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INTERVIEW

前代未聞のクイズ番組『99人の壁』はこうして生まれた!千葉悠矢×山本太蔵インタビュー(後編)

子供が大人をブロックし、俳優・佐藤二朗をも翻弄する。
いったい誰が、激戦区の土曜日19時台でそんなクイズ番組が放送されるようになるなど想像できただろうか。
生み出したのは、入社2年目のAD千葉と、クイズ初挑戦の作家・山本。
『99人の壁』は、そんなクイズ番組のセオリーを知らないADと作家の二人三脚ともいうべき番組だった――。
(2019年6月26日収録 聞き手:大門弘樹 撮影:神保達也)

プロフィール
千葉悠矢(ちばゆうや) 1993年、神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、2016年にフジテレビジョン入社。『超ハマる!爆笑キャラパレード』『FUJIYAMA FIGHT CLUB』『RIZIN』『久保みねヒャダこじらせナイト』『ネタパレ』でADを担当。2017年に『白昼夢』でディレクターデビュー。『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を企画・演出。

山本太蔵(やまもとたいぞう) 1980年、岩手県生まれ。2001年NSC東京・構成作家コースを卒業後、劇場『ルミネtheよしもと』で作家見習い経て、2006年にTBS『10カラット』で放送作家デビュー。『いきなり!黄金伝説。』『日曜×芸人』などで構成を担当。現在『超逆境クイズバトル!!99人の壁』『BACK TO SCHOOL!』の構成を担当。

想定外だった!
おぎやはぎのグランドスラム

――『99人の壁』はタレントさんの挑戦者も多いですよね。この人選も、また絶妙というか……。普段あまりクイズ番組の解答者にならない方だったり。
山本 あぁ、確かに(笑)。
千葉 そういう意味では、スペシャルワンマッチは「クイズの強さ」とかよりは、扉がバーンって開いた時の登場感重視なところがあるので登場した時に「この人、なんのジャンルなんだろう?」とか「すごい人が来たぞ!」みたいな感じになる人がいいな、っていう。

――なるほど。
千葉 あと、壁役で出るタレントさんに関しては、クイズは全く強くなくても好きなものが一個あればいいので、「確かこの人、これ詳しいよな」みたいなのがある人にはお声かけさせていただいて。
山本 芸人さんとかタレントさんって、自分の仕事のために詳しくなったことがひとつふたつは絶対あるじゃないですか。
千葉 そういうの、ホントに詳しいですものね。
山本 うん。だってアルコ&ピースの酒井(健太)さんなんか、(02年の)ワールドカップで100万円獲ったしね。
千葉 そうですね。

――そういえば、タレントさんが100万円獲る率がけっこう高いんですよね。
千葉 そうなんですよね。あの方たちは、やっぱりすごいですね。
山本 視聴者の皆さんは「えーっ?」とか「うそー!」って思うかもしれないですけど、ちゃんと仕事にしてたりするんで。だから、ホントに知識あるんですよ。
千葉 あと、もうひとつアドバンテージがあるのは、タレントさんはカメラの前でも緊張をしないというか。
山本 あっ、そうか!
千葉 見ていて「テレビに出慣れているから、プレッシャーに負けずに勝負に行けるんだな」って思うんですよね。

――あとタレントの方って、やっぱり何か持ってますよね。
千葉 そうですね。
山本 特にToshlさんの持ってる感といったら(笑)。
千葉 すごかったもんですねえ。
山本 タレントさんはやっぱ落ち着いてるんですよ。ちっちゃいお子さんとか女の子だと、そこがけっこうかわいそうな時もあるんですよね。
千葉 緊張しちゃってね。
山本 そう。緊張のあまり、真っ青になっているのが見ててわかるんで。それと比べると、タレントさんはハートが強い! その違いはあるかもしれない。

――森昌子さんもすごかったですものね。
千葉 少ししか問題を聞いていないのに、ガンとボタン押しに行くから「えっ、すごくね!」みたいな感じでしたもんね。見ていて「普通に早押ししてくるじゃん!」と思ったんですけど(笑)。
山本 ねぇ(笑)。あれ、なんなんだろうね?
千葉 まぁ、森さんもガチなんで(笑)。見ていて「勝負を賭けてんな」みたいな感じはめっちゃありましたね。……あの時、森さんとしては最後まで問題を聞いて「あー、負けちゃった」みたいな感じでお茶を濁す、みたいな手もあったと思うんですよ。

