で「早稲田大学」が大逆転。試合終了のブザーとともに会場が大きく湧いた。

リーグBには、優勝候補「玉Q」、第1回『天』優勝の「グランドスラム」、1995年創立と古い歴史を持つ「OBA-Q」など、ベテランサークルの顔が多く見られた。ここでまず走ったのは「玉Q」と「鹿児島クイズ愛好会」。それぞれ実力者を配置した区間で大きく点を伸ばし、優位に立つ。続いてウルトラクイズ愛好家たちが集う社会人サークル「L.U.Q」が追いすがる展開。最終区間に入って「大阪大学クイズ研究会」「OBA-Q」が怒涛の追い上げを見せたものの、最終的にはリードをきっちり守りきった上位3組がゴールテープを切った。

リーグCは打って変わって一橋大学の「MQC」、慶應義塾大学の「KQK」、京都大学の「Mutius」、そして東京大学の「TQC」が参戦。勢い溢れる学生サークルが集中し、勝負は序盤から激戦に。ここでは、百戦錬磨のクイズドクター・廣海渉を始めとした強豪が出揃う「Mutius」がまさかの大失速。間隙を縫うようにして慎重にポイントを稼いだ「TQC」「MQC」、そして社会人サークルの「シンサクール蒲田」が勝ち抜けとなった。

リーグDでは、学生・若手社会人有志によるトッププレイヤー連合「Period」が圧倒的な独走体勢。中でも1人で区間を担当した新進気鋭の大学2年・加瀬主税が20問中10問を正解するなど、2位以下をダブルスコアに差し込んでの、空前絶後の圧勝劇を見せつけた。それに続いたのは「クイズサークル“椿”」と「NextStep関西」。西からの刺客が、過去優勝経験のある強豪「岐阜クイズ愛好会Mino-Ten」などを振り切り、次のラウンドへ駒を進めた。

■プレーオフ
惜しくも敗退した16チームによる敗者復活戦は、ステップラダー方式のトーナメントクイズ。各ステップ2名のプレイヤーが正解すれば次のステップへ。最終ステップを勝ち抜けた4チームが復活となる。誤答はもちろん、1回で即失格だ。不正解ならその時点で正真正銘の敗退という、非常に大きなプレッシャーのかかる形式。この死のラウンドをまず勝ち抜けたのは、「KQK」「横浜クイズサークル」「大阪大学クイズ研究会」。そして、残り一枠を際どくくぐり抜けたのは、1ラウンドで劇的な逆転負けを喫した「尾張旭フリバ会」。最終問題を紙一重の差で押し勝ったリーダー・石川貞雄が「ニルヴァーナ!!!」を絶叫し、か細い蜘蛛の糸を掴んで戦場へと生還した。

■第2ラウンド
勝ち抜いた16チームが挑むのは、4チームから1チーム通過のコース別クイズ。1ラウンドを1位で通過したチームが、予め用意された7つのコースから1つを選ぶという一風変わった形式となっている。ここでは、各メンバーが1○ずつ積む早抜けリレークイズ「天領」を3チームが選択。残る1つも、1ラウンドと全く同じ形式「天丼」と、メンバー全員の力が重視されるコースに集中する形となった。

第1セットは「Period」「L.U.Q」「早稲田大学」「KQK」の4チームが参加した。再びPeriodの圧勝劇なるかと囁かれる中、一早く走ったのは「KQK」。理想的な流れで正解を積み上げ、一目散にゴールを目指す。Periodが誤答で足踏みをしている間に他チームも続けて点を伸ばし、気づけば勝ち抜けリーチが3組という大熱戦に。ここでボタンが回った「Period」最終走者は、「ジャパン最強」を標榜し、破竹の勢いで活躍する『abc the 15h』優勝者・鈴木淳之介。他2チームはそれを阻むべく果敢にチャージを挑むが、これを見事跳ね返し、辛くも「Period」が準決勝進出を決めた。

第2セットで相まみえるのは「博多クイズコミュニティー」「酔っぱらいのクイズ部」「NextStep関西」「尾張旭フリバ会」。第1ラウンドと同じ形式で競われるここでは、先程1位通過した「博多クイズコミュニティー」が地力の強さを見せ、他チームをじわじわと引き離していく。誤答も頻発し苦しい戦況で迎えた最終セット、各チーム強豪を配置した区間で「博多」から登場したのは、『第1回ノックアウト』準優勝の強豪プレイヤー・武藤大貴。1×から逆転もありうる場面でも冷静なプレイングで点差を守りきり、見事3チームを振り切った。

第3セットは「MQC」「シンサクール蒲田」「鹿児島クイズ愛好会」「横浜クイズサークル」。比較的誤答の少ないクリーンなクイズが続く中、真っ先にリーチをかけたのは「シンサクール蒲田」。しかし、ここで「MQC」が加速を見せる。「シンサクール」が誤答した一瞬の隙をついて鮮やかな2連答を決め、見事な逆転勝利と相成った。

