2016年3月20日、埼玉県和光市のホール「サンアゼリア」にて、基本問題による学生No１決定戦『abc the 14th』が開催された。北は北海道から南は九州まで、日本全国から会場に集まった学生たちの総人数は大会史上最多の668人にのぼり、その中からただ一人の頂点を決めるための、若き魂ぶつかり合う熱い激戦が繰り広げられた。

今年で14回目の開催を迎えた日本最大の学生クイズ大会『abc』は、クイズを愛する全国の学生が一同に会する、最高峰の「王座」決定戦だ。通常は毎年年度末に開催されるため「その年の総決算」と捉えるプレイヤーも少なくない。特に、参加レギュレーションの最後の年である大学４年生組は「ラストイヤー」と呼ばれ、毎年その意地を懸けた勝負が様々なドラマを生み出している。「最高峰」というに相応しいハイレベルかつハイクオリティなこの大会だが、ステージに足を踏み入れることができるのはたったの48人。その狭い狭い枠を目指して日々精進を積んできた学生たちの、文字通りの「夢の舞台」なのだ。

まずは『abc』の前哨戦として『EQIDEN』という「学業機関」のNo１を決定する団体戦が行われた。各学業機関ごとに５人〜10人でチームを編成し、一早く勝ち抜けを競うという、陸上競技の「駅伝」をモチーフとした大会だ。こちらにも全国から48のチームがエントリーし、中学校から高校、そして大学まで様々な層のプレイヤーたちがしのぎを削る。 第１回戦である「予選」から、過去優勝経験もある強豪校・東京大学がまさかの敗退を喫するなど、今年も波乱に満ちた展開に。一筋縄では行かない険しい道をくぐり抜け、決勝戦である「復路」へタスキを繋いだのは、慶應義塾大学、京都大学、大阪大学、名古屋大学の４校。
そして、大激戦の末にゴールテープを切ったのは京都大学。ともにリーチをかけた慶應義塾大学とのデッドヒートを制し、2011年以来２回目の優勝を飾った。昨年、一昨年と２回連続の準優勝で涙を呑んできた同大学が、ディフェンディングチャンピオンである慶應義塾大学へのリベンジを果たした形となった。

そしていよいよ、個人戦の『abc』が始まる。前回優勝を果たした青木寛泰が引退を表明したため王者不在となった今大会は、まさに群雄割拠の一大決戦。新しい覇者の座を虎視眈々と狙う古豪たちと、下から突き上げるニューカマーたちがぶつかり合う、一日限りのドリームマッチが幕を開けた。

第１ラウンドの４択ペーパークイズ１位は、先程の『EQIDEN』でも３位に入賞した大阪大学の４年生・萬谷祥輝。なんと150問中140問正解という、会場全体が唸るような恐るべき点数を叩き出し、学生最後となる今年の大会で、見事１位のネームプレートを獲得した。
その後も熾烈な戦いは続き、昨年の予選１位・原や準優勝タイの池内・荻田などが同じセットに回される「死の組」が発生するなど、ドラマチックな展開が数多く見られた。
数多くの強敵を薙ぎ倒し決勝への切符を掴んだのは、早稲田大学の４年生同士である佐谷政裕と長井和也、そして敗者復活から這い上がった若き新星・開成高校１年の吉原主税の３人。力の拮抗する３名による３セット先取の決勝戦「トリプルセブン」はもつれにもつれ、なんと全員が２セット獲得するという大会史上２回目のフルセットゲームに。

運命の最終第７セットは、序盤から長井が他２人から一歩抜け出して５問正解と大きなリード。しかし佐谷も負けじと猛連取し、逆転のリーチをかける。すぐに長井も追っかけリーチをかけ、ラストイヤーの同期である２人がそれぞれ王座に手をかけるという非常に緊迫した展開に。次の１問、「間口が／狭く・・・」という、限界まで研ぎ澄まされた押しを見せた佐谷が、ウィニングアンサー「ウナギの寝床！」を絶叫。紙一重の勝負に競り勝ち、見事668人の頂点に輝いた。中学生の頃から10年もの長きに渡って『abc』にチャレンジしてきた佐谷に、セコンドと会場から万雷の拍手が送られ、念願のトロフィーがその両手に渡った。

大会終了後、今回の大会長を務めた鳥居から、次回『abc the 15th』の2017年の開催決定が告知された。学生たちが競い合う最高の舞台『abc』はこれからも続いていく。