突然だが、ここで問題。
「冷凍した肉や魚…」
「観客の反応を…」
「“我々”や…」
これらは、「ここまでの文章だけで正解が出た」問題である。できるだけ早い所でボタンを押し、正解を導き出す。そんな「早押しクイズ」に魅せられた凄腕の社会人クイズプレイヤーたちが、2月21日(日)、社会人による基本問題実力No.1決定戦『ABC~the fifth~』に集結し、白熱の戦いを繰り広げられた。
この大会は元々『abc』という、社会人有志が毎年開催している現役学生を対象にした大会を発展させる形で生まれたものだ。こちらは社会人が学生向けに開催するのではなく、学生たちが社会人向けに開催する大会となっている。
第1ラウンドのペーパークイズは『abc』と同じく通過枠が48人と、非常に狭い門となっている。今回は特に学生スタッフたちが粋を集めて作成した珠玉の100問が出題され、歴戦のベテランたちを大いに苦しめた。
そんな熾烈を極めた第1ラウンドを1位で通過したのは、現役クイズ作家の田中健一。「難易度が上がった」と参加者が口を揃えた難関問題たちに、脅威の87点をマークした。
形式が微調整され、より実力が反映されるようになった第2、3ラウンドでは波乱の展開が続く。複数人が同時にリーチをかけるなど白熱のシーンも数多くあり、会場を沸かせた。準決勝には、昨年オープンクイズ大会11勝という驚異的な成績を残した徳久倫康や、学生大会での優勝経験がある片岡桂太郎や廣海渉、そして一度敗れたものの敗者復活から執念で舞い戻ったディフェンディングチャンピオン・渡辺匠など、並々ならぬ強豪が揃い踏みした。竜虎相打つ激戦は、初代学生大会王者・片岡桂太郎が圧倒的なプレイングで1抜けを決める。それを追うようにして比較的若い世代の旗手である鳥居翔平、徳久倫康が決勝への切符を手にした。
勝利の味を知る片岡に、王座を虎視眈々と狙う鳥居・徳久が挑戦者として挑む形となった決勝戦。3セット先取で行われる早押しクイズは、序盤から鳥居と徳久の猛烈な叩き合いに。そして、他2人からの猛攻を紙一重でかわす徳久がセットを2連取。このままストレートで逃げ切るかと思われたが、ここから鳥居が猛烈な追い上げを見せ、直ぐ様2セットを取り返し追っかけリーチをかけるという大激戦に。運命の第5セット、僅かに崩れた徳久を捉え、しっかりとチャンスをものにした鳥居が奇跡の大逆転。学生大会の『abc』も含めて、これまでに4度決勝で敗退し涙を呑んできた鳥居が、悲願の『ABC』初制覇を成し遂げた。この日が生まれてから10000日目の記念日であったという鳥居は、これまでにクイズの実力を上げるために数多くの問題を作ってきたという。「今までの苦労は間違ってなかった」とコメントし、ようやく届いたトロフィーを手に取ると、彼は満面の笑みを浮かべた。
閉会式で、学生の手による『ABC』シリーズは、この第5回を持って一旦休止すると発表された。今まで惜しみない労力を払って開催を続けてくれた学生スタッフたちには暖かな拍手が送られた。