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INTERVIEW

ウェブメディア「QuizKnock」の舞台裏に迫る!福良拳・河村拓哉・須貝駿貴インタビュー(前編)

東大王・伊沢拓司を編集長として創設されたウェブメディア「QuizKnock」。「学び」や「好奇心」をテーマにした数々のコンテンツが生み出され、いまや大人気YouTubeチャンネルとしても快進撃を続けている。その成功の鍵を握る3人のメンバーに、「QuizKnock」の足跡を振り返ってもらった。(2019年5月29日収録 聞き手:大門弘樹 撮影:神保達也)

福良拳 徳島県生まれ。東京工業大学出身。YouTubeチャンネルの発案者で動画プロデューサー。

河村拓哉 栃木県生まれ。東京大学理学部在籍。設立時から支えるライターであり、動画企画者。

須貝駿貴 京都府生まれ。東京大学教養学部卒、大学院総合文化研究科在籍。実験系動画の企画などを担当。

福良が提案したYouTubeが
QuizKnockの運命を変えた

――まずは皆さんがQuizKnockに参加することになった経緯からお伺いします。河村さんは、設立時から関わっていますよね?
河村 はい。2016年に伊沢(拓司)から「こういうことやりたいから、記事を書いてくれませんか?」というLINEが来たんですよ。YouTubeを始めるよりも前の、ウェブメディアの立ち上げの時ですね。その時点では、いきなり会社を立ち上げて……みたいにスケールの大きい話ではなくて、アルバイトの延長みたいな感じで関わってくれればいいということだったので、「いいよ」と返事をしたら、「立ち上げの日までに、記事を(3人で)30本書いてください」って。
一同 (爆笑)


――いきなり「記事を30本書いてくれ」って、また随分なムチャ振りですね(笑)。
河村 当時はウェブしかなかったので、そこに全力を投下する方針だったんですよ。なので「サイトがオープンした時に記事のストックがないと話にならない」「1日に3本記事を更新していきたい」という話でした。伊沢と僕と川上(拓朗)の3人で全力で記事を書いて、相互チェックをして、1日に3本アップしていきました。その頃に偶然にも『東大王』の最初の特番が放送されたので、そのタイミングで『1.5回東大王』という狙った記事を出したりとかもしました。その結果、アクセス数は伸びたんですけど、ちょっと各メンバーの作業時間がえげつなかったので「これじゃ持たないよね」って話になって……。

――3人で回すのはメチャクチャ大変そうですね。
河村 ちょっとしんどすぎて、この頃のことはあんまり記憶がないですね(笑)。

――その後、ライターさんが増えていった経緯を教えていただけますか?
河村 更新作業をしているウェブエンジニアの方にもお手伝いを頼んだりして、記事のライターを徐々に増やしてはいたんです。ただ、いざ「ライターを増やそう」という時に、誰を連れてくるのかの選択が難しかったですね。伊沢はかなりクオリティにこだわる男なので。

――なるほど。
河村 当時はまだライターを育成するノウハウもなかったので、「はい、じゃあ書いて」と任せられる人間しか連れてこられなかったんです。だからといって、丁寧に面接をやっていく余裕もなかった。いきなりこんな大変なところに呼んだときにその人にかかる負担のことも考えると、すぐに執筆を任せられる人はなかなかいませんでした。そこまで考えると「下手に人数を増やすよりは、今いる人で頑張ったほうがいいんじゃないか」みたいになったんです。ただ、そのあとで僕が崩れてしまいまして。

――え、そんなことがあったのですか?
河村 はい。それで「あっ、このままじゃちょっと無理だ」という認識になったんです。「福良を連れてこよう」という話になったのがたしかその頃だったと思います。
福良 16年の12 月ぐらいでしたね。「このやり方では、さすがに回らないだろう」という話になっていました。

――福良さんが加入するタイミングで、メンバーが一気に増えた感じですか?
福良 同時かどうかは覚えてないですけど、たしか僕が入った段階で、全員合わせて14人ぐらいいたと思います。


