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INTERVIEW

「QUIZ JAPAN vol.14」掲載『パネルクイズ アタック25』インタビュー(ダイジェスト版)~問題チェッカー/倉橋光子~


2022年3月7日頃発売の「QUIZ JAPAN vol.14」に収録されている『パネルクイズ アタック25』インタビューから、ダイジェスト版を全3回にわたって公開! 第3弾は、問題チェッカー・倉橋光子のインタビューをお届けする。
(2021年9月2日収録 聞き手:大門弘樹)

倉橋光子(くらはしみつこ)
1949年、大阪府生まれ。『パネルクイズ アタック25』の放送開始直後より問題チェッカーに起用され、46年余の間、番組を支えた。そのほかに担当した主な番組に『晴れ時々たかじん』『べかこの自遊時間』『おっちゃんVSギャル』などがある。

『アップダウン』の観覧のアルバイトが
きっかけで『アタック25』へ

――まずは倉橋さんの経歴から教えてください。
倉橋 私は文学部心理学科を卒業したのですが、ゼミの仲間が広告会社に務めていて、担当した番組が「夢のハワイ」へ行くMBSの番組でした。
――『アップダウンクイズ』(以下『アップダウン』)ですね! ということは、その広告代理店というのは萬年社ですか?
倉橋 はい。ゼミの仲間は、制作部でロート製薬の担当になったのです。一方、私は就職をしなかったので、家庭教師や、書道関係の仕事をしていました。その後、ある時「MBSで仕事をしないか?」と誘われたのですが、条件が合わないので断りました。しかし、その後また『アップダウン』の観覧のアルバイトに呼ばれ、行くと、案内された控室には司会の小池清さんや、『アップダウン』や『アタック』の構成の堤さんもおられたのです。そこで、「君はなんでここへ来たの?」「現在は何してるの?」「ABCで『アタック25』という新しい番組を児玉清さんの司会で放送しているのですが、問題に関わる仕事をしてくれる人を急遽探すことになったのです。仕事しませんか?」という話になって。
――それはいつ頃の話ですか?
倉橋 まだ『アタック』が始まって1クールの頃です。「ABCのプロデューサーの面接を」ということで、収録日に伺ったら、「クイズ番組の問題をチェックする仕事です」と。それでダメ元で始めることにしました。夏休み明けの頃でした。
――夏休み明けということは、9月収録分からお仕事を始めたということですね。
倉橋 そうです。夏休みは高校野球がありますので、夏休みの最後あたりから仕事を始めました。
――そのあともずっと『アタック25』だけを続けていらっしゃるのですか?
倉橋 いえ、ほかの番組も。クイズ番組以外だと、祝日放送の特別番組、ローカル番組ですが関西一円の様々な話題を集めて紹介する番組、お昼のワイドショー『晴れ時々たかじん』『べかこの自遊時間』のブレーン、『ナイトinナイト』(ABCの深夜番組枠)火曜日の桂三枝さん司会のクイズ形式の情報番組の問題に関する仕事などです。
――『ナイトinナイト』は『おっちゃんVSギャル』(86〜00年)ですよね。「世代間のギャップを問う」みたいな……。
倉橋 はい、それです。大変でした。もちろん事前に十分に準備はしているのですが、放送当日の朝、いきなり「今日の収録で使う問題が足りないから、今から1問作ってくれる?」と言われたり……。
――その日の収録で使う問題を、朝に作るのですか?
倉橋 例えば「放送予定だった問題の交渉がうまくいかなくて、問題のネタが足りなくなった」ようなことがあると、急に作ってほしいと言われるのです。
――そんなことを急に言われたら焦りませんか?
倉橋 まぁ、何があるのかわからないので、早朝から出社していますし、日頃から準備をしていますから、提案して間に合わせましたが。
――他にはどんなクイズ番組に関わりましたか?
倉橋 クイズブームの頃は、朝日放送でもクイズ番組を3本ほど放送していました。間接的なかかわりですが、三枝さん司会の日本地図が登場する番組、ご存じですか?
――『三枝の国盗りゲーム』ですね。
倉橋 あとは『世界一周双六ゲーム』。『アタック』のほうが放送開始が早かったので、「問題チェックのノウハウを教えてほしい」と頼まれて、担当の方たちにお教えしました。

