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INTERVIEW

テーマは「努力が報われる日」――入社9年目、新進気鋭のディレクターが演出を担う『高校生クイズ』企画の裏側とは?/日本テレビ・関口拓インタビュー

高校生たちが平等に競えるように考えた
「努力が報われる日」というコンセプト

――今年の『高校生クイズ』では、その伊沢君・ふくら君を筆頭とするQuizKnockが応援パーソナリティを務めます。
関口 QuizKnockには彼ら2人との繋がりから入ってもらいました。ほかの皆さんともいい関係ができてますね。
――彼らの活躍はどのようにご覧になっていますか?
関口 そうですね。まずはテレビ番組からスターが生まれるというのはめちゃくちゃうれしいことだと思います。裏方冥利につきるというか……。今年の『高校生クイズ』からも、そんなスターが生まれたらいいなぁと思っています。あと、「彼らが出てきたことで、すごく救われた人がいっぱいいるんじゃないかなぁ」と思って。
――というのは?
関口 僕、めちゃくちゃ勉強が好きだったんですけど、地元の奴から「ガリ勉だ」とかそんないじられもあって……。でも、今って「頭良い人=カッコいい」に繋がってるじゃないですか。多分、それは彼らが残した影響なんだろうなぁと思います。それって素晴らしい功績ですよ。救われている人はきっといっぱいいるだろうし、だからこそファンがたくさんいるんだろうなあと。
――その原点は『高校生クイズ』の「知力の甲子園」や、『頭脳王』の演出ですよね。
関口 たしかに元を辿ると、五味さんと河野さんが「賢い高校生ってカッコいいんだよ」っていう演出をされたことなんですよね。「間違えたところをいじる」ではなくて「カッコ良く正解したところを見せる」、そういうことの積み重ねで少しずつ流布してったんじゃないかなぁって思いますね。
――なるほど。では、いよいよ『高校生クイズ』のお話をお願いします。『高校生クイズ』は時折、大きな路線変更がされています。例えば直近の3年間は「地頭力」をキーワードに、それまでとかなりベクトルが違った演出をされていました。そのあたりは関口さんはどのようにご覧になっていましたか?
関口 『高校生クイズ』は担当していない間も全部観てました。で、最近の「地頭力」については、いい面でいうと「昔の『高校生クイズ』と比べ、誰もが優勝できる可能性のある大会になったなぁ」というふうには思いました。クイズ研究会に入っていようが、入ってなかろうが、その場の機転と発想次第で誰もが優勝できる可能性がある。それ自体は『高校生クイズ』のひとつの時代として、作られるべくして作られたものだったんだろうなあと。あと、予選も全国一斉でスマホで行うようになったり……。
――コロナ禍というのも番組に大きな影響を与えましたよね。2020年は夏に大会ができず、冬開催になったり……。番組のファンとしては、それでも番組が続いたことが、まずありがたいなと思います。
関口 すごく大変だったろうなと思います。全部リモートで、50面コートを割ってやってましたからね。だから今年は、なるべく高校生たちの生の表情を届けたいなとは思ってます。
――今年は大きく方向性が変わるそうですね。詳しく教えていただけますでしょうか?
関口 まず経緯として、社内のコンペがあったんですよ。そこで「『高校生クイズ』をやりたい!」というディレクターが僕を含めて何名か企画書を提出しまして。結果、僕の案が選ばれたと。
――気になるのは、その企画書の中身ですが……。
関口 僕が書いたのは「努力が報われる日」っていうコンセプトでした。去年までの明るく楽しい路線って、「誰もが優勝できる」という点ではいいことだと思うんですよ。……でも、やっぱり僕は真剣な、スポーツのように熱いクイズが好きなんです。「野球部が甲子園を目指すように、『高校生クイズ』にはクイズを日々たしなむ高校生が目指すべき全国大会になってほしいなあ」というのは、ずっと思ってて。
「もし自分が担当するなら『今まで頑張ってきた分、絶対に負けられない!』という熱い思いがぶつかりあう、実力を競う大会にしたい」と。そういう想いを企画書に書いたところ、それが採用されて、担当することになりました。……で、QuizKnockでも『WHAT』という学生向けのクイズ大会が作られたじゃないですか。
――5月に開催されましたね。
関口 先日、ふくら君とも「似たタイミングで同じことを思ってたねえ」ってしゃべったんですけど、同じ年にQuizKnockは「じゃあ、僕らで新しい大会を作ろうよ」って『WHAT』を作ったし、こっちも「努力が報われる日」を謳った『高校生クイズ』を作ったと。そんな思いを共有できたので、QuizKnockに今年の『高校生クイズ』に参加してもらえることになりました。

