鈴木 淳之介 Junnosuke Suzuki
1994年生まれ。北海道札幌南高校、東京大学出身。現在はIT企業に勤務。高校時代に『第31回高校生クイズ』で準決勝に進出。大学4年の時に学生日本一決定戦『abc』と団体戦『EQIDEN』で優勝。その2週間後に『第2回Knock Out』をも制し、名実ともに「ジャパン最強」であることを証明した。
東大生クイズ王
水上 颯 Sou Mizukami
1995年生まれ。開成高校出身。現在は東京大学医学部に在籍。高校時代に『第32回高校生クイズ』で優勝。大学では『頭脳王』2連覇、『東大王2017』優勝、『クイズプレゼンバラエティーQさま!!』優勝と、各局のクイズ番組でその名を轟かせた。現在も『東大王』にレギュラー出演中。
知名度も過去の実績も一切問わない、真のクイズ王を決めるべく誕生した『Knock Out~競技クイズ日本一決定戦~』。9月9日の放送をもって、その第3回大会の全貌がいよいよ明らかとなる。史上最強の激戦となった今大会では、なんと前回王者の東京大学OB・鈴木淳之介と、『東大王』で活躍中の現役東大生・水上颯が1回戦で激突!! この試合は既に6月24日に開催されているが、実はその1週間前に、密かにこの2人による対談を収録していた。東大クイズ研究会が生んだ2大クイズ王は、お互いをどのように捉えているのだろうか?(2018年6月17日収録)
クイズサイボーグには
なりたくない(水上)
――鈴木君は『第3回Knock Out』の予選での水上君の戦いを見て、どう感じましたか?
鈴木 そうですねえ。『Knock Out』の予選を見る限りでは、僕の知らない問題を獲っていくこともあったりしたので、「油断はできないな」と思っています。とはいえ、指の速さではおそらく自分のほうが勝っていると思うので。なので、そのへんを上手く突いて戦えば勝てるんじゃないかな、と。
水上 ……舐められてるなあ(苦笑)。
――自分の中では、勝率は何パーセントぐらいと思っていますか?
鈴木 うーん……。まあ、ノーコメントで。言うとね、負けちゃう可能性があるんで。
――勝負というものをわかってますね(笑)。一方、水上君はどうですか?
水上 予選の時、なぜか淳太さんもペーパーを受けていたんですけど、意外と点数が低かったなと。
一同 (爆笑)
水上 とはいえ、30位までには入ってたんで、面目は保っていたと思いますけどね。
鈴木 まあ、あの時は既に本戦に出ることが決まってたので、真面目に解いてたわけではないんでね。花相撲だから(笑)。
水上 ここで言い訳されてもね~(笑)。
――ペーパーはさておき、水上君から見た最近の鈴木君というのはどんな感じでしょう?
水上 ……実は、少し前まで「最近の淳太さんは牙が抜けてるな」なんて思ってたんです。というのは、僕たちは最近、Periodというサークルで一緒にクイズをやっているんですけど、そこでの淳太さんは「正直、全盛期には及ばないな」という部分があって。全盛期の頃の、どんな問題でも獲っちゃうような怖さは「ちょっと抜けたかな」という気がしましたし、勝負所で勝ちきれないことも増えてますし……。なので、「ちょっと鈍ってきたのかなあ」なんて思ってたんです。
――なるほど、「鈴木淳之介、衰えたり」みたいな。
水上 ところが、この前、僕と淳太さん、あとは小林逸人君とか、けっこう強い人たち何人かでTQCの部室に行ってクイズやったんですけど……。いやあ、淳太さん、クソ強いっすね(苦笑)。
――実は全然衰えていなかったと。ちなみに、どういうところが「やっぱり強いな」と感じたのですか?