――その時点で、けっこう大所帯になってはいたのですね。
河村 ただ、QuizKnockに寄稿するライターという範囲で活動してもらっている人が大半でした。組織の運営に直接携わる人はまだ少なかったですね。

――なるほど。で、そのメンバーたちの中心にいたのが河村さんという感じですか?
河村 はい。最初の頃は、僕が全部やっていました。ひたすらウェブの記事を書いて、人が書いた記事を直す編集作業もやっていました。みんなと連絡を取って連携しながら、ウェブを運営していましたね。

――一方の福良さんは、最初はライターとして参加したのですか?
福良 最初はライターとして関わることになっていたんですが、同時に伊沢から「もし良かったら、編集部の中心メンバーになってほしいと思っているんですが、どうですか?」と言われました。

――福良さんというとYouTubeのイメージが大きいですけど、その時は「ウェブの編集部の中心になってほしい」と打診されたんですね?
福良 はい。当時はまだYouTubeを始めていなかったので、自分でも記事を書きつつ、週1本だけ別の人の記事をチェックする、ということをやっていましたね。
――なるほど。それがある時、「YouTubeをやろう」という話が立ち上がったと。
福良 編集部では記事を編集する以外に、「QuizKnockを今後どういう風に進めていくか?」ということを相談する戦略会議もやっていたんです。2017年の2~3月ぐらいにその会議で「QuizKnockをもっと人々に認知してもらうためにはどうすればいいんだろう?」という話になったんですが、その中で「今はウェブとツイッターをやっているけれど、それ以外にも何か新しいメディアやチャンネルを増やしたらいいんじゃないか」という話になりました。その時に僕が「YouTubeはどうですか?」と提案したんです。

――その時、福良さんがYouTubeを提案した理由というのは?
福良 単純に、僕がめちゃくちゃYouTubeを観ていたからです(笑)。当時、すでにチャンネル登録者が100万人を超えるような影響力のあるユーチューバーがいて、そういう人を見て「ユーチューバーってすごいなあ」と思っていて。だから「YouTubeは今まさに流行りのプラットフォームだから、自分たちがやるのもアリなんじゃないか」と提案してみたんです。僕はYouTubeを本当によく観ていたので、「どういう動画が好かれている」とか「どういうキャラクターが好まれる」とかもなんとなくわかったんですよね。テレビでもクイズ番組ってずっと人気じゃないですか。だから「クイズ系ユーチューバーって、今はいないけど、誰かやったらウケるんじゃないかな」と思ったんです。

――ただ、福良さんのその提案を聞いた時、おそらく伊沢さんはキョトンとしていたと思うんですけど(笑)。
福良 そうですね(笑)。当時、伊沢はYouTubeのことをほとんど知らなかったので、リアクションとしては「えー?」みたいな感じでした。今はもうYouTube漬けですけど(笑)。

――今の姿からは全く想像できない(笑)。ほかの人のリアクションはどうでした?
福良 ほかの人にはあんまり言ってなかったかもしれない。当初考えていたのは「伊沢だけが出演して、僕が出す問題に答える」という形式だったので。「QuizKnockのチャンネル」というよりも「伊沢拓司のチャンネル」を作ろうかな、と思っていたんですよ。
――なるほど。
福良 ところが伊沢が「伊沢拓司個人ではなく、QuizKnockのチャンネルにしよう」って言い始めたので、「それで行こう」ってなったんです。
河村 僕は最初、「撮るから来て」っていきなり言われたんですよ。
福良 あっ、そうだっけ!
河村 「撮るから来て」「あっ、はい」って。
一同 (爆笑)
須貝 それって「第1回東大主」ですか?
河村 そう。実は僕、それ以前に伊沢と一緒にテレビの収録に呼ばれたことがあるんですよ。髭男爵のひぐち君に催眠をかけるやつ(フジテレビ『ザキヤマひとり』・17年4月10日放送分)なんですけど、それになぜか呼ばれたんです。

