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NEWS & REPORT

ユーザー主導による『クイズマジックアカデミー』最強王座決定戦『賢竜杯Xii』レポート

2018年1月6日・7日に、クイズゲーム『クイズマジックアカデミー THE WORLD EVOLVE』の頂点を決めるユーザー主体の大会『賢竜杯Xii』が大田区産業プラザPiOにて開催された。今回は、出場者の1人でもある徳久倫康に参戦レポートの執筆を依頼した。『QMA』と『賢竜杯』を長年追い続けてきた徳久が、本大会を通して、『QMA』店舗大会の魅力に迫る。

クイズの強さとはなにか

ぼくは今まで何度か、「競技クイズ界最強」という触れ込みで、テレビのクイズ番組に出演した。昨年末には『超クイズサバイバー』にクイズ王チームの一員として出演し、チームは敗れたものの、出演者中最多の正解を記録することもできた。

しかしそもそも、「クイズが強い」とは、どういうことだろう。

知識が豊富なこと、答えにたどり着くまでの時間が短いこと、知的な反応速度、それらを掛け合わせたもの……など、とりあえずの答えはいろいろ考えられる(そもそも「クイズ」とは何か、という疑問は、ここでは保留にしておこう)。

ぼくの肩書きの場合は、「オープン大会の年間優勝回数」というのが、「強さ」のとりあえずの根拠だった。本当のところを言うと、大会といっても規模はさまざまなので、単純に全てを等価としてカウントするのは無理がある。ではなにをもって「強い」と言えるのか。ときどき考え込んでしまう。

いわゆる競技クイズだけに限った話ではなく、クイズゲームでも同じだ。ゲームなんだから勝ち負けははっきりするだろうと思いきや、事態はそう単純ではない。競い方にもいろいろあるし、条件が変われば結果は変わる。

というわけで、ようやくここから本題。今月開催された『クイズマジックアカデミー』(QMA)の大会、「賢竜杯Xii」の話をしたい(以下、プレイヤーのカードネームは敬称を略した)。

最強決定戦

『QMA』のプレイヤーであれば、大会名に見覚えくらいはあると思う。『QMA』では前作から「ジャパンツアー」と銘打って、今までゲームセンターで自主的に行われてきた店舗大会を公認し、通算成績をポイントとして競うようになった。

そのため、『QMA』のTwitterアカウントでもよく大会の情報が流れてくるし、実際のゲームを遊んでいても告知が表示されたり、大会のイメージ画像が壁紙として使えるようになったりしている。

コナミ公式の「グランドスラム大会」を別にすると、『賢竜杯』は店舗大会のなかでも特別な位置づけにある。第1回が開催されたのは2004年、当時はまだ『QMA』の第1作が稼働していた。以降有志により毎年のように開催され、今に至る。冒頭でクイズゲームの「強さ」について触れたが、ヘビープレイヤーの間では、この大会で勝ったプレイヤーこそが「最強」ということになっている(もちろん、違う基準を持っている人もいるだろうが……)。『賢竜杯』の歴史については、以前『QUIZJAPAN』vol.6で詳しく書いたので、興味をもっていただいた方は、ぜひそちらをご覧いただきたい。

かつてぼくは『QMA』を熱心にやりこんでいた時期があり、2010年の第6回大会で準優勝し、翌年の第7回大会で3位になったことがある。これはこれでとても立派な成績だが、優勝できなかったのは大きな心残りだ。そこから先は早押しを中心としたオフラインのクイズに軸足が移り、『QMA』のプレイ回数はみるみる減って、実力も衰えてしまった。

ぼくが最前線から離れて以降も賢竜杯の規模はどんどん拡大してゆき、今年はついにゲームセンターを飛び出して、一般のイベント施設が舞台となった。ふたつのゲームセンター、そしてコナミから筐体と付属設備を借り受け、2日だけの特別な闘技場が作られた。「賢竜杯12特別会場PIO校」(会場は「大田区産業プラザPiO」)が、今回の決戦の舞台である。有志の主催であることを思うと、事前の折衝から搬入・搬出に至る労力は想像を絶する。しかし多少のトラブルこそあれ、大会は実にスムーズに運営されていた。ただただ頭が下がる。

当日予選

ここしばらくの『賢竜杯』は、まずシード権をかけた地方予選を行い、前日予選を経て本戦、という流れを取っている。今年はこれに加えて、本戦当日(1月7日)の朝にも予選があった。

ぼくはというと、前回は地方予選でシードを取っていたのだが(そのために東京広島間を日帰りで往復した)、今回は予選にはまったく参加できなかった。別のクイズ大会の手伝いで前日予選にも出られないことがわかっていたので、当日予選に参加した。

前日予選と当日予選はどちらかにしかエントリーできず、当日予選は参加者全員から2人しか勝ち上がれないという過酷なルール。4人対戦で2回連続1位を取らねばならないので、組分けのくじと出題全てに恵まれないとどうにもならない。「とうちゅう」こと永田喜彰さんと、「どうせだったら当たるといいですね」と話していたが、あえなく別の組になってしまった(組み分けは完全にランダム)。

