2018年8月25日(日)、株式会社スマートニュースのイベントスペースにて、一般社団法人日本クイズ協会が主催するクイズ大会『第1回ニュース・博識甲子園(全国高等学校総合クイズ大会)』が開催された。クイズに青春を賭けた高校生たちの舞台として、新たに創設されたこの大会の模様を、将棋ライターの松本博文が取材。そのレポート記事を「QUIZ JAPAN」の短期連載にてお届けする。
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中堅戦
中堅戦に出場する選手と、予選の結果は以下の通り(順位表示は30位以内まで)。
栄東高校 2年 安達虎太郎(207点、8位)
開成高校 2年 藤松 健太(204点、9位)
旭丘高校 2年 岡田 弦大(187点、17位)
慶應義塾 2年 町 素直(183点、21位)
川越高校 3年 尾崎 優希(176点、29位)
松本深志 2年 富取 新太(173点)
仙台第二 1年 両方菜津子(172点)
福岡高校 2年 藤澤 守遥(147点)
川嶋君の活躍でトップに立った仙台第二。中堅戦には1年の両方菜津子(りょうかた・なつこ)さんが出場した。全国大会出場24人のうち、唯一の女性選手だ。今大会は、先鋒の川嶋君が作った問題をチーム3人で解いて、対策をしてきたという。
慶應義塾の町君は、クイズ研究会だけではなく、鉄道研究会にも入っている。町君だけでなく、多くの選手は、クイズオンリーの青春という感じでもない。文化系なら囲碁・将棋部、新聞部、料理部、放送部。などなど、他にいくつかのことに打ち込んでいる生徒さんも多い。多くのチームが共通して主張していたのは、3人それぞれの個性である。得意分野が違うことによって、広い範囲をカバーできる。
日高「鉄道の魅力ってなんですか?」
町「あまり一生懸命活動してるわけじゃないんです」
日高「そうなんですか? そのわりに予選ペーパーテストの地理が(30点満点で)26点と、かなり高得点でしたが」
町「あんまり関係ないんじゃないですか」
同じ鉄道研所属ながら、クールな感じの慶應義塾・町君とは対照的に、松本深志・富取君は熱い感じだ。
富取「自分の得意なジャンルを確実に取っていって、次の先輩に回したいなと思ってます」
日高「富取君は地理で27点を取っております。これは鉄道の知識ですか?」
富取「まあそうですね。鉄道あるところの地名なら、いろいろ入ってくるので」
日高「富取君は関係あるという派。町君は関係ないという派。なるほど」
隣りの町君が苦笑している。富取君の将来の夢は、鉄道会社に就職することだという。
中堅戦が始まった。まずは開成の藤松君が『下町ロケット』を答えて先制点をあげた。開成は、今大会の日程が、河口湖での4泊5日の合宿の最終日とかぶってしまったため、大会に出場する3人だけ早めに東京に帰ってきたのだそうだ。
第3問:東京ドームおよそ100個分の面積を持ち、沖縄県宜野湾市の4分の/1の…
「普天間基地!」
松本深志・富取君が得意の地理に関連する問題を取った。現代の日本における重要なトピックでもある。
第9問:ぐでたま、リラックマ、ハローキティ/と…
ここで初めて仙台第二・両方さんにランプがつく。
「サンエックス」と、少し自信のない表情で答えた。しかしこれは、残念ながら不正解。リラックマはサンエックスだが、ぐでたまとハローキティはサンリオだった。観戦している仙台第二・川嶋君が、すぐに両手を下げて、「大丈夫、落ち着いて」というジェスチャーをする。これが団体戦だ(「ぐでたま、リラックマ、ハローキティ/とコラボした製品も存在する、富士フイルムが販売しているインスタントカメラ「instax」シリーズの愛称は何でしょう?」。正解は「チェキ」)
第10問:南北470km、東西130kmという/…
栄東・安達君が押した。しかし、今ひとつ自信がなさそう。「チリ」。 細長い国をイメージしての解答。少し目算を誤った。ブザーがなって、安達君は苦笑しながら「ごめんなさい」と手を合わせるポーズ。問題は「南北470km、東西130kmという/細長い国土を持ち、レバノン、シリア、エジプトに囲まれている、1948年にユダヤ人が建設した国はどこでしょう?」で、正解は「イスラエル」。先鋒戦の第1問、川越・法島君の「エルサレム」と対になるような誤答か。
『日本大百科全書』によれば、チリの東西の幅は平均で175km。ただしその南北の長さは4270キロメートルに及んで、イスラエルの10倍近く長い。
安達君は中堅戦が終わった後で、地理は苦手と振り返っていた。安達君は予選のペーパーにおいて、地理のジャンルでは、30点満点で22点を取っている。もちろん水準以上の成績だ。しかしこのレベルの戦いともなれば、他にも優れたプレイヤーがいる。特にこの中堅戦では、奇しくも地理の問題が、各校の明暗を分けることになった。
第13問:広島カープ入団当時の背番号28から鉄人/と呼ばれ…
松本深志・富取君のランプが光る。「衣笠祥雄さん」。人名に「さん」をつけて、正解すると一礼。富取君、とても礼儀正しい。松本深志・富取君は、続く第14問も連取し、1抜けのリーチをかけた。
一方で、まだ0Pだった旭丘・岡田君が、ここから猛追撃を開始する。「ホワイトハッカー」「ジョージア」(スターリンの出身地、旧グルジア)などを答えてポイントを重ねていった。
第16問:「26世本因坊文裕(ほんいんぼう・もんゆう)」という号を持っている、史上初めての二度の七冠/を達成し…