――それ、観ました! でも、なんで河村さんにオファーが?
河村 たぶん、ヘラヘラしているからじゃないですか(笑)。カメラの前でヘラヘラしゃべっていたら、「あっ、こいつでいいんじゃないの」ってなったのかな。

――そんな理由で(笑)。でも理由はともあれ、YouTube以前にテレビで顔出しする機会があったと。
福良 そう。そのあとに「東大主」って企画をやることになったわけですけど、「簡単な問題を真面目にやる企画なら、伊沢の対戦相手は誰がいいだろう?」って話になった時、「あ、河村が向いているんじゃないか」という結論になったんです。
河村 伊沢からも「あの企画だから河村さんに決まった」と言われた気がする。でも、最初の「東大主」の時は死にそうになったよね。当時は動画編集のノウハウもまったくなかったから大変だった。
福良 うん。「東大主」はめちゃくちゃ編集に時間がかかった。
河村 あれって、最初にアップした「伊沢拓司、YouTube始めました」から数えてまだ5本目だったからね。

――なるほど。でも、当初は『東大王』に出ている伊沢さんの個人チャンネル的なことを考えていたのに、方針が変わることによって河村さんのようなスターも生まれ、そして今の「QuizKnock編集部」という群になっていくわけじゃないですか。1人のクイズ王をきっかけに、多数のスターたちが生まれていくという流れは、クイズ史的にはすごくエポックメイキングだったと思うんですけど。
福良 確かにそうかもしれないですね。
須貝 そういえば、川上が初めて出たのはいつの動画だっけ?
福良 5月16日のやつですね。伊沢の誕生日のときに撮った動画です。
須貝 そうだ! 「伊沢に誕生日プレゼントをあげよう」みたいな企画だったね(【祝】伊沢拓司誕生日!【サプライズ】)。
河村 わざわざ誕生日企画に出てきて、何もしゃべらずに帰るっていう。
一同 (爆笑)
須貝 その後に、夏頃から人がたくさん出るようになったと思うんだけど。
福良 「限界しりとり」とかかな。
須貝 そうそう、そのシリーズ。あの頃に、高橋(昂)君とかも出たんだっけ?
福良 そうですね。あと、小林(逸人)も呼んでいるし。だから、みんな意外と早い時期に出ていたことになりますね。

――ちなみに、企画はどんな感じで決めているのですか?
福良 最初の頃は「クイズの企画を考えよう」と、ブレインストーミングをしてみたんですよ。「色当てクイズはどうか?」とか「イントロクイズは著作権があるからダメだ」とか、いろいろアイデアを出しあったんです。ただ、基本的には「伊沢は出題された問題を答えられるのか?」っていう企画ばかりでした。でも、それだけだとできることが限られてしまう。そもそも、1人だと早押しクイズすらできないですからね。だから、川上や河村を呼ぶようになって、「今回は2人でできる企画を撮ろう」「今回は3人で撮れる企画にしよう」といったふうに、人数に合わせた企画を考えるようになりました。

――なるほど。ちなみに、QuizKnockがブレイクするきっかけになったというか、いわゆる「跳ねた動画」って何かありますか?
福良 跳ねた動画……。どれだろうな。
河村 狙いに行ったのは1本目の「東大主」ですけどね。あれは「いきなりホームランを打ってやろう」と思って作った動画ですし。
福良 あぁ、確かに。
須貝 なんか他にもっと跳ねた動画とかなかったっけ?
福良 それが、初期は意外とそんなにないんですよ。ジワジワ伸びていった感じですね。

――じゃあ、QuizKnockのターニングポイントになった動画はないと?
河村 そういう動画がないのがウチらしいのかもしれません(苦笑)。ほかのユーチューバーさんだと、何かの動画が1000万再生とかして登録者数が跳ね上がることが多いですけど、うちは少しずつ増えていった感じですね。

