TBSで放送中の人気番組『東大王』で、4月から新たに登場した東大王候補生たち。東大王候補生のこれまでの歩みと『東大王』に対する想いをインタビューする連続企画。1人目は、謎解きサークル「AnotherVision」にも所属する紀野紗良。鈴木光に憧れてきた紀野の、『東大王』にかける夢とは?
(2019年6月28日収録 聞き手:大門弘樹 撮影:玉井美世子)©TBS
憧れの鈴木光と初対面で
思わず泣きそうになった
――続いては紀野さんが初めて参加した収録のお話をお聞かせください。あこがれの『東大王』のメンバーとはお話されましたか?
紀野 実は控室は一緒だったんですけど、収録前は緊張していたのと、実は私、けっこう人見知りなので、あんまり話していなくて(苦笑)。でも、光さんが話しかけてきてくれて、やっと返せる感じで……。でも、そうやって先輩方がアプローチしてくださったというか、寄り添って来てくださったおかげで、今はなんとかつながれているような感じですね。
――あと、憧れの鈴木さんに初めて控室でお会いした時のお気持ちは、いかがでしたか?
紀野 いや、もう……。実は涙が出てきそうになったんですよ。でも、ご本人を前に涙を流すのもあれだったので、めっちゃ頑張って……。でも、ホントうれしかったですよね。「本当にいらっしゃったのだなぁ!」って感じで。
――それぐらい憧れの対象だったのですね。
紀野 はい。だから実際にお会いして……喜びがホントに大きくて。
――ずっとテレビで見て憧れていた人と、同じステージに立てたというのをそこで初めて実感した、みたいな?
紀野 そうですね。それまでは「収録がある」というのはわかっていたんですけれども、実感がなかったというか……。なんかフワフワしたような感じでいたんですよ。それが、実際に皆さんにお会いした途端に「はあ~!」となった感じで。
紀野 実は私みたいに、けっこう賑やかな方なんですよ。番組ではそんなイメージ、感じられないですよね(笑)。私、今は賑やかなところくらいか似ていないですけど、いずれは光さんにみたいにちゃんと答えられて、かつ音楽とか他のジャンルでも多才だな、って思われるようになりたいです。今は全然まだまだですけれど。
――鈴木さん以外の『東大王』のメンバーも、テレビで見たときと実際に会った時では印象は違いましたか?
紀野 そう! 実は違ったんですよね(笑)。テレビで見ていた時は、私の中では水上さんも鶴崎さんも割とおとなしいイメージだったんですよ。でも実際に会ってみると、鶴崎さんと水上さんはすごく仲が良くて、ずっとふざけてたことを言い合っているんですよ。そこは面白いなぁと。でも、実は『東大王』に出る前に、クイズ研究会の夏合宿で鶴崎さんと水上さんにはお会いしていたんですよ。でも、伊沢さんと光さんにはお会いしたことがなかったので。
――あっ、その話聞きたいです! 「クイズ研究会には籍を置いているけど、ほとんど顔を出していない」みたいなことをおっしゃっていましたけど、夏合宿は行っていたのですね?
紀野 はい。去年(18年)ですね。途中で帰らなきゃいけなかったんですけれども、前半だけ行っていて。……あっ、たぶん林さんもその時にいたと思います。
――実はその夏合宿には、現『東大王』メンバーが4人もそろっていたと。ちなみに、この合宿ではどんなことを?
紀野 私は大学スタートだったので、皆さんとはあまり直接対決することはなかったんですよ。でも、見ていたら鶴崎さん・水上さんはやはり強くて……。クイズの実力はホントに上だと思います。
――この合宿って、『東大王』のオーディションよりは……。
紀野 ずっと前です。合宿が去年の夏で、オーディションが今年の2月ぐらいだったので。
紀野 はい。あと、林さんも名前だけ覚えていたんですよ。なので、最初の収録の時に「もしかして夏合宿にいましたか?」って言ったら「いた」って(笑)。
――じゃあ、最初の収録は「クイズ研究会が固まっている中に、ひとりだけAnotherVisionが迷い込んだ」みたいな感じではなく……。
紀野 実は、ある程度は知っていた人が何人かいたような感じですね。
――同じ候補生の砂川さんはどうでしょう?