第4セットは「玉Q」「クイズサークル“椿”」「TQC」「大阪大学クイズ研究会」が残りの1枠を争う。中盤までは実力者「玉Q」が貫禄の横綱相撲が展開。このまま押し切るかと思いきや、折り返しを過ぎたところで不運な誤答が連続し、雲行きが怪しくなる。背後から「TQC」「クイズサークル”椿”」が猛追をかけ、番狂わせなるかと思われたが、ここでしっかりと踏ん張った「玉Q」最終走者・松本裕輔が「若狭勝」をきっちりと押し勝ち、最後のチケットを掴んだ。

■準決勝:天by天by天
準決勝は、サークルの総合力が試される「天by天by天」。それぞれのメンバーの得点をかけ合わせて、一早く1000を超えた方がついに決勝戦に駒を進める。

第1セットを戦うのは「Period」と「博多クイズコミュニティー」。それぞれが相当の実力を持った12人を揃える「Period」が序盤から盤石のクイズを見せる。ある程度ポイントを確保したプレイヤーを即決で交替させるなど、戦略面も緻密で正に死角なし。「博多」も食らいつきに行くが、徐々に誤答がかさんでいき、万事休す。最後は全員リーチとなった「Period」の鈴木淳之介が「フレデリック・パシー」を冷静に取り、決勝戦の舞台へと一足先に上がった。

第2セットは「玉Q」と「MQC」。どちらも全員が平均してポイントを稼げる、総合力の高いチームだ。序盤から互角のクイズが展開されたが、「MQC」が早い段階で誤答を重ねてしまう。即座に建て直して追いつこうとするものの、終始安定して正解を積み続ける「玉Q」がリードを許さない。そのまま終盤戦にもつれこむと、「玉Q」が残り人数を活かして攻めに転じる。残った「MQC」メンバーもギリギリのところを何度も凌ぎ続けるが、最後は「玉Q」の大美賀祐貴が「弓道場で、/」「安土!」という素晴らしいスラッシュを見せ、ついに念願の決勝戦へと進出した。

■決勝:「天」
最後の勝者を決めるのは、シリーズ恒例の形式「天」。誤答無しで9人が正解をしたチームが最後の「天」問題に挑戦。それに9人全員が正解できれば、晴れて『天7』優勝のトロフィーを手にすることになる。

戦いは、終始「Period」が一歩「玉Q」に先んじる展開が続く。1問の不正解で容易に立場が逆転するルールで、どのメンバーも全く崩れる様子のない「Period」が、まずは最初に「天」問題に挑戦。しかしこの初チャレンジで問われた「エスクローサービス」は9人中6人の正解にとどまり、試合は続行となる。ここで第6走者まで回っていた「玉Q」が一転して有利かと思われたが、「Period」が猛烈な勢いで追い上げ、プレッシャーに押されたか、とうとう「玉Q」に誤答が出てしまい、バトンは第1走者に戻ってしまう。ここから「玉Q」はとにかく「Period」の走者を進ませないように戦略を転換し、押しを早めていく。第1走者・松本の好セーブが光り、10問以上の足止めをするが、ここで焦らず、自分のわかる問題を確実に取る方針に徹した「Period」が、ついに無傷で2回目の「天」問題に到達。「第1回芥川賞を受賞した小説家」の「石川達三」を見事全員が正解し、『天7』優勝の栄冠に輝いた。

全国のクイズサークルのナンバーワンの座を射止めた「Period」には、優勝チームインタビューの後に「『天8』の開催権」が授与された。クイズサークル「Period」は、学生有志が互いの実力を高め合う目的で結成され、その歴史はまだ浅いという。しかし、初出場で舞台に上がった彼らのクイズは非常に完成度が高く、他を寄せ付けない力までも持ち合わせていた。メンバーの団結によってここまでの強さを得るに至った彼らは、まさしく「ナンバーワン」の称号にふさわしいと言えるだろう。

いまや競技クイズ界の一大イベントとなった『天』。回を重ねるにつれて高まる一方の期待値を大きく上回る見事な完成度の大会を提供した「短文クイズサークル・A(あ)」から、バトンは「Period」に託された。第8回の開催日程はまだ未定だが、きっとまた多くのクイズサークルが頂点を目指して鎬を削り合うことになるだろう。その日を楽しみに待ちたい。

優勝 Period
(小林逸人、島田翔平、長井和也、谷口貴紀、中村宗太郎、鈴木淳之介、加瀬主税、荻田直道、森田爽斗、水上颯、岩渕圭一郎、小山裕史、廣瀬哲、田村知也)
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