――今回は47都道府県代表制が廃止になりました。これは『高校生クイズ』の歴史においても大きな変更ですが……。
関口 そうですね。そこはSNSでかなり反響がありました。でも、今は男女を分けるのも、年齢で分けるのも古い時代じゃないですか。地区予選もなくなり、スマホで全国一斉に予選をやるようになった今、地区で分けるのももう古いのかなぁと思ったんですよね。それで「単純にクイズで点数が高い順に評価されるべきじゃないかな」と思って、自然な気持ちで外したんです。もちろん、僕は地元が岡山なので、「岡山の高校が出なかったら寂しいな」みたいなことはあるかもしれないですけど。でも、こうするのが一番平等かなと。
――都道府県別というのは、全国各地の視聴者がどの高校を応援するか決めるとき、すごくわかりやすい目印だと思います。番組を作る側からその保険を外したというのは、すごいチャレンジだなと思いました。
関口 たしかにそうかもしれない。でも、『高校生クイズ』をやるときは、僕はテレビのディレクターというよりは大会のイベンターの気持ちなんです。その立場からすると、とにかく出場する高校生が熱くなる大会になってほしい。要は「高校生ファースト」で物事を考えたときに、それが一番じゃないかなと思ったと。僕はお笑いが好きなんですけど、お笑い賞レースとかでも「Aブロックが死のブロックです」みたいなことがよくあるじゃないですか。強い芸人さんが溜まってて、そこがもう事実上の決勝戦みたいな。あれって、なんかモヤモヤするんですよね(苦笑)。
――『高校生クイズ』だと、「知力の甲子園」時代の関東予選はまさにそんな感じでしたね。3連覇を狙う伊沢君率いる開成チームを、後輩の水上君のチームが地方予選で破った対戦(2012年)なんか、全国大会の決勝でやってもおかしくなかった。
関口 まさにそうですね。『M-1』の場合は強い順に評価されるからすごいフラットに見えるけど、ブロック制だとちょっとだけ気になるんですよ。
――そういう意味では、全国大会のガチ度はかなり上がりそうですね。
関口 そうですね。あと、「知の甲子園」はどっちかと言うと「天才ショー」になってた感じがするんですよ。一方、「アメリカ横断」は「青春ショー」とか「友情ショー」だったと思うんですけど、今回はイメージとして「両方のいいところをもらおう」と思ってます。多分、賢い方々が勝ち上がるクイズ番組になると思うんですけど、「でも、賢くなる裏にはすごい努力があったんだよ」っていうのを見せたいなと。決勝に残った高校などには取材もさせていただいて、「すごい解答をした裏にはこれまでの対策量があった」みたいな青春物語をお見せしたいなぁと思っています。大会はとにかく熱さを届けることが一番で、その熱さを届けるスパイスとして、「努力」をキーワードとしてお届けできたらいいかなぁと。
――それにしても、「知力の甲子園」世代の伊沢君・ふくら君、そして関口さんがバトンを引き継ぎ、「知力の甲子園」時代の流れを汲む新しい『高校生クイズ』を作るということには、歴史のうねりを感じます。
関口 たしかにそうですね。僕も1年目にADで入ったときは、あのときの河野さんのポジションに自分がなるなんて、まったく思ってなかったです。恐ろしいですね(苦笑)。
――クイズの中身や形式はいつ頃発表ですか?
関口 実は6月1日に1次予選のジャンルを10個発表するんですよ。


