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2015年12月26日(土)、東京・渋谷の東京ウィメンズプラザにて、「Man of the Year Senior 2015」(以下「マンオブシニア」)が開催された。
「Man of the Year(通称:マンオブ)」とは、1983年から2005年にかけて開催された学生クイズ日本一を決めるクイズ大会のこと。その「マンオブ」が消滅から10年の時を経て、ひょんなきっかけ(詳しい経緯は公式サイトの発起人メッセージ参照)から「1960年代生まれのシニア向けのクイズ大会」として生まれ変わったのが、今回開催された「マンオブシニア」だ。
「1960年代生まれ」といえば、数多のスタープレイヤーが集まる「クイズ界の黄金世代」。当日は、そんな黄金世代のプレイヤー95人が出場者として、そして、彼らの戦いを見届けようと156名もののクイズファン(中にはクイズファンとして有名な有名人の姿も!)が観客として、会場へと足を運んだ。
また、当日の司会進行は『アメリカ横断ウルトラクイズ』(以下『ウルトラ』)の海外レポーターなどを務めた元・日本テレビアナウンサーの小倉淳が担当、熱戦に華を添えた。
【第1ラウンド(参加者全員→50人通過・上位2名は第2ラウンド免除)】
第1ラウンドは三択ペーパークイズ。クイズファンにとっては『アメリカ』の機内クイズで、それに加えて、「マンオブシニア」参加者たちの多くにとってはかつての「マンオブ」の予選ラウンドでおなじみの、まさに「クイズ界の定番企画」ともいえる形式だ。
問題数は100問、制限時間は15分。BGMの『Orgasmachine』(『ウルトラ』の機内三択シーンでおなじみの曲)が緊張感を高める中、1問当たりにかけられる時間はわずかに9秒という厳しい戦いが繰り広げられた。
このラウンドを1位で通過したのは、85点を叩き出した「元祖学生クイズ王」道蔦岳史。1点差で、『クイズ$ミリオネア』で1000万円を獲得した菊地晃史が続き、この2名が第2ラウンド免除での第3ラウンド進出となった。
3位以下の発表では、歴代『ウルトラ』優勝者の能勢一幸(3位)・長戸勇人(9位)・瀬間康仁(29位)・稲川良夫(49位)、歴代『FNS1億2000万人のクイズ王決定戦』優勝者の永田喜彰(14位)・布川尚之(26位)・根岸潤(27位)ら、かつてクイズ王番組を沸かせた有名プレイヤーの名前が続々と呼びあげられた。
【第2ラウンド(48人→18人通過)】
第2ラウンドは「横ローリングクイズ」。まず、第1ラウンド通過者が得点順に列を作り、上位の者から順に8人が解答席について早押しクイズに挑戦(9人目以降は順番待ち)。「お手付き・誤答をするか、3問のうちに正解を出せなかった場合は解答席を譲って列の最後尾につかなければならない」という条件の中で、先に2問正解した18人が3ラウンド進出というルールだ。
このラウンド開始時点で早押し機についていたのは、能勢一幸(3位)・伊藤寿規(4位)・中野亨(5位)・鷹羽寛(6位)・加藤裕之(7位)・遠藤聡(8位)・長戸勇人(9位)・山本剛(10位)という面々。いきなりの有名プレイヤーのマッチアップに、場内の注目が集まる中、読まれた1問目。
Q.「皆さんの大学時代の飲み会は一気飲みが盛んだった/ことと思いますが…」
予選最上位の能勢が「慶応大学」と答え、いきなりの誤答(正解は「とんねるず」)という予想外の幕開けとなった。
久々に早押しクイズをするプレイヤーが多かったこともあってか、その後も誤答が目立ち、序盤はなかなか勝ち抜けが出ない膠着状態が続く。最終的に80問以上の問題を費やし、第3ラウンド進出者の18人が決定。夫婦でローリングを突破した長戸勇人・祐子をはじめ、第1ラウンドで好成績を残した上位陣はほぼ順当に勝ち上がった中で、予選3位の能勢が失格するという大波乱が見られた。他にも『ウルトラ』優勝者の稲川・瀬間、『FNS』優勝者の永田・布川・根岸、『史上最強のクイズ王決定戦』(以下『史上最強』)準優勝者の五十嵐ら、テレビクイズで実績十分のプレイヤーが失格、この先の厳しい戦いを予感させた。
【敗者復活戦(敗者全員→12人復活)】
敗者復活戦で行われたのは「星占い星座別早押しクイズ」。敗者全員を星座別に12組に分けて1問先取の早押しクイズを行い、各組1名が復活というルールだ。
「12人でひとつの席を争うみずがめ座」から「1対1で雌雄を決するうお座」まで、星座によって競争率が大きく異なる中、『ウルトラ』優勝者の瀬間(おひつじ座)・能勢(やぎ座)、『マンオブ』優勝者の松山弓子(おうし座)・加藤実(ふたご座)・西脇正純(みずがめ座)、『史上最強』準優勝者の五十嵐(いて座)らが勝負強さを発揮し、敗者復活を果たした。
【第3ラウンド(32人→8人通過)】
第3ラウンドは32人を8人ずつ4組に分けてのコース別クイズ。いずれのコースも8人を抽選で4組に分けてのペア戦で、勝ち抜けるのは各コース1組という狭き門だ。「クイズ中、ペアでの相談OK」という、ペア戦ならではの趣向を取り入れた第3ラウンド。クイズ力とチームワークを発揮し勝ち上がるのは、果たしてどのチームなのか?
