Subscribe / Share

Toggle

NEWS & REPORT

クイズ王が早押しバトルを生解説!『第3回KnockOut ~競技クイズ日本一決定戦~』応援上映会レポート

皆さんは「応援上映」をご存じだろうか? 「応援上映」とは、ペンライトを持ち込んだり、途中で声を出したりすることが認められた、観客参加型の映画の上映会のこと。普通に映画を見るより楽しめると感じる人も多く、「新しい映画の楽しみ方」として広く認知されてきている。

そんな「応援上映」を、なんとクイズ番組でやってしまおうという試みが、さる10月20日(土)に、東京・渋谷のLOFT9 Shibuyaにて行われた『第3回Knock Out~競技クイズ日本一決定戦~』の応援上映イベントだ。

『Knock Out~競技クイズ日本一決定戦~』は、CS・ファミリー劇場で過去3回放送された、現代の最強クイズ王を決めるクイズ特番。そして今回、この番組の応援上映という無謀(?)な企画が実現したのは、なんといっても『第3回Knock Out』において、『東大王』でおなじみの東大生クイズ王・水上颯が参戦し、見事に上位進出を果たしたことが大きいだろう。実際、今回のイベントには水上ファンの女性が多数来場しており、その人気のほどがうかがえた。

今回の応援上映には、その水上のほか、第3回大会優勝者の徳久倫康、準優勝者の為季正幸もゲストとして参加。また、制作スタッフを代表して番組の総合演出の乾雅人、ディレクターの斉藤哲夫、そして企画・監修の大門弘樹(「QUIZ JAPAN」編集長)が登壇。豪華出演者とともに史上初のクイズ番組の応援上映がスタートした。

まずは第1部として1回戦の4試合を上映。ディレクターの斉藤哲夫は上映前に「CSは地上波と違って視聴率のデータが出ないので、お客さんがどこで面白がったとか面白くないと思ったかということが、全くわからないんです。今日初めて、自分が編集したものを目の前で見てもらって、生のリアクションがわかるんで、楽しみ半分・不安半分です」と語っていたが、いざ上映が始まると、「応援上映」というスタイルだったこともあってか拍手・笑いといった好意的なリアクションが絶えることがなかった。観客の半数近くが番組を初見だったことを考えると、制作者サイドの想像以上に楽しんでもらえていたのではないだろうか。中でも興味深かったのは、プレイヤー3名による試合中の心理状態の解説だ。

例えば、準々決勝第3試合で為季がリーチをかけたシーンでは、対戦相手の石川(貞雄)が「為季さんが絶対に間違わない保証はないんで」とコメントするシーンがあったのだが、為季はこの時、「石川さんのこの言葉を聞いた時にすごい安心しました。だって攻める気がないんですよ。第1回の時はリーチをかけた時に『一文節目を聞いたら押します』と言っていたのに」と思い、精神的に楽となったという。

水上は大接戦となった鈴木淳之介との対戦について、「淳太郎さん(鈴木のニックネーム)は相手が先行すると焦って誤答を繰り返す心根が弱い男なので、先行すれば勝てると思った」「普段は押さないような問題も頑張って押して、前がかりで攻めたのが良かった」と振り返っていた。また、勝負の分かれ目となった「モクテル」の問題は、実は「モックアップとカクテルから答えをでっち上げた」ことが明かされ、会場からは驚きの声が上がった。

また徳久は、第3回大会の前日に函館に遠征しており、二日酔いで体調が本調子でなかったことを大門から指摘されると、「体調が悪い時はクイズをやるのが一番。虫歯でもクイズをやっていると元気になる」という謎理論を展開し、乾から「ホントかよ!?」とツッコミを受ける一幕もあった。第1部の終了後に一旦、休憩をはさみ第2部へ。ここでは準決勝・決勝を鑑賞し、その後にトークショーが行われた。以下、トークショーで印象に残った会話をざっと紹介しておきたい。

徳久 今回の決勝はすごく調子が良かった。(クイズをやっているときに)僕、ちょっと考えてから答えているときがあるじゃないですか? そういうのは「これは知ってたはず」と思った段階で押してしまい、そのあとで頭の中で言葉を作ってから答えてるんです。で、この時はそれがわりとうまくいったので、うまく流れが作れた感じですね。

 1回戦から調子よかったよね?