――「予選のジャンルを発表」というのは新たな試みですね。
関口 クイズを日々努力している、強い人に勝ち上がってほしいんですけど、門戸をみなさんに開くために、努力ができる道筋をお渡ししようということですね。努力するかどうかはみなさん次第ですけど。個人的には「クイズをやったことないけど努力しました」みたいなダークホースも生まれると面白いなぁと思っています。そういう意味で、いろいろ楽しみですね。
――一口に「クイズの努力」と言っても、何をやったらいいのかっていうのは、実はフワッとしていると思うんですよ。番組ごとにベクトルも違えば、各々が好きなクイズも違ったりしますし。その点で、最初にジャンルを公開して指針を作るというのは、すごく真摯に出場者と向き合われているなと思いました。
関口 ありがとうございます。そこは平等になるように発表していきたいですね。とにかく『小5クイズ』で学んだように、熱く頑張ってる若い高校生を応援したくなる放送になったらいいなと。そのためには、その高校生が好きになってもらえるような放送にすることだと思うんですよね。より多くの人の記憶の1ページに残せる放送にしたいんです。その中でも、特に中学生・小学生に「クイズって熱いね」「クイズ、カッコいいね」って思ってもらって、クイズが好きな人を増やしたいですね。そういう火を広げていくことが、『高校生クイズ』という番組をより長く続くけていくために大事だと思います。

――ちなみに、今回のテーマについて五味さんには相談されましたか?
関口 はい、相談しました。「『努力が報われる日』にしたいと思います」と言ったら「めちゃくちゃいいテーマだね」とおっしゃってましたね。五味さん曰く「『努力・友情・勝利』は人間の本能にある熱い気持ちだから鉄板なんだ」「表に出すと『少年ジャンプ』になるけど、裏で作っている時にもそれを大事にしたほうがいいんじゃないか」みたいなことはすごく言われました。
――まさに王道のテーマだと。
関口 もうひとつ言われたことは、「『知の甲子園』はすごく面白かったし、ある程度、成功はしたけど、視聴者が『なんでそんな知ってるの?』という驚きに慣れてしまった」ということですね。「だから、視聴者がより興奮できるクイズの形式を考えたほうがいい」というのも、すごく大きな指針としていただきました。
――しかし、「知力の甲子園」そのものを作られた五味さんの教え子である関口さんから、2022年版の真剣勝負の『高校生クイズ』が生まれるって、制作側もドラマチックですね。ちなみに、伊沢君やふくら君とは、今年の『高校生クイズ』について具体的に話をされていますか?
関口 問題などはこれからですけど、ヒントになるような話はしていただいていて。例えば、こないだ伊沢君と話したとき、「プレイヤーとして観る『高校生クイズ』と、テレビ好きとして観る『高校生クイズ』はなんか違うんです」みたいな話をしてくれたんですけど、「テレビ好きとしては、文化系高校生が『ごめんね』『ありがとう!』って言いあう、あの瞬間がめちゃくちゃエモい」って言ってました。
――正解したり、間違えたときにチームメイトと交わすやりとりですね。
関口 あれは『高校生クイズ』でしか見れないんですよね。ふくら君も同じことを言ってました。「高校生の会話が聞ける問題がいいですね」と。もちろん、『高校生クイズ』を体験したプレイヤーとしてのご意見もいろいろ聞きましたけど。
――「出場者目線」と「視聴者目線」の両方から意見を出せるのは2人の強みですね。
関口 はい。いろいろご意見・ご知恵をいただいて。伊沢君は「『知力の甲子園』のときは、準決勝の早押しで足がずっと震えてた」「早押しは『押し負けたらヤバい』と思うから精神が研ぎ澄まされて、汗がすごかった」みたいなことも言ってましたね。逆に「決勝は、知識量に自信があったし、普段通りに解答すれば失敗もないので、そこまで緊張はしなかった」みたいなことも言ってましたけど。見ている側からすると「決勝だから熱い」みたいなことを思うんですけど、プレイヤー側からすると、形式によっては決勝よりもその前の方が緊張を感じるというのは面白いですよね。そういう会話の節々から、「熱くなるヒント」をいただいた感じがします。
――伊沢君たちが経験してきたクイズの真剣勝負の面白さが、同世代の関口さんの手によって新時代の『高校生クイズ』に注ぎ込まれるのがとても楽しみです。ぜひ期待して放送を待ちたいと思います!

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