Ⓒフジテレビ

――あぁ、なるほど。
千葉 だけど、あそこで迷わず行くんで。
山本 すごいよねぇ。
千葉 「そこはガチだな」と思って。周りのスタッフも「やべぇ!」みたいな感じになりましたし(笑)。
山本 ……俺はタレントさんが獲っているのを見ると「チクショー!」ってなることもありますけど(苦笑)。
千葉 あはは(笑)。それで言うと矢作さんが100万獲ったのは想定外の展開でした。
山本 あぁ、あれね。
千葉 番組サイドとしては「世界で一番小木(博明)に詳しい」と公言している矢作(兼)さんに、壁が勝つところが見たかったんですが、矢作さんに全く歯が立たなかったという(笑)最後に小木さんが言った「99人、誰も俺に興味ないんだな」っていうのがめっちゃ面白かったです。
一同 (爆笑)
千葉 「そんなことはない」と思うんですけど(笑)。

Ⓒフジテレビ

――あのあと、ラジオで「楽勝だった」みたいなことを言われましたよね(笑)。
千葉 そうです。「あの番組、カモにしようぜ!」って(苦笑)。
山本 「月イチで出るか?」って言ってたね(笑)。
千葉 もしよければお二人にはもう一度出ていただきたいです。やっぱりめちゃくちゃ盛り上げてくださったので。

――ちなみに、いま「矢作さんに100万円撮られたのは大誤算」というお話が出ましたが、スタッフサイドからすると、番組全体での100万円奪取率というのは順当なのでしょうか? それとも予想以上に獲られている感じですか?
山本 どうなの、それ?
千葉 えーとですね、今の僕のイメージでは「まぁそんなもんだろう」という感じですね。
山本 まぁ妥当か。
千葉 うん。出過ぎている感じもないし、出無さ過ぎている感じもないし……。ただ、ホントにガチンコでやっているので、もしかしたら今後は「5週連続で出ない」とかもありえるような気がして。
山本 うんうん。
千葉 実際、最初の特番の時は「1回は100万円を出したいな」と思ってたんですけど、出なかったじゃないですか。まぁ、2回目で2人獲ったんですけど……。で、レギュラー1発目の時も「番組に勢いをつけたいな」ってことで「誰かしら獲ってくれ」と思っていたんですけど、やっぱり出なくて。
山本 そこはガチならではというか……。
千葉 あれは誤算でしたね。しかも、レギュラー2回目でも出なかったんですよ。だから「あれ、全然出ねえじゃん!」と思って。
山本 そうそう(苦笑)。
千葉 で、3回目でようやく初めて出て、そこからちょくちょく出るようになったという感じで。
山本 いやぁ、でも初めて出た時はちょっと安心したよね。実は俺、「やべぇな」と思ったんだよ。
千葉 「100万円獲得者が一生出ないんじゃねえか……」みたいな(笑)。
山本 でも、今でも出ないのが続く時あるもんね。
千葉 そう。「出ない」「出ない」が続いて、その後で「出る」「出る」「出る」って続いたり。ガチな以上、それは読めないんで。

小学校で『99人の壁』ごっこが
流行っている!?

――レギュラー化され半年が過ぎましたが、特番時代と比べて反響みたいなものはいかがですか?
千葉 やっぱりレギュラーになってから、メディアで取り上げてもらう機会が増えたなぁ、というのは感じますね。ありがたいことに『新春テレビ放談』(NHK)でカンニング竹山さんが「注目の番組」に挙げてくださったり、おぎやはきさんとか伊集院光さんがラジオで話してくださったり。
山本 ねえ。
千葉 最初は「誰も知らない番組が始まって、誰も知らないまま放送されている」みたいな感じだったのが、ちょっとは話題にしてもらえるようになったということで、素直に「うれしいなぁ」と思いますね。
山本 そうねぇ。認知度は確かに上がっている。
千葉 最初の頃は「ホントに好きな人しか観ない番組なんじゃないか?」とか思ってたんですけど。でも最近は「うちの子が観てる」とか「うちの子が出たがっている」っていう話をよく聞くようになって。
山本 そう! まさにうちの妹も「息子が観てる」って言ってて。あれはうれしかったなあ。
千葉 特番時代はそんなことなかったですもんね。「知ってる人は知ってる」「テレビ好きな人は知ってる」とは言われてましたけど……。
山本 そうそう。
千葉 でも、今は普通の人から「子供が観ててさぁ」とか「うちの母親と一緒に答えててさ」みたいなことを聞くようになった。そこは「レギュラーになって良かったな」と思うところですね。

――話を聞いていると、小学校でけっこう話題になるみたいですね。
千葉 そうなんですよね。小学校の先生をやってる僕の同級生から「今、クラスで『99人の壁』ごっこが流行ってる。あれ、千葉君が演出したんだよね」みたいなLINEが来たことがあって。
山本 ほう!
千葉 「えっ、そんなこと起きてんの!?」って思ったんですよ。子供たちが学校で『99人の壁』ごっこをやっている、こんなうれしいことがあるなんて!
山本 それはすごいね。でも、どういう風にやってんの?
千葉 ……いや、そこまではわかんないです(苦笑)。多分、みんなでクイズを作り合って、「1人対10人」とかでやってるんじゃないですか?