徳久 ただ、1回戦は押して誤答したり、うまく押せずに相手に解答権を獲られたりということが割と多かったんですよ。決勝の時は、そこをうまく修正できていたのかなと。あと、為季さんは1回戦が間違えられない形式だったので、決勝戦はちょっと押し方が違ったんですよね。僕は1回戦も決勝も積極的に押してもいいルールだったので、そこでちょっと差がついたかなと思いますね。

斉藤 徳久君は第1回の時、テレビに出るのが初めてだったせいか結構ふわふわしてたんですよね。ところが今回は自力で場の雰囲気を作り、自分で流れをものにしている感じを受けました。その辺が勝因なんじゃないですかね?

徳久 その辺は意識してますね。例えばクイズの途中でふざけたり、ピースしたりする場面があったじゃないですか? あれは「なるべく自分がやりやすい雰囲気にしたいな」ということで、わざとやっていた感じです。

大門 徳久君は2015年から競技クイズの大会で年間最多優勝記録をずっと保持しているんです。なので(2016年に行った)第1回の時は「競技クイズ最強の男」というキャッチフレーズで出場してもらったんですけど、この時の対戦相手がテレビのクイズ番組に10回以上出ていて、クイズ王番組でも優勝している安藤正信さんという方で。で、この時は「テレビではどう戦うか?」ということを知り尽くしている百戦錬磨の相手にメンタルの戦いで敗れてしまったわけですけど。でも、そこから苦節3年かけて、テレビ慣れをして。それが優勝につながったのかなと。

徳久 時間がかかりましたね(苦笑)。

 準優勝の為季くんはどうですか?

為季 クイズを1年間休んで帰ってきた後、「やっぱりクイズは楽しんでやらないと意味がないなあ」という気持ちでやっていたせいか、極端に勝負に淡泊になってしまった大会でした。……まぁ、見返したら、やっぱり悔しかったですけどね。徳久さんのように「ガツガツやりつつも楽しむ」というスタイルじゃないと結果が出ないのかなと思いました。

大門 でも、為季さんは2011年の『ワールド・クイズ・クラシック』以降、クイズ王決定戦ではずっと優勝戦線に絡んでいるじゃないですか。

為季 それがやっぱりツラいんですよ(苦笑)。効率を追い求めて問題集を覚えたりとかもしているんですけど、30代後半になるとそれが極端にしんどくなる。しかも、今は20代ところか、10代もメチャクチャ強いので、これからも優勝戦線に絡めるかどうかはわからないですね……。

 為季さんって、絡む試合が全部面白いんですよね。僕、彼のことはホントにすばらしいクイズアスリートだと思っているんです。ところが第3回の予選はなかなかエントリーされなくて。なので、「あー、為季さん、今回は来ないんだ」と思っていたんです。ところが予選前日にエントリーしてくれて、しかも見事に勝ち上がってくれて。

為季 それは未練と、せっかく場を用意していただいた恩というか……。

徳久 あれって、ホントに直前に行くって決めたんですか? 実はこっそり新幹線を予約してたんじゃないですか?

為季 いや、決めたのはホントに直前です。行かないと後悔すると思って。

 一方、水上君は『Knock Out』の本戦に行ったのは今回が初めてじゃないですか。どうしたか?

水上 正直いうと、『Knock Out』ってそんなにやる気なかったんですよ。というのは、実は第1回の時に、予選の筆記で負けてしまったというのがありまして(苦笑)。で、その時と比べると、今はだいぶ強くはなってはいるんですけど、「行っても勝てないんじゃいかな」と思ってたんです。でも、今回は誘われたので「半分、サクラのつもりで行くか」と予選に参加したわけです。

大門 予選に参加してみて、どうでした?

水上 実は僕、クイズに対する自己評価がそんなに高くないというか、「クイズ界には、自分より強い人はたくさんいる」と思ってるんですね。ところが、いざ予選に出場してみたら「あ、俺、意外と強いじゃん」と自分の実力を再確認することができて。それで「せっかくテレビの場で、普段僕たちがやっているような難しいクイズができるんだから、がんばらないとな」と思ったんですよね。しかも1回戦の相手が鈴木さんに決まったじゃないですか。「鈴木さんが大学を卒業してからお互いがどう変わったか」を見れる、いい機会だなと思いましたね。

 実際に鈴木君と戦ってみて、いかがでした?