――常にジワジワと上がっているけど、急上昇することはないと。
福良 なるほど。でも、あえて「これ、跳ねたなあ」っていうのをひとつ挙げるなら「四国がオーストラリアになっていたら気づかない説」ですかね。
須貝 あぁ、確かに。
福良 ただ、これをアップしたのは17年の10月なんですよ。だから、4月からの半年間は特に「これが!」っていうのはなく、ゆっくりゆっくりと行った感じですね。

“クイズを知らない”須貝が
視聴者との橋渡しに

――そしてこの後で、須貝さんがQuizKnockに加わります。須貝さんは東大のクイズ研究会に所属していたり、趣味としてクイズをしていたわけではないのですよね?
須貝 ないですね。

――クイズとは無縁の須貝さんが、いったいどういったきっかけでQuizKnockに関わることになったのでしょう?
須貝 まず、僕の友人に田村正資がいるんですよ。開成高校の時、伊沢と一緒に『高校生クイズ』で優勝した人なんですけど。

――その田村さんとは、どういう繋がりで友人に?
須貝 普通に大学に入ってから知り合いました。その田村から「後輩がユーチューバーをやってる」「お前も明らかにユーチューバーに向いているから、参加したほうがいい」とか言われたんですよ。その流れで「その後輩が飲み会をやるから、お前も行け」と言われたから行ったんですけど、そこに彼自身は来なかったんですよね。
一同 (爆笑)
須貝 ありえないでしょ!?(笑)。で、その飲み会に行ってみたら、伊沢や福良、川上がいたんですよ。たしか他にも何人か、新規のライターさんが集まっていたかな。だから、その飲み会にいた何人かと一緒にQuizKnockに入る、という感じでしたね。

――つまり、田村さんが須貝さんをQuizKnockに導いたと。
須貝 はい。加えて言うなら、田村は「伊沢たちがやっている活動は応援している」「ただ、YouTubeを観るに、もうちょっと根っから明るいヤツが入ったほうがいいと思う」と言ってましたね。
一同 (爆笑)
須貝 今はそうでもないと思いますけど、初期のクイズ動画とかを見ると、みんなどうしてもボソボソしてるんですよ。ちょっとおとなしい感じのYouTubeだったので、田村から「お前が行くしかない」と勧められたってことですね。
福良 須貝さんが入ったのって、YouTubeを始めて半年以上経ってからですよね?
須貝 うん。「四国・オーストラリア」動画が出たあとだったと思う。11月ぐらいに初めて収録に行ったんじゃないかな。

――それは、例の飲み会からどれくらい経っていたのですか?
須貝 たしか一週間後ぐらい。……すごいスピードだったな(苦笑)。

――ちなみに、QuizKnockに関わる以前、須貝さんはクイズの世界をどんな感じでご覧になってたのでしょう?
須貝 正直、クイズの世界を意識して見ていたということはほとんどなかったですね。ただ、僕が高校生とか浪人の時に、田村正資がスーパースターになった『高校生クイズ』は観てたんですよ。「イケメンが頑張っているな」と思って観ていました。そうしたら、大学でその田村と知り合ったんですね。

――大学で「あっ、テレビで観た人だ!」っていうのはすぐにわかりましたか?
須貝 それはもちろん。だからといって、テレビを観る時に「クイズ番組が好きだからクイズ番組を観よう」というわけではないんですよね。チャンネルをピッピッピッと回しているうちに「あっ、今日『ヘキサゴン』の日か」「今日は『Qさま!!』の日か」くらいの意識ですね。観ている時も「あっ、今のは俺のほうが早くわかったな」みたいな。普通にテレビを観ているだけですね。