押したのは開成・藤松君。自信のない顔で、少し言いよどんだ。「羽生善治」。残念ながら、これは不正解。将棋ではなく、ストレートに囲碁の名棋士の方を聞く問題だった。正解は「井山裕太」。藤松君、重い1×を背負った。
先鋒戦では、仙台第二の川嶋君が16問目で抜けている。一方で、中堅戦は大混戦。どこが最初に抜けても、おかしくはない。
第24問:電話よりも33年も早い1843年に発明され、ラテン語で「同じものを作れ」という意味の名前がつけられた、文書や画像を電子信号に変換して送る装置は/…
じっくり聞いて押した、松本深志・富取君。これを取れば1抜けだ。しかし。
「あっすいません、えっと……」
左手を口にあて、苦渋の表情。思い浮かんだ解答に、ちょっと勘違いがあったか。
「モールス信号!」
不正解のブザーの後に、日高さんが一言。
「時代を感じるぜ」
今の若者には、あまりなじみのない装置になってしまったのかもしれない。正解は「ファクシミリ」。
ここまで快調に4○で走ってきた松本深志に初めての誤答。福岡以外の7校に1×がつく、タイトな状況になった。ここからいよいよ最終盤の大激戦となる。
第26問:来月公開の映画『プーと大人になった僕』ではユアン・マクレガーが大人になった姿を演じる、くまのプーさんの大親友の/…
ランプがついたのは旭丘・岡田君。「クリストファー・ロビン」。会場の方から大きく「よし!!」という大きな声が響いた。松本深志が4Pの時点で、旭丘は0Pだった。そこから一気に追い上げて、追っかけリーチだ。
第27問:元々特殊だったものが広く認められて一般的になることのたとえにも使われる、英語では「citizenship(シチズンシップ)」と呼ばれる権利/は…
ランプがついたのは、またもや旭丘・岡田君。確信を持った表情で答えた。
「市民権!」
0Pから一気の大逆転で、5P先取。中堅戦は旭丘が見事な1位通過を果たした。大逆転を許した松本深志・富取君は、やや残念そうだ。岡田君は壇上を降り、チームメートの待つベンチに引き上げていった。
次の問題……に行く前に、ここで慶應義塾チームから手が上がった。タイムアウトの申請だ。慶應義塾のコーチを務めるOBが、町君にアドバイスを出す。3Pで2位争いに加わっているものの、1×がのしかかる。ここは重要な局面だ。
「2人抜けだけど、(慶應が)3-1で(松本深志が)4-1でしょ。たぶん、飛ぶ(失格になる)と、次(大将戦)でどうやっても抜けれないから、飛ぶのだけはダメだけど、本当に自信があるものだけ行って。(先鋒戦に続いて)2人飛ぶと負けだから。みんな柔らかい問題は弱そうだから……」
と、ここで30秒が終了し「それまで」の声。町君が壇上に戻って、試合は続く。
第28問:牧場の草、井戸の水、窓口の行列など、増加と減少が同時に進むものをテーマにした算数の問題を、有名な科学者の/…
飛ぶリスクがある中で、果敢に押したのは、町君。「ニュートン算」。落ち着いて、自信を持って答えた。正解で慶應義塾も4Pでリーチ。
第29問:今年2月にミュージックビデオが公開され、4か月足らずで再生数が1億回を超えた、ドラマ『アンナチュラル』/の…
解答権を得た開成・藤松君が思わず手を叩く。「Lemon」。米津玄師が歌う主題歌を答えて、3P。
第30問:ヒンディー語で『ベンガル地方の』という言葉に由来する、キャンプ場/などに…
またもやランプがついたのは開成・藤松君。「バンガロー」。さすがの底力で開成も追いつき、慶應義塾、松本深志と並んだ。
第31問:日本には『島』という漢字がつく県が5つありますが、そのうち、隣り合っているのは、何県と何県で/しょう?
ランプがついたのは、松本深志・富取君。
「広島と島根!」
「おめでとう!!」
「やったあああ!!!」
大きく両手をあげて叫ぶ富取君。場内からの拍手に包まれる中、丁寧に、一礼をした。
富取「島根が(頭の中で)最初に出てきた時に、隣り合わせっていって、そこで鉄道関連もあって、地理がわかってたんで、そこで押しました」
筆者は広島と島根の隣県、山口の出身だが、富取君の解答を聞くまでは、両方とも「島」の字が入っていることに気づかなかった。
鉄道研の富取君が、知識と一瞬のひらめきで、取るべき問題で取った、ということだろう。富取君が中堅戦を2位で通過。松本深志に大きな9点が入った。
最初の選手紹介で注目されたように、鉄道研に所属しているという点では、慶應義塾・町君も同じだった。
町「話を聞いてると、(富取君とは)似たり寄ったりのところが多かったので、ちょっと悔しい」
開成・藤松君は最後で追い上げ、見せ場を作ったが、あともう一歩及ばなかった。
藤松「不用意なバツ(棋士の問題で正解は井山裕太)が本当に痛かったので、誤答には気をつけないといけないな、と思いました」
栄東・安達君は序盤で誤答してしまい、そこから伸びを欠いたか。
安達「苦手な地理問題(正解はチリ)に手を出したのは、結構厳しかったかな、と思います。まあ、『平手友梨奈』(第11問)を答えられたんで、ちょっと満足しています」
旭丘高校 19
栄東高校 12
松本深志 10
仙台第二 10
開成高校 8
慶應義塾 4
福岡高校 4
川越高校 2
すべてのチームに上位4位以内、準決勝進出のチャンスが残されたまま、大将戦を迎えることとなった。
(PART3へ)
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