対戦相手のジャンル別の正解率グラフを参考に、少しでも相対的に有利なジャンル・形式を出題してはみたが、結果から言うと箸にも棒にもかからず、1戦目に4位で敗退となった。追加される問題数も莫大だし、むかし覚えた問題も着実に忘れていっている。いわゆる競技クイズでふだん問われるよりも、出題範囲は広くて深い。勝ち抜くのは難しいだろうとわかってはいたが、負けるとやはり悔しくはある。

生き残るのは1人だけ

そこから先はひたすら観戦。なにしろトッププレイヤー同士の対戦で、基本的に試合ごとに4人中2人が脱落していくので、どの試合も緊張感に満ちている(ルールについてはこちらを参照)。勝ち抜くごとにそれまでの対戦で出題したジャンルや形式が使えなくなる制約があるので、どこまで武器(正解率の高いジャンル・形式)を温存するか、そもそもどのくらいの武器を用意してきているかなど、勝負を左右する変数はたくさんある。

1問の気の迷いが即敗退に繋がるため慎重にならざるをえないが、かと言ってゆっくり答えすぎるとタイム差で負けてしまう。微妙なバランスが問われる。

1・2回戦から、上位進出が確実と思われていたような有力なプレイヤーが、少しずつ姿を消していく。同時進行している試合全てを見るのは難しいので、どよめきが起こってあわててほかの試合画面を見に行くようなことも多かった。ここで負けたからと言って「弱い」わけではないことは、会場のみなが知っている。しかし勝った者は、間違いなく強い。

準々決勝では、そこまでの成績上位者が組分けを「トレード」できる新ルールが導入された。トレード権をどう使うかは実に難しい。勝ち残るために最善の組み合わせを実現しつつ、準決勝以降の展開も視野に、自分が参加しない組のマッチアップについても考慮に入れなければならない。誰がどんなジャンル・形式を出題するかの予想も重要で、事前にどのくらいのプレイヤー情報を掴んでいるかが問われもする。熟考に次ぐ熟考の結果組み合わせが決まり、それぞれの対戦の結果、ベスト8が出揃った。ちなみにここの組み分け表示はゲーム画面そのもののようなクオリティで、技術力とデザイン力に驚かされた。オープニングやエンディングにもそれぞれ動画が用意されており、演出の豪華さも『賢竜杯』の大きな魅力のひとつだ。

準決勝も新ルール。まず「パートナー」として、今までに敗退した参加者を選び、出題などについてアドバイスを受けることができるようになった(もちろん、クイズの解答自体を手伝ってもらうことはできない)。パートナーの指名が重複した結果、先に指名したはずのプレイヤーが「フラれる」という一幕もあった。ちょっと気の毒だが、なかなかウケた。

準決勝はまず4人1組で2対戦を行い、1位のふたりが決勝に進出する。続いて1試合目の2位と2試合目の3位、1試合目の3位と2試合目の2位が1対1で対戦し、勝者1人ずつが決勝に進む。例によってここでも出題の制限がかかるので、先に1位を狙うか、2回目のチャンスに焦点をあてるかなど、考えるべきファクターが多い。

1試合目では、賢竜杯を最多の3回制した経験をもつ「れお」が、2試合目で決勝進出歴があり、コナミ公式の「AOU特別杯」でも優勝経験のある「パーシヴァル」が、いずれも4位で姿を消した。ふたりともかなりのベテランで、2010年にぼくが決勝に残ったときは、どちらも対戦相手だった。今でも頂点に近い実力を維持しているトッププレイヤーだが、裏返してみれば、それだけの積み重ねがあっても勝てない世界なのだとも言える。

2試合目は1対1。『QMA』は4人1組の対戦が基本なので、お互いにパートナーがダミープレイヤーとして参加して、擬似的に4人対戦にする。パートナーが何を出題するかが鍵になるので、通常の4人対戦とは違った戦略性が求められる。ここで前大会の優勝者「ほりべやすこ」と、こちらもベテランで、「AOU特別杯」勝者でもある「ニラせんせー」が敗退。「ほりべやすこ」は今大会も優勝候補の筆頭で、結果発表ではひときわ大きなどよめきが起こった。

勝敗を分けるもの

さあ、決勝。残ったのはたった4人。場内の全員がスクリーンを注視する。

『QMA』の対戦では、お互い何が得意、不得意でどんな武器を持っているかのメタゲームの読み合いが大きなウェイトを占める。ああだこうだ言いながら選択を読み合うのは実に楽しい(みなそこまでに負けているわけだが……)。

ちなみに今回は特に、ネット配信用の実況が情報量豊かでおもしろい。動画はアーカイブが残っているので、音声を聞きながら見ると、『QMA』プレイヤーがどういうことを考えながら対戦しているのかが掴んでるもらえるはずだ。単に覚えた問題の数を競うだけなのであれば、解説なんて必要ない。しかし『QMA』の対人対戦はもっと奥深く、人間味にあふれている。

