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クイズにかけた熱い夏! 『第2回ニュース・博識甲子園』観戦記(PART4)

2019年8月24日、株式会社スマートニュースのイベントスペースにて、日本クイズ協会主催の高校生向けクイズ大会『第2回ニュース・博識甲子園(全国高等学校総合クイズ大会)』全国大会が行われた。会場に集結したのは、7月に全国8都市で行われた予選会を勝ち抜いた8チーム×3人の計24名。予選に参加した103校182チームから選ばれた精鋭たちは、どのような戦いを見せてくれたのか? クイズに取り組む全国の高校生の目標として新たに創設されたこの大会のレポート記事を「QUIZ JAPAN」の短期連載にてお届けする。(取材・海辺暁子、撮影・神保達也)

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1人1人のクイズ力が試される決勝戦

予選トップの桜丘や昨年の覇者・栄東、西の強豪・灘らを打ち破り、最終決戦に駒を進めたのは予選6位の大阪星光学院と4位の仙台第二。大阪星光学院は準決勝のボードクイズで1位抜けを果たし、仙台第二は同じく準決勝で白熱のサドンデスを制している。両チームとも、波に乗っていると言ってもいいだろう。

決勝が始まる直前、大阪星光学院の山川くんは「とにかく川嶋くんをマークしたい」と話した。仙台から東京のクイズ大会に遠征し、好成績を残してきた川嶋くんの強さは、大会前から遠く大阪の地まで伝わっていたようだ。

決勝戦は「ノルマ制早押しクイズ」。基本は両チーム全員で戦う15ポイント先取の早押しクイズ。ただし、1人5問正解しないといけないというノルマがある。ノルマを達成した者から抜けていき、先に3人全員が5ポイントを獲得したチームが優勝となる。チーム対抗でありながら、個人の実力も重視される厳しい形式といえるだろう。なお、誤答した場合は相手チームに解答権が移る。「ノルマ」と聞くとドキっとしてしまうが、非常に奥深く面白いルールのクイズ形式だ。

「もしチームのエースが“自分以外にも答えられる人がいるな”と思った場合は、あえてボタンを押すスピードをゆるめて、他のメンバーに答えさせる作戦もありかなと思います」

解説の日高大介さんがそう言うように、エースがわかる問題をやみくもに押すよりは、チームメイトに譲った方がいい局面もあるかもしれない。とはいえ、待っている間に相手チームに答えられてしまえば元も子もない。そのあたりの駆け引きが非常に難しく、いかにチームメイトの得意ジャンルを知っているかもカギとなる。

「他の2人に決勝まで連れてきてもらった」(鄭くん)、「自分には答えがわからなかったボードクイズで他の2人が正解してくれたおかげ」(川嶋くん)と、仙台第二のメンバーは終始謙虚で、チームワークも抜群だ。対する大阪星光学院は1年生から3年生まで一人ずつという珍しいチーム構成ながら、実力差は少なくバランスは取れている。2年生の山川くんは常に沈着冷静に見えるが、「勝つ自信は?」との問いにはきっぱりと「あります」と答えた。

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好調に滑り出す仙台第二、誤答が続く大阪星光学院

緊張の中、最終決戦がスタートした。

「問題。過激な発言が目立つことから、『トロピカル・トランプ』や/……」
「さあ押したのは仙台第二高校・川嶋さん!」
「ボルソナロ!」
「正解!」
(問題の続きは「“トロピカル・トランプ”や“ブラジルのトランプ”と呼ばれる、今年1月1日に就任したブラジルの大統領は誰でしょう?」)

まずは大阪星光学院の3人が「最もマークをしている」という仙台第二の川嶋くんが1ポイントを先取した。

続く2問目は、大阪星光学院の木村くんが誤答してしまう。大阪星光学院には解答権がなくなったため、仙台第二は全文を聞いた上で、落ち着いて答えることができる。

「ゴシック建築の教会などによく見られるステンドグラスがはめ込まれた丸い窓のことを、ある花の名前をとって何というでしょう?」

問題を最後まで聞いた上で、川嶋くんがゆっくりと「バラ窓」を正解する。他の2人がボタンを押すのを待つそぶりも見せたが、動く気配がなかったため、自らが正解を取りに行く形となった。

