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目指すは高校生トップ!白熱の『第4回ニュース・博識甲子園』レポート(前編)

8月29日、オンラインで『第4回ニュース・博識甲子園』の全国大会が開催された。同大会は、全国のクイズ部やクイズ好きの高校生にとってテレビ以外で目標となる公的な大会として、一般社団法人日本クイズ協会が2018年に創設したもの。コロナ禍の影響で昨年よりオンライン開催となり、今年は個人参加を含む149チーム452名の高校生が、3人1組でそれぞれの自宅からリモートで参加した。

7月23日に行われた第1次予選では「全国一斉ウェブ試験」をオンライン上で実施。合計得点が多い上位32校が第2次予選に進む(同じ高校で2次予選に進出できるのは上位1チームのみ)。第2次予選は8月3日~5日の3日間かけて行われた「ブロック別オンラインクイズ」。32校を4つのブロックに分け、Zoomを介して先鋒・副将・対象それぞれがクイズ挑戦。各ブロック上位2チーム、計8チームが全国大会に駒を進めた。

全国大会出場8校には、第1回の覇者である栄東高校や、第3回で準優勝した早稲田高校が同じメンバーでリベンジに挑むなど、強豪が勢揃い。大会を進行するのは、4年連続でMCを務めるクイズ作家の日高大介と、大会サポーターを務める声優の洲崎綾。生中継で動画が配信される中、いよいよ戦いの火蓋が切って落とされた。

関連記事:目指すは高校生トップ!白熱の『第4回ニュース・博識甲子園』レポート(後編)

1回戦第1試合:開成vs高田学苑

1回戦で行うのは「9ポイント先取ボードクイズ」。3人対3人の対決形式で、全員が同じボードクイズに解答。1人正解1ポイントで、先にチーム合計9ポイントに届いたチームの勝利だ。同時に9ポイントを超えた場合は、ポイント数の多いほうが勝ち。同点の場合はサドンデスとなる。

1人1ポイントなので、9ポイントを得るには最短で3問×3人正解があればいい。短期決戦の可能性もあるということは、不正解のプレッシャーも大きいということだ。チームの絆も試されるだろう。

1回戦第1試合は、東京都・開成高等学校 vs 三重県・高田学苑高等学校。1次予選を1位で突破した開成と、2次予選で灘高校を倒した高田学苑という、最初から強豪同士の対決に。開幕を飾る第1問は「中央銀行が、量的緩和策にもどつく金融資産の買い入れを徐々に減らしていくことを『先細り』の意味の英語で何と言うでしょう?」。この難問に、開成の大将で1年生の西頭くんのみが「テーパリング」で正解。洲崎綾からのエールに顔をほころばせる。

2問目は両チーム2人ずつ正解し3対2。ここで3問目「1964年の東京オリンピックに北ローデシアとして参加したものの、イギリスから独立したために閉会式では国名が変更になったアフリカの国はどこでしょう」では、開成の3人だけが「ザンビア」を正解し、6対2と一気に差を広げる。4問目では高田学苑も3人正解を出すが、ポイントは8対5。

開成が1人でも正解すれば勝利する状況で、5問目に出題されたのは「記憶に関する研究を行い、時間の経過によって覚えたことを忘れる割合を表した曲線に名前を残すドイツの心理学者は誰でしょう」。開成の3人と、高田学苑の2人が「エビングハウス」と書き、勝利を確信した西頭くんが「やったー!」と書き添えてしまう場面も。もちろん正解はエビングハウスで、開成が準決勝に駒を進めた。

関連記事:クイズに賭けた青春!『第1回ニュース・博識甲子園』レポート(PART4)

1回戦第2試合:東大寺学園vs早稲田

1回戦第2試合は、奈良県・東大寺学園高等学校 vs 東京都・早稲田高等学校。早稲田高校は昨年準優勝した3人が再び集結。MCの日高大介に「お久しぶりです」と挨拶し、今度こそ優勝とリベンジに燃える。だが1次予選の成績は東大寺が2位、早稲田が3位。油断は禁物だ。

1問目「今年2月に『ノマドランド』でアジア人女性で初めてアカデミー監督賞を受賞した、中国出身の監督は誰でしょう」では、「クロエ・ジャオ」を東大寺が1人、早稲田が2人正解したものの、その後しばらくは両チーム1人ずつの正解が続く展開。途中、同時刻に放送されていた『アタック25』の「高校生大会」で、東大寺の松崎くんが優勝したことを祝福する場面も挟みつつ、じわじわと進む戦況が続く。

6問目を終えてポイントは6対7。早稲田がリードしているが、東大寺も十分チャンスがある。7問目は「海面上の長さを測る時などに使われる単位『海里』。さて1海里は何m?」。正解は「1852m」で、両チームの大将は正解しているのだが……早稲田の桑原くんが自身が出した「1.852m」に「間違えました」と申し出た。ボード上ではカンマに見えなくもないのだが、桑原くんは「小数で覚えていた」という。MCの日高大介はこの正直な申告を受け止め、ポイントは7対8とした。