ダブルスのオーディションに来る
親子や夫婦の関係性が面白い

――レギュラー化以降の新しい試みとしては、ダブルスの企画もありました。
千葉 あれは、太蔵さんがかねてから「2人1組って良くない?」みたいなことを言ってたんですよね。
山本 そうね。そもそもの話をすると、オーディションでお母さんがお子さんの付き添いで来たりするじゃないですか? すると、子供の影響でお母さんもすごく詳しくなっていたりすることがあるんですよ。たとえば「子供がポケモン好き」ってことで一緒にポケモンを見ていたら、「あっ、なんかいいな」と思って自分も覚えちゃったりとか。あと、子供が「お父さんがギター好きで、教えられているうちに僕も好きになって」とか……。そういうふうに、近い関係の間で好きなものがセットになったりするんですよね。
千葉 そうですね。
山本 オーディションでそういうのを見たのが「ダブルスやったらいいんじゃないか?」と思ったきっかけだったんですよ。で、「やりたい!」って言ったらすぐに「やろう!」ってなって。
千葉 で、それから人集めをバーッとやった、って感じですね。それで、やっているとなんかこう背景が見えていくというか……。
山本 関係性がね。
千葉 オーディションでも、なんかいいんですよね。40歳ぐらいのお父さんと10代ぐらいの女子高生の2人が来て、娘さんの方はなんかニコニコ話しているんですけど。でも娘と一緒に出れるということで、お父さんの方は気合が入っていたりとか。その感じがなんかね(笑)。
山本 「久々に娘と2人きりになったのでは?」っていうくらいの。
千葉 そうそう。「今日は特別な日だ」って感じがすごい見えてきて。
一同 (爆笑)
千葉 でも、「こういうの、なんかすごくいいなぁ」っていう(笑)。
山本 ねぇ(笑)。この番組きっかけでコミュニケーションを取ってくれてるんだな、っていう。
千葉 娘さん、思春期のはずなんだけど。
山本 絶対そうだよね?
千葉 ですね。あと、旦那さんがもうヤル気満々なのに、奥さんは無理やり引っ張って来られたから全然やる気がない、みたいな夫婦とかもすごい面白くて。
山本 あぁ、そういうのも面白いよね。
千葉 奥さんが「正直、そんなノッてないんですけどね」みたいな感じで若干怒っていたりとか……。
一同 (爆笑)
千葉 で、旦那さんも「いいじゃねえか!」と言い返したり(苦笑)。そういう2人の関係性が見えるとなお面白い(笑)。あと、面白いのは壁で出会った仲。それこそ叶と(石川)要だったりとか。

――あれ、すごいですよねえ!
千葉 潰しあったのがセットになったわけですものね。
山本 あとは「揚げ物」の男性と「フライドポテト」の女性が組んで出たりとか。
千葉 「人骨」と「救命救急」が一緒になって「人骨」で出てたりね。

――そういうのって、タッグマッチならではですよね。
山本 ホントそう。「これ、アリなのか?」みたいな。
千葉 「強くね?」みたいな。
山本 ねえ、面白いよねえ。
千葉 ダブルスには、そういう違う見え方があるんじゃないかなという気はしますね。

――今、再挑戦みたいな話がちょっと出たのでお伺いしたいのですが、やっぱり「一度敗れて去った出場者にも帰ってきて欲しい」みたいなのはあるんですよね?
千葉 そうですね。あります。
山本 それはもちろん。

――観ていて「あっ、またあの『沢田研二』の時の女の子がいる」とか思うとワクワクするんですよ。
千葉 「あ、帰ってきたな」みたいな感じで(笑)。

――はい。「いつかセンターに行って欲しいな」って応援しながら観れるので。
千葉 1回負けた人でも全然応募はできるので。ジャンルを変えてもよし、ちょっと絞ってもよしなので、是非リベンジしてください!

