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INTERVIEW

『ナナマル サンバツ』完結記念特別対談 杉基イクラ×伊沢拓司インタビュー(PART1)

杉基 あの時は伊沢君に声をかけたかどうかは覚えてないんですけど、参加している高校生の何人かに声をかけて。「誰が強いの?」とか聞いたりとかすると、やっぱり伊沢君の名前が出てくるんですよ。で、ちょうど『高校生クイズ』のオンエアの直前でしたよね?
伊沢 そうですね。ちょうど。
杉基 なので「来月放送される『高校生クイズ』に出てますよ」と聞いて。
――『高校生クイズ』を2連覇する、1回目のオンエアの前だったんですね。
伊沢 当時はようやく開成が強くなった時期で。その『高校生オープン』では、ペーパーの上位6人全員が開成だったんですよね。
――まさにこれからテレビで快進撃を続けることになる伊沢君の、その直前に杉基先が伊沢君を「発見」した瞬間だったわけですね。
杉基 そうですね。あの時の『高校生クイズ(第30回)』は、決勝が開成と浦和で……。準決勝が旭川東と船橋でしたよね。
伊沢 はい、そうですね。それこそ、クイズなでしこもベスト4にいましたね。
杉基 そう、船橋の皆川(結菜)さん!
伊沢 決勝の開成VS浦和もめちゃくちゃいいカードになったし。開成はその時、初優勝を狙っていたタイミングだったので、僕にとってもあの1年はすごくドラマティックな年でした。
――いま話を聞いてるだけでも『ナナサン』の「SQUARE」の雛形がありますよね。
杉基 そうですね。ちょうどその直前に例会で観てきた子たちテレビで出るというだけで興奮するんです。なんか知り合いの子になったような気持ちで(笑)。だから、すごい面白くなっちゃって、そのあと取材に行くのが楽しかったですね。こういう取材モノって一、わりと1~2回行ったら「もうだいたい把握したかなあ」って行かなかったりするんですけど。
――なるほど。
杉基 でも、最初に『ナナサン』を描いた時に「私がやらなきゃないけないな」と思ったことが「プレイヤーたちと同じぐらい熱量を持たきゃ描けない」だったんですよ。
伊沢 それがありがたかったですねえ。
杉基 実は一話を描いた時に、編集長か誰かに「これでもいいんだけど、なんか熱量足りない」みたいなことを言われたんですよ(と担当編集を見る)。
担当編集・中澤 はい。教科書的にきちんと基本を押さえているんですけど、その裏のキャラスターのモチベーションみたいなのがまだ足りないという指摘だったと思います。
杉基 「内容はいい」とは言われたものの、「そんなこと言われたら、もうちょっとちゃんと描こう」と思って(笑)。それまでも長戸(勇人)さんの本(『クイズは創造力』)を読んだりとか、テレビクイズの本とかも当時のものから昔のものまで集めたりとかして、技術的なこととか知識的なことは、頭でっかちに理解していたんですけど。でも、やっぱり気持ち的に「自分も入り込んだほうがいいな」と思って、それで開成高校や浦和のクイ研にも行かせてもらって。

伊沢 ホントに来ていただきまして、部員も大変良くしていただきました。
杉基 で、クイズやってる子たちの生の声をアフターでご飯食べながら聞いたりとか。「仲良くなって、ちゃんと自分もそこに入りたい」っていう感じでしたね。それで、高校生たちの生の声を反映して、少しは描けるようになってきたかなあ、という。
――なるほど! 作品を作る上で重要だったのはクイズにかける高校生たちのモチベーションの部分だったんですね。
杉基 そうですね。どこの馬の骨かもわからない作家がお邪魔して(笑)。
伊沢 すごくたくさん取材していただいたんですけど、最初は「えっ、漫画!?」って。だから、どうしたらいいのかわからないんですよね。実はその頃は、クイズは一番盛り下がっている時期で。先生が取材に来てくださった2009年って、『高校生クイズ』があの『知力の甲子園』になった翌年なんですけど、まだ影響が及び始めていなかったのでクイズ人口はホントに少ない時期で。『高校生オープン』の参加者が70人ぐらいだったんですよね。今は500~600とかいるんですけど。当時の印象としては、「みんなこっち(クイズの世界)なんて見てないよね」という。高校生とか、それこそ上の世代もそれが当たり前のように感じてたんじゃないかな。
――ちょうど世の中的には『ヘキサゴン』や『Qさま!!』といった、タレントがクイズをやる番組が盛り上がっていて、クイズ好きの一般人にはスポットが当たらない時代が長く続いていましたからね。
伊沢 はい。だから、本当に「我々のことなんか誰も見てないんだ」っていうけっこう卑屈なマインドが少なくとも僕の中にはあって。そういうマインドの中にいると「我々のやっていることは理解されないんだ」って思い込んできちゃうんですよ。その中で先生が入ってきてくださって、すごくたくさん取材をしていただいたりとか。それこそこういう話も聞いていただいて、そこで我々はちょっと肯定感を得たんですよね!
杉基 そうですか(笑)。
――それ、すごくいい話ですね!

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