――むしろ、アニメのほうがお好きなんですよね。
須貝 あっ、そうです! アニメを観るほうが忙しいというか、「クイズバラエティを観る時間があるなら録画したアニメ観よう」ぐらいの感じでした(笑)。だから、クイズの世界がどんなものかは何も知らなくて。たぶんなんですけど、僕がQuizKnockに参加した頃から、テレビで異常な早押しが流行り始めたと思うんですよ。伊沢とかがよく解説している「普通の人はわかんないけど、クイズをやっている人なら絶対そこで押せる」というやつです。そういう世界があるというのは、自分がQuizKnockに入って初めて知った。クイズとの関わりはそんな感じですね。

――では、そういう超絶早押しの世界を初めて目にしたのは、テレビではなくQuizKnockの収録の場で?
須貝 そうですね。初めて目の当たりにしたのは、それこそ伊沢たちが動画を撮っているのを横で見た時でした。眺めていて「これ、絶対異常じゃん!」と思ったんですよ(笑)。だから僕、最初のうちは早押しクイズの企画はあんまり出てないんですよね。今もあまり出てませんけど。だって、勝てないから(苦笑)。「クイズ力のある・なし」も見分けられない。例えば「クイズ部とは、どういうことをする部活なのか?」というのも全然わからない。これが野球部だったら「素振りするじゃん」とか「キャッチボールするじゃん」、サッカー部だったら「走り込みするんだろうな」とかわかるんだけど。でも、クイズ部って言われたら「普段は何をしてるの?」「早押しボタンの連打とかしてるわけじゃないだろうし……」みたいな。
一同 (爆笑)
須貝 だから、クイズに関してはホントに「はじめまして」って感じですね。田村も「お前はクイズがどうとかじゃなくて、根がユーチューバーだから行け」と言っていました。でも、それをきっかけにして26歳ぐらいにして初めて異常な早押しの人たちと一緒にYouTubeをするようになった。それは僕の中でもエポックメイキングというか、新しい瞬間でしたね。

――須貝さんにそうアドバイスをした田村さんにも驚きますね。
須貝 僕はたぶん、普通の人とか他の東大生と比べて物知りではあるから、そういうところも良かったのかもしれないですね。オタクだから漫画とかで出てきた気になる単語を調べたり、趣味でウィキペディアを眺めていたりするので、人との会話についていけないことはまずなくって。だから、クイズバラエティだと必ず「ちょっと、何なんですか!」なんてツッコんでくる芸人さんとかいらっしゃると思うんですけど……。僕はそういう芸人さんよりは話についていけるけど、深すぎる知識や異常な早押しには「さすがにそんなのは知らないよ」とか「そのテクニックは知らないよ」というふうに、一般人の目線で入っていくことができる。そういう意味では「ちょうど良かったのかな」と思っています。

――つまり、視聴者との橋渡し役として適任だったわけですね。
須貝 そうですね。他の出演者と観てくれる人との、ちょうど中間ぐらいかもしれないですね。

――そういうポジションにしっかりハマった感じがしますよね。一方、元からクイズの世界にいたお二人は、外部からの来訪者である須貝さんのことをどう感じましたか?
福良 最初の頃から「面白い人だし、使いたいな」というのはありました。ただ、企画を考える側からすると「須貝さんを出すなら、早押しクイズじゃない企画にしなきゃいけないな」というのが、ちょっと束縛になるところもありましたね。

――あぁ、なるほど。
福良 そこで苦労することもあったんですよ。でも、途中で「視聴者との橋渡しになっているな」というか、「須貝さんを入れることによって、よりわかりやすい動画を提供できるようになるな」ということに気付いたんです。それ以降は「早押しクイズだけど、あえて須貝さんを入れる」ということもやるようになりました。例えば早押しクイズの動画で高度なパフォーマンスを見せたとしても、そこにいる全員がクイズ研究部だったら「まぁそうだよね」ってなっちゃうじゃないですか。そこに「え、今なんでわかったの?」と聞く人を入れよう、ということで、今はあえて須貝さんを入れることにしています。