水上 問題の難易度がガタガタで、簡単な問題もあれば難しい問題もあるという時に、「簡単な問題」とか「自分が獲れるであろう問題」に対する反応速度が尋常ではないんですよ。どんな問題であっても確定ポイントで押してくるので、その後の問題文がほとんど聞こえない、みたいな。
――なるほど。
水上 だから、反応速度については「マジで勘弁してくれよ」っていう感じなんですけどね(苦笑)。
――ある意味、サイボーグ的な感じというか。
水上 そう、クイズサイボーグですね。……でも、ちょっと気持ち悪いですね。僕は「これは目指したくないな」と思います。僕が目指しているのは、「サイボーグクイズ王」ではなく「インペリアルクイズ王」ですから(笑)。
鈴木 ……馬鹿にしやがって(苦笑)。
――でも、『Knock Out』は独特な空間じゃないですか。その点でいうと、「タッグ・オブ・ウォー」を既に一度経験している鈴木君には、1回分のアドバンテージがあるのかもしれないですけど。
鈴木 まあ、前回は4問で終わっちゃったんで、アドバンテージは無いに等しいですね。
――なるほど。水上君はどうですか?
水上 実際のところ、『Knock Out』の問題はけっこう僕に向いていると思ってるんです。というのは、僕は難しい問題のほうがわりと得意というのがあって。ただ、「あの問題の中で僕だけが知ってて、淳太さんが知らない問題が出る可能性はけっこう低いのかな」とは思ってるんですよね。それ以上に「淳太さんだけが知ってて、僕が知らない問題が出る可能性もそんなないな」とも思ってるんですけど。で、そうなると、出題されるのが「お互いに知らない問題」か「お互いに知ってる問題」になっちゃうんで、「それはけっこうキツいなあ」と思っていて。というのは、お互いに知っている問題を同じポイントで押すとすると、大体ランプが点くのは淳太さんなんで。なので、そこは僕が頑張って踏ん張るか、淳太さんがやらかすのを……。まあ、なんというか、淳太さんは性格がいいんですが、残念ながら心が弱いところがあるので。
一同 (爆笑)
水上 なんか、メンタルが折れるとすぐ誤答するという悪い癖があるんで、そのへんを上手く突けばボコボコにできるかもしれないと思うんです(笑)。
――心理戦に持ち込めば圧倒できるかもしれないと。
水上 ただ、僕たちの対戦って、1回戦じゃないですか。実が僕、身体が温まってない状態でクイズするの、ホントに苦手なんですよね(苦笑)。基本的にすごいスロースターターなんで、いつも3ラウンドぐらいから調子が出てくるんですけど。
――ということは、水上君にとっては初戦が最大の難関だと。
水上 そうですね。逆にいうと、「初戦をなんとかして切り抜けられたら、優勝まで行けるんじゃないかな」なんて思っている節がありますね。……淳太さん、僕さえ倒せば優勝できますよ!
鈴木 どうかなあ(苦笑)。
水上 まあ、淳太さんは僕が倒すんで、あんまり関係ない話でしたね。すいません(笑)。
人の心があったら
クイズには勝てない(鈴木)
――ちなみに、対戦相手がこの二人になったことについてはどう思いましたか? あの時は箱の中にあるピンポン玉を引いて、そこに書かれていた番号の順にトーナメントのどこに入るのかを選んで行ったわけですけど……。
鈴木 僕はまず5番を引いたんですけど、その時点で「タッグ・オブ・ウォー」を選ぼうと思っていて。で、早い段階で「タッグ・オブ・ウォー」の1組目が「神野-徳久」と決まったじゃないですか。その時に「残りの人はアップダウンに行きそうだな」ということで、「対戦相手は水上になる可能性が高いな」と。
――その時点で予感していたと。
鈴木 はい。
――水上君はどうでしたか?
水上 玉を引いたら8番だったじゃないですか。その時点で「あっ、これは淳太さんに当たったな」って思いましたね(笑)。
一同 (爆笑)
水上 「嫌だなあ」と思ったりしたんですけど、まあクジの結果ですし仕方ないですね。……ただね、正直なところ最もやりたくない相手ではあったんですよね。「淳太さんと比べたら、徳久(倫康)さんのほうが全然マシ」ってぐらい、やりたくなかったですね。やっぱり相手としては一番苦手なタイプだったので。
――なるほど。鈴木君はどうでしたか? 予選を勝ち抜けた7人の中で、相手が水上君になったというのは。
鈴木 そうですね。水上がさっき言っていたように、お互い得意・苦手の傾向がけっこう近いですし、その意味でやり易い相手ではあります。ただ、自分の得意な問題を獲られてしまうと、相手に勝機を与えることにもなりかねないな、という……。
水上 そして淳太さんのメンタルが崩壊して、誤答して死んでしまうのが見えてきます(笑)。
鈴木 まあ、そうならないように気をつけたいとは思うんですけれども。
――プレッシャーをかけるようなことを言いますけど、今回はお客さんの入りがすごいんです。
鈴木 ……らしいですね。
水上 ファンは僕のほうが多いのに、勝ってしまっていいんですか?