番組は生き物
魂を変えずに見せ方を変える

――今後「番組をこうしていきたい」みたいな意気込みとか、展望みたいなのはありますか?
千葉 実は最近、「ちょいちょいマイナーチェンジを重ねながら、少しずつ新しいことをやってみよう」というのをけっこう意識的にやってるんですよ。基本的には「軸はぶらさないようにしつつ、いろんなことを試そうかな」って思っていて。

――「新しい要素を試そう」と思う理由というのは?
千葉 「視聴者を飽きさせない」ということですかね。基本ルールの「大勢対1人」というのはもう変わらないのですけど、その中でいろいろとちょこちょこ変えていきつつ。まぁ、ダブルスなんかもその一例でしたけど。
山本 一応、今は3つぐらい準備してあるんですよ。対戦みたいなのとか……。まぁ、そんな大きくは変わらないんですけど。相変わらず数的優位ですし。
千葉 新しいクイズを入れてみたりとか、そういう「今日はまた新しいものが増えてるな」みたいなものは、いいアイデアがあったらやっていこうかなって思ってます。
山本 今はそれに向けて準備をしているという感じですね。

――でも、この番組って最初のルールに固執せず、「どんどん良くしていこう」みたいな感じで変えていっているじゃないですか? 
千葉 そうですね。

――例えば『アタック25』は完成されたルールがあって、それがほとんど変わってない点にすごさがあるのですけど。でも、『99人の壁』は完成していたと思えたルールでも、どんどん変えている。それもすごいなと思います。
千葉 そう言っていただけるとありがたいですね。
山本 その言葉はうれしいです。
千葉 僕、この番組で初めて演出をやってから、名だたる演出家の先輩方とご飯をご一緒させてもらう機会に恵まれて。で、そういう時にみなさんおっしゃるのが「番組は生き物だ」ってことなんです。
山本 「みんな」って誰? 3人ぐらい教えてよ。
千葉 あまり名前は言えないけど……(片岡)飛鳥さんだったり、王東順さんだったり、三宅(恵介)さんだったり……。
山本 それはすごい(笑)。
千葉 で、なんで先輩方が僕にそういうことを言ったかっていうと、たぶん「完成されたルールに縛られるな」ということを伝えたかったからだと思うんです。

――なるほど!
千葉 個人的には、実は昔は「なんにも変えずにずーっと続けていくんだ」みたいなことを思っていたこともあるんですけど。「セットは暗いままでいいんだ!」なんて言っていましたし……。
山本 実はそうなんだよねぇ。
千葉 でも先輩方は「そうじゃなくて、番組は生き物だから」って言うんですよね。「魂は変えちゃだめだけど、その魂を残しつつも見せ方を変えて視聴者に届ける。そういうのが何十年も続く番組だよ」という風に言われて、「あっ、そうかあ」と思って。だから、新しいクイズとか新しいルール……たとえばダブルスとか、昔だったら僕、絶対に反対してたんですよ。

――そうなんですか?
千葉 はい。おそらく「これ、もう『99人の壁』じゃないですよ」「だって『2人対98人』じゃないですか?」と言っていたと思うんですよ。でも、別に視聴者からしたら『99人の壁』ってタイトルはもうわかってて、「今日はたまたま2人対98人のダブルス戦だな」という感じで観るわけじゃないですか? そこまで99人にこだわっているのは俺だけだ、みたいな感じだったんですよね(笑)。
山本 そうだね。
千葉 だから、「番組は生き物で、常に変わっていくもんだ」って言われて、「確かに!」と思ってからは、変な固定観念を持たないことを心掛けている、っていう感じですかねぇ。

――ありがとうございます。山本さんはどうでしょう?
山本 『99人の壁』って、最初はあんなに暗い番組だったのに、今は19時の枠を任されているわけじゃないですか?
だからこそ、マスに向けた番組にしなきゃいけないというか……。僕はとしては「なんとか国民的なクイズ番組にしたいな」と思ってますね。
千葉 それでもまだまだ深いですよね。
山本 そう。まだコアな番組というか、「好きな人は観るけど……」というレベルにとどまっている。例えばSNSを検索させてもらうとすごいお褒めの言葉をいただいているんですけど、それって常に観てる番組のことをコメントする、すごくアンテナが高い方々なんで。そういう人以外……たとえば僕らの母親・父親や世代とかも観れる番組にすることってすごい難しいというか。「自分らが勝手に好きなもの作るより、そっちの世代に届くようなものを作る方が難しいな」というのはいつも思ってて。
千葉 ホントそうですね。
山本 「僕らが好きなもの」なんて、自分の中にあるものを全部グワーッと詰め込めば、たぶんすぐにできるんですよ。だけど、そういうものじゃなくて、ちゃんとした国民的番組にしなきゃいけないなって。作家としては、そう思ってやってかなきゃいけないなとは思ってますけど……。でも、どうしたらいいですかね?
一同 (爆笑)
山本 それがわかるなら教えて欲しいです(笑)。だって、毎日その話してるもんね。
千葉 そうですね。「99人の壁」を国民的番組にもしたいですけど、この番組をきっかけに一般の方でもスターが生まれてほしいとも思います!
――期待しています! 本日はありがとうございました!

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