続く問題も大阪星光学院の山川くんが誤答してしまい、仙台第二の両方さんが正解する。ここまでチームとしては0-3と仙台第二が一歩リード。少し嫌なムードになった大阪星光学院だったが、次の問題で本選出場者中唯一の高校1年生である三好くんが「若山牧水」を正解。この大会中、三好くんは司会の小林アナや解説の日高さんから「唯一の高校1年生」「半年前までは中学生だった」と紹介されるたびに、「中学生の時からいろいろな大会に出てましたし、学年は関係ないです」と反論していた。実際、三好くんは年上の人ばかりが多い大会でも好成績を収めている実力者だ。プロ意識を感じて格好いい。

その後、仙台第二の川嶋くん、大阪星光学院の山川くんが正解し、2-4で仙台第二がリードという局面。

「『主君に忠義を尽くす』という意味の題名がつけられた、日清戦争の際に外務大臣を務めた/……」
「押したのは仙台第二・鄭さん」
「陸奥宗光」

無情にも不正解のブザーが鳴ってしまう。「大丈夫、大丈夫」と、小声ですかさずフォローする両方さん。問題は「外務大臣を務めた陸奥宗光の回顧録は何でしょう?」と続いた。大阪星光学院の木村くんが落ち着いて「『蹇蹇録(けんけんろく)』」を正解し、1ポイント差に迫る。

しかし、突き放すように仙台第二の川嶋くんが「ウチワサボテン」と「新潮文庫」を立て続けに正解。5ポイントをあっという間に積み上げ、1人目の勝ち抜けとなった。川嶋くんが抜け、心細くなるかと思われた仙台第二だが、直後に紅一点の両方さんが「雨傘運動」「故郷の空」「近藤麻理恵」を連続で正解、あっという間に4ポイントに。

後から聞いた話によると、大阪星光学院はここで非常に焦ったそうだ。川嶋くんが先に抜けるところまでは想定内だったが、2人目も抜けそうになり、さすがに「まずい」と感じたという。しかし、それで委縮しないのが大阪星光学院。まずは山川くんが正解すると、続けて三好くんが3連続正解、木村くんが2連続正解と猛チャージをかけ、あっという間に合計9ポイントと仙台第二に並ぶ。しかも山川くんが2ポイント・木村くんが3ポイント・三好くんが4ポイントと、全員がポイントを獲得している。対する仙台第二は、川嶋くんが抜け、両方さんがリーチをかけているものの、鄭くんがポイントを獲得しておらず苦しい形となった。その鄭くんは試合前「大阪星光学院は全員が強く、非常にバランスの取れたチーム」と分析していたが、奇しくもその通りの流れとなってしまった。

その後、大阪星光学院は木村くん・山川くんが正解してポイントを積み上げ、全員4ポイントでリーチ。まだ一人も抜けてないものの、戦況は有利に見える。すると、そのままの勢いで山川くんが「ジョホールバル」を正解し、両チームを通じ2人目の勝ち抜け者に。勢いに圧倒される仙台第二の2人だが、両方さんが意地を見せる。

「1970年代には田中好子・藤村美樹とアイドルグループ・キャンディー/…」
「さぁ押したぞ、仙台第二・両方さん!」
「伊藤蘭!」

高校2年生の両方さんがキャンディーズの伊藤蘭を正解し、解説の日高さんも思わず「お見事!」と声を上げる(問題の続きは「キャンディーズを結成していた、俳優・水谷豊の妻としても知られる女優・歌手は誰でしょう?」)

そういえば両方さんは本選前に、予選ペーパークイズで出題された「森光子」や「オリックス時代のイチロー」について、「(昔の情報は)親から聞いたりしています」と話していた。「学校で習う勉強分野」や「最近の時事問題」はできて当たり前という中で、昔の芸能・スポーツが知識に加われば大きな武器となるだろう。