――なるほど。ちなみになんですけど、今おっしゃっていた「須貝さんを入れることで、早押しのすごさが伝わりやすくなる」みたいなことって、YouTubeの動画を作っていく中で発見したテクニックのひとつだと思うのですけど、そういうのって他にもありますか?
福良 それはもう、もう大量にあるんじゃないですか(笑)。

――おぉ! それはぜひ聞きたいです。まぁ、秘伝みたいなものでしょうから、おおっぴらに明かせないかもしれないですけど……。
福良 明かせないものでもないですけど……。なかなか言語化するのが難しいですね。
河村 「これとこれ、どっちがいいだろう?」と聞かれたときに、揃って「こっち!」と選べるぐらいの認識でしかないんですよね。

――肌感覚を共有できているということですかね?
河村 そう。僕と福良は、そこをけっこう共有できていると思います。ただ最近、「みんなで企画を作ろう」となった時に、他のメンバーに「我々は今までこうしてきたよ」というのをどう伝えたらいいのか、という課題がありますね。
福良 まさに今、さっき言ったような秘伝をQuizKnockの他のメンバー内にも伝えなきゃいけないね、という話もしているんですけど、「それは難しいね」ってなっているところです。

――なるほど。企画の面に関しては、河村さん・福良さんの間では共有できているノウハウを、他のメンバーにどう伝えるかというのが現状の課題なんですね。一方で、動画編集のほうはどうでしょう? これは福良さんが単独でやっているのですか?
福良 出演メンバーの中だと、基本的には僕しかやらないです。ただ、いまは出演メンバー以外にもたくさんの人が動画に関わっています。

――これまで編集作業を続けてきた中で、いろいろと改良してきた面なんかもあったと思うのですけど……。
須貝 クイズ王が出てくる番組を見て思ったんですけど、「クイズ王の知識はすごい!」という演出が多いじゃないですか。異常な早押しとかを見せた後で、「この絵はこういう絵なんですよね」って解説が入って、「へえー」で終わる。つまり「クイズは、知識がある人が勝つ競技だ」という演出をしているんですよ。

――うんうん。
須貝 ところが僕、QuizKnockに来て初めて「早押しクイズっていうのは、意味のある技術を磨く競技なんだな」ということを知ったんですよ。それはここに来ないとわからなかったことですね。

――「意味のある技術を磨く競技」というのは?
須貝 「早押しクイズというのは、全てをわかっている人たち同士の中のバトルだから、そこで勝つためには知識以外に技術も必要だ」というか。プロ野球だと「この変化球は一球だけならどのバッターにも通じる」という必殺の技術とか、「あいつはあの変化球をいつ投げるか」みたいな読み合いがあるじゃないですか。「早押しクイズにもそういうのがあるんだな」ということに、ここに来て初めて気付けたんですよね。

――なるほど。
須貝 なので、動画の中でちょくちょくその話をするようにしてるんですよ。それによってみんながクイズバトルの存在を知ってくれれば、それ以降にクイズバトルの動画が出た時にもっと楽しめるんじゃないかな、と思って。「クイズ王への道」っていう企画の時、「僕が異常だと思ってた早押しは、実はちゃんとしたテクニックに基づいていたんだ」というのを知った、ということがあったので。だから早押しクイズの動画に出る時、そういう技術に気付いたら「あ、今のは……」と言うようにしてるんです。それによって、今後QuizKnockの動画を観てもらうときに、「クイズは知識以外の部分にも見どころ・楽しさがある」ということを理解してもらえたらいいなと思っています。さっき福良が言っていた「高度な早押しを見せる動画には、須貝がいたほうがいい」というのは、たぶんそういうことなんじゃないかな。
福良 その通りです。
須貝 そういう意味では、QuizKnockは競技クイズというスポーツを広める役割も担っているのかな、とも思います。
福良 確かに昔のクイズ番組だと、問題を出された後で「なんで知ってたの?」「○○で見たので知ってました」って感じだったじゃないですか。最近はそうじゃなくて「なんでここで押せたの?」「こういう風に考えて、これ以外ないと思いました」という感じになっている。QuizKnockでも、須貝さんはそういう傾向のことを言っていますよね。
須貝 うん。