その後、8問目は東大寺3人、早稲田2人が正解し、ポイントは10対10のドロー。サドンデスとなった9問目「魚がエサを求めてよく動き回るため釣りを行うのに適している、日の出や日の入りの前後の時間帯のことを特に何と言うでしょう」で、正解の「まずめ」を答えたのは……東大寺2人、早稲田1人。接戦を東大寺が制した。

対戦後、東大寺の松崎くんは「桑原くんのフェアプレイ精神を見習いたい」と話す。黙っていればカンマとみなされ正解し、その時点で早稲田が勝利したかもしれない。勝利と正直が天秤にかけられた展開を、MCの日高大介は「(桑原くんにとって)今後のクイズ以外の人生においても、かけがえの瞬間になったかもしれない」と締めくくった。

関連記事:クイズに賭けた青春!『第1回ニュース・博識甲子園』レポート(PART1)

1回戦第3試合:名大附属 vs 県立旭丘

1回戦第3試合は愛知県・名古屋大学教育学部附属高等学校と、愛知県・県立旭丘高等学校の「愛知対決」。名大附属の写真だけ3人がポーズをキメていることについて、考案者の佐藤くんに聞くと「Perfumeを真似したつもりがおそ松さんになってしまった」「他のチームもポーズを決めていると思ったのに」「同級生からも批判を受けている」と嘆き、一同の笑いを誘う。第一次予選突破自体が初めてという名大附属に対し、県立旭丘は第1回からこの大会で上位進出をしている常連校。同郷対決に軍配が上がるのは果たしてどちらか。

1問目は「愛知県の尾張地方で盛んな、金属などの表面にガラス質の釉薬を焼き付けて模様を描く装飾工芸はなんでしょう」と、愛知対決にちなんだ愛知県問題(正解は「七宝焼き」)で、ポイントは2対1。その後も両チームバランス良く正解を重ね、3問目を終えてポイントは6対6の同点。どちらかが3人正解すれば勝ち抜けだ。

4問目「布地にミシン目状の印をつける小さな歯車が付いた裁縫道具を何と言うでしょう」では、出題と同時に手芸が得意な県立旭丘・加藤さんが微笑む。正解は「ルレット」。名大附属が2人、県立旭丘は加藤さんのみ正解。ポイントは8対7。まだわからない。

5問目は「今年東京オリンピック スケートボード女子ストリートで、日本人史上最年少で金メダルを獲得した選手は誰でしょう」という時事問題。「西矢椛」を正解したのは……名大附属2人、旭丘2人。ポイント10対9となり、名大附属が勝利! 「始まる前にちょうどスケートボードの話をしていたんです」(松本さん)というラッキーも味方した。惜しいところまで迫った県立旭丘の大将・長船くんは、「同じ愛知県としてがんばってほしいです」と相手にエールを送る。

関連記事:栄東高等学校が初優勝!『第16回エコノミクス甲子園』全国大会レポート

1回戦第4試合:栄東 vs 県立安積

1回戦最後となる第4試合は、埼玉県・栄東高校と福島県・県立安積高校の対決。「洲崎綾さんがサポーターと知り、絶対に本戦に出たかった」という栄東の大将・稲葉くんは、「琉晟がんばれよ!」と下の名前を呼ばれて笑顔でガッツポーズ。対する県立安積は3年生2人と1年生1人のチーム。「この前の『東大王クイズ甲子園2021』で福島高校が栄東に負けたので」と、故郷を代表してリベンジを狙う。

1問目は「いずれも宮廷料理から発展し、一般に「世界三大料理」と呼ばれる3つの料理は、フランス料理、中華料理と何料理でしょう」という基本問題(正解は「トルコ料理」)。これは両チームともしっかり3人正解して3対3。その後は、2問目・3問目と栄東が単独正解を決め、栄東が5対3までリードを拡げる。

しかし、チームの力を合わせれば逆転可能なのがこのルールの怖いところ。今度は4問目・5問目ともに栄東の稲葉くんだけ連続不正解になってしまい、ポイント9対9でサドンデスに突入する展開に。6問目は全員正解でドロー。運命を分けたのは7問目「和室で襖や障子の下にある横木を『敷居』というのに対し、上にある横木をなんという?」

解答をオープンすると、ほとんどが「鴨居」を出すなか、県立安積の1年生・植田くんだけが「欄間」と書いている。正解は……「鴨居」。ポイント15対14で栄東が逃げ切った。県立安積の3年生、大和田くんは「植田くんにはこの経験を活かして来年頑張ってもらいたい」と励まし、三瓶くんは「強豪校と戦えて悔いはありません。僕たちも分も栄東のみなさんには頑張ってほしい」と話す。『東大王』と『ニュース・博識甲子園』で福島を2度破った栄東が、準決勝に進む。

1回戦の4試合が全て終了し、勝者となったのは開成、東大寺学園、名大付属、栄東の4校。いずれも2次予選をブロック1位で通過した猛者ばかり。準決勝で2校が残り、決勝で優勝校が決まります。

(後編へ続く)

「ニュース・博識甲子園」公式サイト
https://quiz.or.jp/taikai/koushien/

【ライタープロフィール】井上マサキ
路線図マニアでテレビっ子のライター。『99人の壁』でグランドスラム達成(ジャンル「路線図」)。著書に『たのしい路線図』。宮城県出身。二児の父。
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