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クイズは戦略やメンタルが試合を大きく左右する

両方さんが抜けた直後に大阪星光学院の木村くんも抜け、ついに仙台第二の鄭くんと大阪星光学院の三好くんの一騎打ちとなった。ポイントは三好くんの4ポイントに対し、鄭くんは無情にも0ポイントのまま。迎えた27問目。

「ハンガリー、ポーランド、チェコスロバキアの独立などが承認された、第一次世界大戦後に連合国/……」
「さぁ来た! 仙台第二・鄭さん!」
「ベルサイユ条約」

正解音を待ち、静まり返る会場。祈る仙台第二のチームメイト。しかし……鳴ったのは、不正解のブザー。会場から大きなため息が漏れる。解答権は三好くんに移り、問題が最後まで読にあげられる。

「ハンガリー、ポーランド、チェコスロバキアの独立などが承認された、第一次世界大戦後に連合国とオーストリアの間で結ばれた講和条約を何というでしょう?」

ウィニングアンサーに相応しく、元気な声で三好くんが答える。

「サンジェルマン条約!」
「正解!優勝は大阪星光学院!」

駆け寄るチームメイト。実は三好くんは「大会前に様々な条約名を徹底的に洗っていた」という。その努力が実った瞬間だった。

表彰式では大阪星光学院の3人に、『JQSグランプリシリーズ』(『博識甲子園』同様、日本クイズ協会が主催するクイズ大会)初代王者の徳久倫康さんより優勝カップが手渡された。

勝因について「得意ジャンルを補完できたのがよかったです」と山川くん。理系の山川くん、文系で地理歴史のほかに芸能・スポーツも得意な木村くん、ゲーム・アニメ系が得意な三好くんと、全員でジャンルを網羅できたことが勝利につながった。さらに言えば、大阪星光は序盤の誤答で仙台第二の先行を許したミスを早い段階で立て直し、誤答しない堅実な押しに切り替えたのも大きかった。ルールや戦況に合わせてクレバーに対応したことで流れを引き寄せたと言えるだろう。

一歩及ばず準優勝となった仙台第二のリーダー・川嶋くんは「とにかくチームワーク良く楽しくクイズができてよかった」と話し、残念ながら最後まで残ってしまった鄭くんに対しては「ボードクイズでたくさん答えてくれてありがとうございます」とねぎらった。確かに鄭くんのボードクイズでの成績は、大阪星光学院の木村くんに次ぐ2番目。「鄭さんあって決勝まで来れたので、胸を張って仙台に帰っていただければと思います」と日高さんも声をかける。ちなみに、鄭くんは受験生にもかかわらず、全国予選の前にはチームメイトの2人に対策用の時事問題を作っていたという。事前アンケートでは両方さんと川嶋くんがともに、鄭くんに向け感謝の言葉を綴っていたのだった。

大会終了後、司会進行と運営スタッフに対する囲み取材が行われた。「このような競技クイズを本格的に観るのは初めて」という司会のTBS・小林廣輝アナウンサーは、興奮した様子でクイズの魅力を話した。
「今までクイズは文科系のイメージしかなかったが、実際に間近で見てみると、負けても健闘を称えあう姿や練習を重ねる姿、メンタルコントロールや体力が重要であるところなど、高校でサッカーをやっていた自分からしてもスポーツと全く同じ、いやスポーツを超えると言っても過言ではないと感じました」

世間的にはバラエティの一ジャンルと思われがちな「クイズ」だが、小林アナが話していたように、これだけの真剣勝負を見せられるとスポーツのように思えてくる。愉快なルールやバラエティ要素を入れずとも全く退屈しないし、例え自分には解けない問題が多くても思わず見入ってしまう。シンプルなルールながら、こんなに真剣になれる競技クイズを、もっと長く、何度でも見たいと思った。挑戦者も、会場も、そして筆者も熱くなったある夏の一日は終わり、その微熱は来年へと持ち越される。

【Paravi独占配信!】「第2回 ニュース・博識甲子園」全国大会
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