微妙な解答には収録を止めて確認
時には児玉さんが電話されることも

――問題をチェックされる際に、特に苦労されるのはどういったことでしょう?
倉橋 特にあげるとすれば地名ですね。国のサイトや辞書に書いてあるものは、言うならば「本名」です。でも、例えば川の名前などは、その地域の呼び名がありますでしょ? 本番では、似ているが少し違うというような名前を答えられることがあるのです。そうすると「ご当地ではそういう呼び名もあるかも?」って……。
――なるほど、ローカルな呼び名まではチェックしきれないと。
倉橋 ただ、本番中でもその問題を積み残すことはできないので、収録を中断して、その河川の者に電話をかけ、「ご当地ではこういう言い方をしますか? 聞かれたことはありますか?」と。
――本番中に!
倉橋 私自身、電話で覚えているのは、漫画家のジョージ秋山さんです。お名前が正解となる出題をした時、出場者が「秋山ジョージ」と答えたのです。
――一番困るパターンですね(笑)。
倉橋 「ペンネームだから、秋山ジョージはバツ」と考えたのですが、念のためにジョージ秋山さんの事務所にお電話したのです。「こういう出題をしまして、秋山ジョージと答えられたので、私としては間違いと判定したいのですが、どう思われますか?」とお聞きしたら、「私はジョージ秋山だ!」って(笑)。
――それ以外は認めないと(笑)。
倉橋 まさかご本人が電話口に出られるとは思っていませんから、「お忙しいところお邪魔して申し訳ありません!」とお詫びしました。あの時は、肝を冷やしました(苦笑)。中にはご本人が「それでけっこうですよ」と答えてくださる方もいらっしゃるのですが。他にも判断しにくい解答があった時には、省庁の担当者に問い合わせをしました。ドイツ語の出題に関する時には、ドイツ語がお得意な児玉さんも副調整室に入ってこられて、「僕はダメだと思うけど、学者の友だちに電話をかけてみるよ」と自ら電話をかけてくださって、「やっぱりダメだって!」などと(笑)。
――それはすごいエピソードです!
倉橋 私たちが本番中に走り回っている時は、たいてい裏でそのような事態が発生していたのです。当時は電子辞書もなく、辞書類をスタジオに持ち込み、それでも足りない時は誰かが図書室に走って、内線電話でバツとかマルと伝えたり……。そういう時代もありました。アナログ時代は、エピソード満載です(笑)。