――早くも心理戦が(笑)。
鈴木 いやあ(苦笑)。……でも水上のファンには、彼が負けて落胆する姿を見せたいですね、なんて。
――「水上ファンの前で、無様なさまを見せつけてやる!」と。
鈴木 まあ、水上ファン全員の肝を冷やさせてやりますよ!
――水上君はどうですか? 鈴木君からのこの挑発を受けて、何か言いたいことは……。
水上 まあ、こんな無名のよくわからない人に、テレビスターの僕が負けるわけにいかないので(笑)……というのは冗談ですけど。ただ、勝つには最初に下剤とか準備しておかないと難しいかなって。
一同 (爆笑)
――控室で、弁当や飲み物にこっそり……。
水上 そう、控室で(笑)。
――そういう秘策はさておき(笑)、予選が終わってから今までの間で、何か対策みたいなことをしていたら、言える範囲で構わないので教えてほしいのですが。
水上 じゃあ、明日の話をしましょう。
鈴木 そうね(笑)。実は明日のPeriodで、『Knock Out』の対策企画を打つんですよ。
――それは鈴木君が企画で?
鈴木 はい。僕が『Knock Out』に出そうな問題を作って、それをみんなに出して、っていうことを。
水上 ルールも『Knock Out』に似せてるんですよね?
鈴木 そうですね。
水上 なんか、予選からずっとやるそうですけど。
鈴木 そう、予選の25問×10セットの早押しから。で、「難問ボードクイズ」をやって……。
水上 え、全部そのままやるの? 明日行きたくなくなってきた(苦笑)。
鈴木 来いよ、そこは!
水上 しょうがない、行きます(笑)。
――でも、そこに水上君を呼ぶっていうのはフェアですね。
鈴木 まぁ、水上の今の実力を知る機会でもありますから。
――あー、なるほど。
鈴木 で、明日の対策企画の話に戻すと、予選をやったあとは、本戦のトーナメント形式もやるんですけど。ただ、本戦の形式がね……。
水上 まだ知らされないので。
鈴木 はい。まあ「アップダウンセブン」と「タッグ・オブ・ウォー」は前回と同じで、決勝の「10ポイントスタック」もそのままじゃないかなとは思うんですけど。ただ、準決勝の形式がね。引き続き「タイムレース」でやるのかどうか、ちょっとわかんないので。とりあえずは「タイムレース」をやる予定ですけれど。まあ、そんな感じで『Knock Out』対策として、『Knock Out』を模した企画をやるということで。
――とすると、どっちが残ったとしても事前にイメージトレーニングができているから、準決勝や決勝の対戦相手に対してはすごいアドバンテージがありますね。
水上 え、対戦相手? 僕、誰が出るかもう覚えてないです。
――えぇ~!?
水上 いや、ホントに。もし1回戦に勝ったら、次に誰と当たるか知らないことに、今、気付いたので(笑)。
鈴木 ホントに?
水上 うん。いやぁ、申し訳ない(苦笑)。
鈴木 「為季正幸-石川貞雄」の勝者だよ。
水上 うわぁ、最悪……。
――本当に把握してなかったんですね(笑)。
水上 正直、「1回戦で負ける可能性がけっこう高いな」って思ってたので、その先のことをあんまり把握してなかったというのはありますけどね。
――『SLUM DUNK』で山王工業に挑む湘北、みたいな……。
水上 それだと、最初に勝っても次でボロ負けしちゃうじゃないですか(苦笑)。
鈴木 でもまぁ実際の話、1回戦であんまり消耗しちゃうと、準決勝・決勝に影響が出かねないので。だから、最初はサクッと勝ちたいなと。
――現チャンピオンにお聞きしたいんですけど、『Knock Out』で勝つ秘訣ってなんですかね?