紀野 砂川さんはもともと「ミスター東大コンテスト」で知っていました。砂川さんも林さんもとてもフレンドリーで、一番年下の私にもたくさん話しかけてきてくださるんですよね。だから、私にとっても一番話しやすい存在ではあります。
――じゃあ、新メンバーの3人はすごく仲のいい感じでやっていると。
紀野 仲がいいと思いますね。だから、すごく楽しいです。
©TBS
クイズで正解するのは楽しい!
その感覚を忘れないようにしたい
――『東大王』で出されるクイズは、日ごろやっていらっしゃる謎解きとは全然違うので、苦労されている面もあると思いますけど、実際に体験してみて、『東大王』という番組の問題はいかがですか?
紀野 収録の場でクイズをやるのって、たぶん普通にクイズをやる環境とは違ってると思うんですよ。たとえば、藤本(敏史)さんの声とかが入ってきたり……。でも、そんな中でも集中してやらなきゃいけない。そういう意味では、普段よりも集中力を使うという点で「いつもとは違う経験なのかなぁ」とは思いますね。
――環境的にはけっこう過酷だと。
紀野 でもそういうガヤは、私はけっこう好きなんですよ。なので「なんか面白いなあ」と思いながらやっていますね(笑)。
――じゃあ、収録では緊張はするけど、それ以上に楽しんでいる感じで。
紀野 はい。最初の2回目ぐらいまではホントにガチガチで、あまり楽しむ余裕がなかったんですけど。でも今は、毎回すごく楽しいです。
――なるほど。で、クイズの中身についていうと、例えば「漢字オセロ」とか、とても素人では太刀打ちできないようなものをやられているわけですけど、対策みたいなことは?
紀野 私の場合、「ひらめき問題に強い」ってことがウリなので、謎掛けはなるべく落としたくなくて。なので、普段から謎掛けのページをバーッと見て「これかなぁ?」と考えたり。あとはスマホで謎解きや脱出ゲームをやって、ひらめき系の勘が鈍らないようにしたりとか。
――「ひらめき」という自分の武器を常に磨いていると。
紀野 で、ほかの知識だと、例えば漢字は適当に「魚編の漢字は何があるかなあ?」とか調べてノートに書いて、それを見返すような形でやっていますね。まぁ、漢字は多分、一番勉強しやすいと思います。世界遺産は、「世界遺産検定」の本を買ったので、それを「へぇ~、こういうのがあるんだ」っていう風に眺めている感じです。……実は私、カタカナがホントに覚えれないので、あんまり頭の中に入っていないと思うんですけど(苦笑)。
紀野 やっぱり、そこはやらないとちょっと……。私、知識はほかの皆さんと比べて劣っていると思うので、そこは自分で勉強しないといけないなと思ってやっていますね。
紀野 謎掛けですね(キッパリ)。
――やっぱり(笑)。
紀野 私、もう本当に大好きなんですよ。ひらめいたらすごくうれしいですし、「あっ、そうかぁ!」となるのがとても面白いので、もうその楽しさを味わうためにやっているような感じです。
――でも、ほかのメンバーからしたら絶対に頼もしいですよね。だって、あの形式は水上君ですら手こずっている印象がありますし。
紀野 そうですよね。けっこうハンデが大きいと思うので。
――ちなみに、今までで一番会心の解答って何でしょう?
紀野 えっと、映像問題で……。
――あ、謎掛けじゃないのですね(笑)。
紀野 はい。映像を見ての早押し問題だったのですけど、「遠くから見た画が、どんどん近くに寄って来る」みたいな感じの映像で、「これはどこの市にあるものでしょう?」みたいな。で、一番遠い図を見た瞬間に「あっ、見たことかある!」と思って押して正解できたので、すごくうれしかったですね。しかも、この時はそれまで、一斉早押しで全然押せていなかったので。
――ちなみに、答えは何だったのですか?