水上 「これまで、お互いが切れ味を研ぎ合いながら戦ってきたんだな」ということがクイズをやる中でわかって、ちょっと感動しましたね。クイズを通して対話ができたのが良かったと思いますし、試合自体もホントにいい勝負ができたんじゃないですかね。まさにシーソーゲームでしたし……。たまたま20分経った時に僕の方がリードしていただけで、実力差は全然なかったと思います。

大門 僕がこの1回戦を見て「水上君ってホントにすごいな」と思ったのは、パラレル(「ですが」問題)の読みがホントに的確なことなんです。

水上 問題を先読みするのは、けっこう得意なんですよね。というのは、こういう問題って、知識じゃなくて、頭の動かし方で差をつけられるので。今回でいうと「残暑見舞い/余寒見舞い」のパラレルは、「余寒見舞い」という言葉自体は自体は知らなかったんですけど、「残暑の反対は余寒」というところからひねり出しましたし。あと、「南アフリカと中央アフリカの首都」の問題も、地図を思い浮かべて、バンギ(首都)ぐらいしか答えになりそうにないなと。実は鈴木さんは地理が得意なんですけど、そういう相手の得意ジャンルの問題で差をつけられたのは大きかったですね。で、実は放送ではカットされてる問題もけっこうあって、実際はもっと長時間やってたんですよ。

 いつかノーカット版をやりたいね。

観客 見たーい!

徳久 水上vs鈴木のところだけね。僕と神野(芳治)さんとのところはいいわ(笑)。

斉藤 でも、1回戦はこの試合以外の3試合も熱戦だったんですよ。タイムアップになった勝負も2つあったので、いつもよりカットしてる問題は多いですね。そういう意味では、たしかにノーカット版を上映するのも面白いかもしれないと思います。

ひとしきり『Knock Out』を振り返ったあとは、会場に集まったファンからの質問コーナーへ。これから競技クイズを始めようと思っているという受験生の女性に、3人のプレイヤーたちが真摯にアドバイスをするなど、めったに聞けないトッププレイヤーたちの生の声に、みな真剣に耳を傾けていた。

最後に乾らスタッフから第4回に向けた意気込みの声もあがりつつ、あっという間にイベントは終了となった。クイズ界では初の試みとなった「応援上映」だが、出演者・観客ともに大いに満足がいくものだったのではないだろうか。

次回以降の『Knock Out』で、あるいは違うクイズ番組で、再びこのようなイベントが開催され、クイズファンの裾野が広がっていくことを期待したい。

【応援上映を終えて】

徳久 応援上映というのは初めての試みなので、最初はどうなることかと思っていました。でも、意外と楽しんで観てくれていたみたいだし、正解したら拍手をしてくれるし、観客の皆さんがあたたかかったなと思います。

水上 思ったより盛り上がりましたね! 来場者もクイズの楽しみ方をある程度わかってたし、クイズ自体が好きな方が多いんだなということがわかって収穫でした。そういう意味で、面白かったですよ。

為季 取引先のおばちゃん以外で、自分が出ている番組を好きで観てくれている人を目の当たりにしたのは、今日が初めてだったんですよ(笑)。なので、すごく新鮮でした。このイベントがこれからクイズを始める若い人にとって、とっかかりとなればいいなと思います。

斉藤 お客さんが、こっちが思っている以上にリアクションしてくれましたね。特にキャラクターにすごく反応していました。河合(智史)君や鈴木君といったプレイヤーにも、あそこまで反応してくれているのを見て、「我々が意図していたことは間違ってないな」とあらためて感じましたね。

大門 競技クイズというハードルの高いコンテンツを、大いに笑いながら楽しんで観てもらえたのは感慨深いですね。この番組を第1回から盛り上げてきてくれた徳久君・為季君、そして第3回で素晴らしい戦いを見せてくれた水上君に心から感謝です。

 こういうイベントがあると、お客さんは直接プレイヤーの人としゃべれるし、クイズをやっている姿以外の、テレビでは表現できないキャラクターを観ることができるじゃないですか。だから、水上君が入口で全然いいんですよ。水上君をきっかけにクイズの見方を知ってもらって、クイズプレイヤーとかクイズアスリートのことを「面白いな」「素敵だな」ということが思ってもらえれば。そして、それがいろんなところに伝播して、もっともっとクイズのすそ野が広がっていき、「クイズはマニアックなものじゃないんだよ」ってことになっていくといいなあと思います。

(C)東北新社

Return Top