鈴木 もし秘訣があるなら、むしろ僕が知りたいです。なにしろ、まだ1回しか勝ってないんで。
――前回勝ったときは、「あれよ、あれよ」という感じだったのですか?
鈴木 そうですね。なんか考える間もなく、いつの間にか勝ってた、みたいな。まあ、「朝起きたら有名になってた」みたいな感じですよ。
水上 ……淳太さんのくせに生意気ですねぇ。
一同 (爆笑)
――あと、クイズはもちろんだけど、司会のやつい(いちろう)さん対策はどうですか?
鈴木 なんも考えてないですけど……。水上はなんか考えてる?
水上 僕は『東大王』でヒロミさんに遊ばれてるんで、けっこうああいうイジリは慣れているんで。……もしかするとアドバンテージですか、これは。
鈴木 まあ、確かに(笑)。
――『Knock Out』の場合、選手紹介とかのイジリの時、いかにメンタルを崩されないかっていうのがけっこう重要な要素ですね。
水上 なるほど。
鈴木 でもまぁ、そのイジリとクイズはまったく関係ないので(キッパリ)。
――鈴木君はそこ、強いですよね。前回、やついさんにイジられても、全然へっちゃらだったし。
鈴木 あの時はまあ、とりあえず目の前の相手を倒すことで精一杯でしたので。
水上 まあ、淳太さんは人の心がないですから(笑)。
鈴木 今日は散々言うなあ、おい(苦笑)。でもまあ、人の心があったらクイズ勝てませんよ。
――そこは認めちゃうんですね(笑)。
水上 最悪だなぁ(苦笑)。よーし、人間味ある勝ち方しよっ!
――最後にクイズファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。まずはチャレンジャーの水上君から。
水上 視聴者の皆さんが僕たちが普段やってるような早押しクイズを観る機会って、実はそんなにないと思うんですよ。例えば『東大王』や『Qさま!!』でやっているのは、どちらかというとバラエティっぽい、映像とかの早押しクイズなんで。なので『Knock Out』では、僕たちが今一線でやってる、進化した今のクイズ界の早押しクイズを是非、ご覧になってほしいですね。
――確かにこの難易度の早押しクイズがテレビで流れることって、この番組以外にはないですよね。
水上 そもそも、早押しクイズをやること自体がそんなにないですからね。まあ、「見ただけでは何をやってるのかわかりにくい」っていうのが、その理由のひとつだと思うんですけど。でも、クイズが好きな人なら早押しクイズも楽しめると思うんで、是非『Knock Out』も楽しんで下さい。あと、『東大王』も観て下さい(笑)。
――ありがとうございます。続いては、ディフェンディング・チャンピオンの鈴木君、お願いします。
鈴木 『Knock Out』という番組は、そのコンセプトにある通り「常人が理解できない問題を、常人が理解できない速度で押す」という、まあ今のクイズ界のすごい部分を存分に体現していると思うんですよ。なので、例えば「スピード感と知識量のどっちが上か」といったデュエルにもご注目いただけると幸いです。そして……。
水上 そして?
鈴木 そして今、スピード・知識量のすべてにおいて、ディフェンディング・チャンピオンである僕が一番優勝に近いと思うので、是非僕の勇姿をご覧ください。そして水上がボコボコにされる姿を見て、水上ファンの皆さんは肝を冷やして下さい!
一同 (爆笑)
水上 そんなこと言っていいんですか? 僕のファンの皆さんが、また淳太さんのこと嫌いになっちゃいますよ(笑)。
鈴木 大丈夫! だって、水上のファンが俺のことを好きになるわけないから(笑)。
――前哨戦の舌戦が盛り上がりましたね(笑)。本戦も熱い戦いを期待しています!
第3回Knock Out~競技クイズ日本一決定戦~
放送日:2018年9月9日(日)21時~
(再放送)9月24日(月・振)19:00
公式サイト:https://www.fami-geki.com/knockout/