――これは完全な私見なんですけど、地上波のクイズ番組ってどうしても「頭がいい」「知識がある」ってところで止まってしまいがちなんですよね。さっき須貝さんが言っていたような「実は知識があるのが最低限のラインで、その先にはテクニックを駆使した戦いがある」っていうのは、地上波の番組ではなかなか伝えられないというか……。たぶんそこを描けているのが漫画『ナナマルサンバツ』とQuizKnockの2つだけじゃないかな、と。
須貝 なるほど!

――だから、QuizKnockは「知らない人にクイズの文化の楽しさを伝える」ものの一翼を担っているわけで。それはすごいな、と思いましたね。
河村 クイズ文化を伝える動画を作るときは、もちろんそういう風に作ります。そうじゃない動画は、クイズ文化とは無関係に作っていますけど(笑)。例えばボードゲームのような動画のときは、意図的にそういう作り方をしないように気をつけていたりします。
福良 「面白い」にもいろんな種類があるから、「今回はこういう面白さでいこう」というふうに作り分けたりはしています。

――なるほど。
河村 あと、「クイズに見せかけてクイズじゃない」みたいな動画とか……。

――え、それはどういう企画ですか?
河村 以前、「無限倍速クイズ」という企画をやったんですよ。あれはなんだったんだろう。一種のオカルト?
福良 いや、オカルトじゃないし(笑)。まあ、少なくとも早押しクイズではないんですよ。で、一応は法則クイズなんだけど、動画の中で「これは法則クイズです」ということすら言われてない。

――クイズそのものをネタにした感じですかね(笑)。でも、最初の「東大主」もそんな感じでしたよね。クイズがわかっているからこそ、クイズそのものをパロディにできるというか、メタな視点から遊べるというか。その幅って大きいですね。
河村 そういう意味では、今は「ちゃんとクイズができるメンバーでいろんな工夫ができる」っていうのが重要かな、と思いますね。

――なるほど。
河村 須貝さんも、早押しクイズをしてもらうってなるとちょっと厳しいかもしれないですけど、論理を作ったりするのはめちゃくちゃ強いんですよ。フェルミ推定の時とかは、明らかに一番論理が通っているし、強いし。我々が早押しクイズをやって表に出しているのとは違うところに頭の良さ・能力値のピークがある人なんです。
福良 あはは(笑)。

――ちなみに、伊沢さんはそういう風にクイズをパロディにすることを最初に聞いた時、どんなリアクションをしてましたか? 彼はけっこう正統派クイズ王なイメージなので、「えっ、何それ?」みたいな……。
河村 いやいや、全然違います(キッパリ)。

――あれ、そうですか?
福良 全然、正統派じゃないです。むしろ、伊沢がぶっ壊しに来ることが多いので(苦笑)。

――へえー! じゃあ、ノリノリでやっちゃうタイプ?
福良 はい。伊沢は壊したがりですね。一番のクラッシャーです(笑)。
須貝 しょっちゅう進行の邪魔をしてくるもんね。「それ、やっても絶対カットじゃん!」ってわかるのに。
一同 (爆笑)
須貝 まぁ、やらずにはいられないんでしょう(苦笑)。

――じゃあ、『東大王』などの番組でついた「頭のいいクイズ王」みたいなパブリックイメージをぶち壊すというか、もともと伊沢さんが持ってたそういう素養をQuizKnockが引き出したという感じですかね?
福良 そうかもしれないですね。「伊沢って、テレビとYouTubeでは全然キャラが違う」と思っている人も多いと思います。だいたい、伊沢が持ってくる企画って「コスプレして早押しする」とかですよ! いくら僕でも、そこまでは壊さないのに。
一同 (爆笑)


後編では、ここ最近のコラボ展開などを徹底解剖します!

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