『SQUARE』の旅館のシーンは伊沢君の本から妄想を膨らませた（杉基）
――特に『SQUARE』の全国大会進出チームが集まった旅館で、謎解きをするシーンは『高校生クイズ』オマージュもあって、伊沢さんにとっては懐かしかったんじゃないですか？
伊沢 はい。あれはすごいですよねえ。まずよくできてるし。硬貨を置いていくと「７○３×」になるシーンは、あの瞬間に「あっ、終わりのところが見えた！」と思って。「あっ、ここにたどり着くんだ！」っていう。もちろん多くの方が「最後は７○３×だろうな」と思ってたと思うんですけど、あそこで改めて示されたところが「漫画としてカッコいいな」と思いましたし。あとはやっぱり「『高校生クイズ』あるある」が詰め込まれていて……。
杉基 そう、あれはホントに伊沢君の本を読んで、ホテルのこととか前日談がいっぱい出てたんで。
伊沢 ありがとうございます。
杉基 で、さらにクイズ大会のアフターかなんかでその話、聞きましたよね？ 「本、読んだんですけど、『高校生クイズ』の話、聞かせてもらえせんか？」って言って。なので、ホテルでＯＢの人たちが来るあたりのエピソードは全部、伊沢君の本からです（笑）。
伊沢 はい。あのシーンはまさに機山館（※『高校生クイズ』で全国大会の出場者が宿泊する旅館）でしたね。あそこって、クイズで戦うということをいっとき忘れて、じっくり交流できる数少ない場なんですよ。あそこで今まで別々に行動していたキャラクターたちが一同に介して、もう矢のように会話をし合うじゃないですか。まさにあんな感じでした。
杉基 『高校生クイズ』でも『ウルトラクイズ』でも、ホテルで抜き打ちでクイズをする、みたいなことがあったじゃないですか。
伊沢 はい。ちょうどその時期ですよね。「マナークイズやります」みたいな。
杉基 だから「描かなきゃ」とか思って（笑）。
伊沢 我々も廊下でクイズしたりとかしてたので（笑）、みんなが紙を見つけて廊下に出てくるシーンとかは「あったー。こんな感じだったー。集合の時、こんな感じでワラワラ出てきてたー」みたいなのは思い出しましたね。
杉基 なので、ホテルのクイズも「何をやらせようかなあ？」ってすごく考えて。で、マナークイズと思いきや（笑）でも、あのマナークイズは絵面が楽しいんで、「それはそれで描こう」と。
杉基 ホントですか？
伊沢 「荷物、絶対まとめとけ！」とか「マナークイズがあるかもしれないから、常に気をつけて」みたいなことを。僕が大学生の時に「マナークイズ」とか「早起きクイズ」があったんですけど、出てた高校生たちがやってなかったことがあって。僕は番組を観てて「いやいや、荷物は絶対まとめとくでしょ」と思って（笑）。それが漫画で描かれていたので、「笹島の言う通りです！」って（笑）。
杉基 多分、対策して挑んでいる人は「みんな、もうきっとわかってることなんだろうなあ」と思って。
伊沢 そうですね。できてる子たちはできてたから。
杉基 はい。だから、そこはもうマニアみたいな上の学年の人たちが「こういうことを言っているんだろうな」というのを想像しながら描いてて（笑）。
伊沢 会場の先輩が出てくるところっていいですね。あそこの先輩感は、読んでる中で一番「あー、自分こんな感じだったな」みたいに思った部分なんですよ（笑）。「あっ、こんな感じだった、ウチ」みたいな。僕の代だと、ＯＢっぽい人は安達（光）さんぐらいしかいなかったんですけど、「こんな感じのやり取りしてたんだなあ」みたいなのは思い出しましたね。
――『高校生クイズ』って視聴者から見ると、スタジオパートしか知らないじゃないですか。
伊沢 そうですね、スタジオしか知らないですね。
――そう、スタジオしか知らないので、逆に『ナナマルサンバツ』で初めて「こうなんだ！」というのを知る人が多いと思います。
杉基 あっ、でもだいぶ妄想入ってますよ（笑）。伊沢君の本とか、みなさんに聞いたお話プラス自分の妄想でなんとか「フィクションです」みたいな感じで描いたので。
伊沢 でも、あの旅館シーンもそうですし、クイズの合間のしゃべりとかもそうですけど、あれは画面には絶対に映らない部分だし、クイズの世界にいない人からすると「そんなことをやってるんだ」って新鮮だと思います。例えば、スポーツ漫画的な、体育館の上にいる人たちは「こんなことをしゃべっているのか」みたいなところもクイズの世界でも実際にやっているわけで。僕も『abc』で自分のいないラウンドは、開成だったり東大の席から離れて、仲いい奴とつるみながら観る、みたいなことをやってましたし。だから、さっきも言いましたけど、観戦シーンとか合間のシーンがホントに良かったです。あそこも含めてクイズ文化の一つだから。
――なるほど。