決勝は4人対戦を繰り返し、最初に1位を2回取ったプレイヤーが優勝となる。勝負をかけるタイミングのかけひきが重要で、今までに数々のドラマを生んできた。このルールでは1位以外意味がないため、「今回のセットは様子見」と決め、武器を温存する戦略もありうる。かつての決勝では、本来まず選択されない「ノンジャンル・ランダム」(全ての問題から無作為に出題される)を効果的に使って優勝したプレイヤーもいた。このときの選択は半ば伝説のように語り継がれている。

決勝に進出したのは、「おうさかひめの」「オタク」「ぼーしぱん」「わさムーチョ」の4人。いずれも優勝経験はないが、「おうさかひめの」は3回目、「ぼーしぱん」は4回目の決勝進出。ちなみに「おうさかひめの」は前回大会、最後の24問目を外して逆転負けしている。そのときの対戦相手は全員、すでに敗退してしまった。大きなチャンスとも言える。

はじめての決勝となる「オタク」「わさムーチョ」はその牙城を崩しつつ、2セットをもぎ取らなければならない。総合力の高いプレイヤーはお互いに攻撃力の高い武器を使い切った長期戦の方が勝ちやすいし、逆に純粋な正解率勝負で分が悪い側は、武器を適切なタイミングで切り、確実にモノにする必要がある。どの出題が最適かは、それぞれの力関係と試合展開によって刻々と移り変わっていく。

1戦目は猛威をふるった「わさムーチョ」出題のスポーツ・順番当てをしのぎ、「ぼーしぱん」が1勝目。こうなるとほかの3人は「ぼーしぱん」に1位を取らせないことが大事になる。単に自分の点数だけを考えるわけにはいかない。

しかし2戦目、その不利なはずの「ぼーしぱん」は24問を全答してみせた。めちゃくちゃ強い。続く「オタク」が1問落としているので、これで決着か……と思われたが、メイン武器であるスポーツ・連想で確保した解答タイムの差が効き、ここは「オタク」が1勝目を挙げた。

ここまで勝ちを取れていないふたりにとっては命拾いした格好になるが、だんだん選択肢は狭まっていく。そろそろ勝負をかけていきたい。3戦目は途中まで「オタク」が優勢だったが、後半で「おうさかひめの」が逆転。3人が1勝ずつ分け合う混戦となった。つくづくよくできたルールだ。

いよいよクライマックスの4戦目。冒頭のアニメ・ゲーム・四択で、後がない「わさムーチョ」が3問落としてしまい、この試合で勝負が決まる公算が高まる。3セット目が終わった段階で、「おうさかひめの」と「ぼーしぱん」が正解数で並ぶ。雌雄を決する最終セット、「わさムーチョ」の選択はノンジャンル・ランダム(!)。事前のインタビューで「切り札は?」と問われたときにも「機会があればノンジャンル・ランダムを使いたい」と答えていたのだが、まさかこの極限状態で出題されるとは思わなかった。会場からも大きな拍手が巻き起こる。

残りはわずか6問。4問目、「ぼーしぱん」が漢字の見間違いで誤答してしまう。5問目は全員正解。最終問題は初期からある○×クイズ。全員が即答する……が、答えが割れる。「おうさかひめの」が誤答し、ふたりの正解数が並ぶ。あとはタイム差で、客席からは「おうさかひめの」のほうが優勢に見えていたのだが、結果は3点差で「ぼーしぱん」の勝利。それまでも要所要所で見せていたガッツポーズがひときわ大きく、喜びを感じさせた。大会史上でも屈指の名勝負だった。

ぼくは正直に言って、前回あと一歩で戴冠を逃した「おうさかひめの」に強く肩入れしながら観戦していたので、最終結果の発表後しばらく、気が抜けたようになってしまった。こんなに強くても勝てないのか。勝つというのはこれほどまでに、難しいことなのか。

一見、単に覚えた問題を淡々と答えていくだけのように見えて、そこには画面に現れない駆け引きや、心の動きがある。大舞台では、いつもであればノータイムで答えられたはずの問題がうまくアウトプットできなかったり、あるいは普段では答えられないような問題の答えがすっと想起できたりすることもある(これは競技クイズに親しんだことのある方ならば、よくわかってくれるはずだ)。間違いなく実力主義なのだけれど、どこかで紙一重なところがあるのが『QMA』の対人対戦で、それがおそらく、ぼくたちのこころを掴んで離さないのだ。

でもまあ、次があったら、勝ってほしい(自分ももうちょっとがんばりたい)。

冒頭で触れたように、『QMA』の店舗大会シリーズ「ジャパンツアー」では、賢竜杯のあと、「グランドスラム大会」というビッグタイトルが用意されている。今回はこの大会にあわせて新規追加された問題だけが出題されるラウンドなど、コナミ主催大会ならではの試みもある。スポーツ中継は生のほうがおもしろいのと同じで、『QMA』もリアルタイムで見るに限る。2月11日、幕張メッセ。ご都合のつく方はぜひ会場で、あるいは生放送で、紙一重の戦いを見届けてほしい。そこにはいわゆる競技クイズとは違う、しかし同等以上にスリリングな、「もうひとつのクイズ」がある(徳久倫康)

©2017 Konami Amusement

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