「共通の教養」がなくなったことが
クイズ番組の出題内容に影響している

――番組を続けてきて、時代の変化を感じたことはありますか?
倉橋 『アタック』がスタートした頃は、テレビの街頭インタビューをしても皆、「いやいや」って避けて通る時代でした。でも今は、「はい、なんですか?」って、皆さん上手に答えられて。そういうところにも時代の変化を感じます。それは『アタック』の出場者も同じで、昔に比べると皆さん、慣れていらっしゃる。テレビに出るのが怖くなくなったということでしょうか。それと、昔の出場者は「よそ行き」の服を着てこられたのです。女性なら着飾って、髪飾りもつけて、おしゃれをして来られた。今はほとんどの皆さんが普段着。Tシャツ・Gパンの人もいますもの。日本人の衣服文化の変化でしょうか。
――昔はテレビに出ることって、一世一代の大舞台でしたものね。
倉橋 民俗学ではよく「ハレとケ」という言葉を使いますが、「ハレ」感覚が希薄になったのでしょうか。そして、クイズの出題内容も変化しています。児玉さんがよく「この頃の若い人は本を読まないんだねえ」っておっしゃっていたのですが……。
――児玉さんは読書家ですものね。
倉橋 そう。堤さんも児玉さんも読書家でした。「君、この本、読んだ?」ってよく聞かれましたよ。私たちの世代には「これは一応、大学を出るまでには読んどかないと」という物があるので。私は最小限度ですがそれなりに読んでいたので、どうにか対応できたのですが、今の若い人にそれを言ってもね(苦笑)。新しい本も読まないし、例えば夏目漱石の作品でさえも読んでいない。『こころ』は知ってるけれど、教科書に出ているところだけしか読んでいなかったり。「ここだったらわかるかな」という範囲がひろがらなくて。出題時に困ります。
――『アタック25』や『アップダウン』を見返して思うのは、昔の人は読書をされていたのか、教養がおありなんですよね。でも今の若者は、ネットで表面的な情報だけを見聞きして満足してしまうのか、実際に本を読んでない、映画なども観てないと感じることが非常に多くて。「共通の教養」みたいなものがなくなってしまって、それがクイズ番組の出題内容に露骨に出てるんですよね。
倉橋 はい、そういう共通部分が減っていますよね。例えばオペラを出題しますでしょ?オペラって、部分だけを捉えたら恋愛話だったりするのですが、社会問題や、様々な歴史的背景があるものが多いのです。それを抜きにして恋愛の部分だけを捉えられると、作者がその作品を作った意味が薄くなる。わかった上で出題するならいいのですけどね。
――表面だけでなく、本質も理解してほしいと。
倉橋 ただし、「全ての人にそれを学んで欲しい」とは思わないです。そんなに多くのものを一度に学べませんので。しかし、そういうことに少しでも関心をお持ちの方は、ちょっとずつ深めて欲しいのです。ですから、クイズがお好きな方たちに向けたこの雑誌では「クイズに関心を持ったことをきっかけにして、自分の好きなものを探し、それを深めていくチャンスにして欲しい」と伝えていただきたい。単に「クイズ番組に出て楽しかった」ではなくて、「こんな人と知り合った」とか「こんなことを調べていたらだんだん面白くなってね」というように。私は学びを深化させるきっかけづくりがクイズの役割の一つではないかなと考えています
――『アタック25』という番組は、多くの方がいろいろなジャンルに興味を持つきっかけとなるようなクイズを出題され続けてきたと思います。

倉橋 お役に立てたなら、うれしいです。
――そんな『アタック25』ですが、このほど番組が終了することになりました。率直な想いをお聞かせください。
倉橋 長い年月、大勢の方にご覧いただきありがとうございました。「出場してみたい」とハガキを書いたり、ネットで申し込んだりと、たくさんの方にアタックしていただいて、感謝しています。番組が終わるということについては……。(涙ぐみながら)児玉さんにはお知らせしたくありません。児玉さんが半生を懸けて大切にされた番組でしたので、残念です。もちろん、一所懸命やってきた私たちスタッフも残念です。また、嘆願書を書いたり、ネットで「終わるなんて残念すぎる」という書き込みをしてくださる方もたくさんいらっしゃって。それを読んだ時に、「津々浦々のファンの方々にお礼を申し上げたい」と思いました。朝日放送でまたクイズ番組が作られるかもしれませんが、その時にはよろしくお願いします。……最後に、これを読んでくださった方に、佐藤琢磨さんがインディ500で優勝された時に使われた言葉をお伝えしたいと思います。
――元F1ドライバーの佐藤琢磨さんですね。
倉橋 私、F1の頃から、佐藤琢磨のファンだったのです(笑)。佐藤さんが「ノーアタック、ノーチャンス」という言葉を信条にされているのですが、このフレーズに「アタック、チャンス」が使われているのです。
――ああ、ホントですね!
倉橋 「クイズ好きの方たちも、様々なことにアタックして、チャンスを捉えてください!
――『アタック25』に込められた精神を、クイズが好きな多くの方に届けたいと思います。
倉橋 はい! よろしくお届けくださいませ。

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