紀野 答えは「北九州市」で、映っていたのは北九州市にある「世界最長のブランコ」なんですよ。「世界最長のブランコ」って聞くと、座る部分がぶら下がっている紐が長いようなイメージがするじゃないですか? でも、このブランコはそうではなくて、横に長いんですよ。それを「いやあ、“長い”っていったら、普通こっちでしょ?」って思いながら覚えた記憶があったので。ちなみに、このブランコって上から見ると、実は円形になっているんですよ。それにたくさんのイスがぶら下がっているような感じなんです。で、この「実は円形」というのも印象的で覚えていましたね。
紀野 はい。ただ、最初はまさか自分に解答権が与えられたとは思っていなかったんですよ。押したあとで周りを見てから「あっ、自分が光っている!」と思って。しかもちゃんと正解できたので、「クイズで正解するとこんなに楽しいのか」と思って(笑)。もう家に帰ってからもずっとうれしくて、「この感覚は忘れないようにしたいなあ」と思いながら。
――じゃあ、謎解きだけでなく、早押しの魅力にも目覚めそう?
紀野 はい! これからは早押しでも活躍できるようになりたいですね。
――先ほど、少しお話に出ましたけど、将来の展望みたいなことについてもお聞かせください。今はバイオに関連した材料系の研究をされているとのことですけど、お仕事もそういうのを目指している感じですか?
紀野 いえ。とりあえず、今は研究を続けていこうと思っています。
――じゃあ、大学院を目指して?
紀野 そうですね。少なくとも院にはいきたいなと。たぶん博士課程まで研究を続けると思います。
――じゃあ、『東大王』が続く限り、紀野さんはしばらくレギュラーで……。
紀野 あはは(笑)。どうなんですかね?
――いずれは大先輩として、新しいメンバーを迎える立場になっているかもしれないですね(笑)。ちなみに、『東大王』という番組において、「こういう風になりたい」とか「こういう活躍したい」みたいなイメージはありますか?
紀野 そうですね……。ひらめきに関しては、水上さんには負けてしまうんですけど。でも「ひらめきの紀野紗良」っていうのはずっと保ちたいので、それを維持しつつ、どんどん知識を蓄えていきたいなと。特に世界遺産なんかの知識を蓄えていくことによって、なるべく隙がないような感じで戦えるようになりたいなぁと思います。
――あと、憧れの鈴木さんみたいに……。
紀野 なりたいですね! やっぱり「女性だから知識的に劣っている」みたいな固定観念というのを取っ払いたいんで。
――先ほど、「憧れの鈴木さんのように、音楽とかでも多才と思われたい」とおっしゃっていましたが、音楽もお好きなんですか?
紀野 一応、ピアノはやっていたんですよ。中学受験をきっかけにやめてしまったんですけれども。ただ、その後もバレエをやっていて音楽には触れていたので。なので、クラシックはけっこう好きです。
――じゃあ、実は音楽の問題はけっこう得意だったりするのですか?
紀野 うーん……。例えばピアノの指を見て答える問題とかで、最初の一音を見逃してしまうことがあって。以前、それで答えられなかった問題があって、「そういうところもちゃんと注意して見とかなきゃいけないな」と思ったんです。あの時は悔しかったですね。ちゃんと見ていたらわかったのに。
――そういう意味でも、鈴木さんはすごいと。
紀野 すごいですね。だって、音楽の問題を安定して正解するじゃないですか。一方で、私は安定してわかるということがあんまりないので……。なので最近は対策のため、You Tubeでピアノを弾いている映像の出だしの部分を、音を消して見たりしているんですよ。いつか、自分が見た曲が出たらいいなあと思っているんですけど(笑)。
――その対策が報われるといいですね!
【プロフィール】
紀野紗良(きのさら) 2000年、北海道生まれ。立命館慶祥高校卒。2018年に東京大学理科Ⅱ類に合格し、入学。東大クイズ研究会と謎解きサークル「AnotherVision」に所属している。趣味はバレー、スキー。