【第3ラウンドA:ビジュアルクイズ】
第3ラウンド最初の企画は「ビジュアルクイズ」。画面に次々と表示される3つのヒント(文章2つ・画像1つ)を見ながら行う早押しクイズで、先に5ポイントを獲得したペア1組が勝ち抜けとなる。
1問目は「ブティックの名前に由来」「清水宏次朗、沖田浩之はここからスカウト」という2つのヒントから、五十嵐実・長戸勇人のペアが「竹の子族」を幸先よく正解。
続く2問目は「アリストテレスの提灯」。かつて『史上最強』のカプセルクイズにおいて、五十嵐が単独正解を決めたことでもおなじみの問題だが、画像を見ただけで正解したのは鷹羽寛・望月厚のペアだった。
序盤の正解でリズムをつかんだか、クイズの流れは完全にこの2組のマッチレースとなり、7問目終了時点で両チームが3ポイントという互角の展開に。しかし、五十嵐・長戸ペアが8問目の「ジョー・ディマジオ」を画像だけで答えてリーチをかけると、鷹羽・望月ペアは10問目を痛恨の誤答で窮地に。直後の11問目に五十嵐・長戸ペアが「ケルン大聖堂」を正解し、『ウルトラ』優勝者と『史上最強』準優勝者のコンビが準決勝へと駒を進めた。
【第3ラウンドB:リレークイズ】
続いての企画は「リレークイズ」。1問1答形式のクイズに対し、正解が出るまで、もしくは解答権が2巡するまで各チームが順番に解答していく(解答する順番は、事前に早押しクイズで決定)。正解した1人は解答席から離れ、先に2人とも正解したペアが勝ち抜けというルールだ。
解答席に2人いる時はペアで相談が可能だが、どちらかが正解したあとは1人でクイズに挑まねばならないとあって、「わかった問題が来た場合、どちらが先に抜けるか」という戦略が重視される企画……のはずだったのだが、
「長さ2メートル以上と、哺乳類の中で最も長い盲腸を持つ動物は何でしょう?」
「「スーダンの呪術師」と呼ばれた悪役レスラー、アブドーラ・ザ・ブッチャーの本当の出身国はどこでしょう?」
といった問題にどの組も苦戦し、なかなか勝ち抜けが現れないという予想外の展開となった(ちなみに正解は「コアラ」「カナダ」)。それでも4問目で蒲田みどり・北川義浩の東大クイズ研ペアが「初めて宇宙からtwitterにつぶやいた日本人宇宙飛行士」を正解、5問目には瀬間康仁・林廣幸の立命・名大ペアが「工場などで行われる“KYT”の意味」を正解して、2組がリーチという状況で迎えた8問目
「太宰治の小説『走れメロス』の最後の一文で、「勇者は、ひどく」の後に続く言葉は何でしょう?」
ここで解答席に残っていた瀬間が「オッペケペ節……じゃなくて『赤面した』!」と自らの『ウルトラクイズ』優勝時のウイニングアンサーをネタ振りに使いながら勝ち抜けを果たした。
【第3ラウンドC:通せんぼクイズ】
第3ラウンド3つめの企画は、『ウルトラクイズ』準決勝でおなじみの通せんぼクイズ。クイズファンには説明不要の形式だろう。ただし、今回はペア戦ということで「通過問題のみ“1問2答クイズ”が出題され、2つの答えを1人1つずつ、相談せずに答えることができた場合のみ正解」という特殊ルールが採用された。通過クイズ時には対戦相手だけでなく、パートナーとのとの駆け引きも重要なポイントとなる。また、長期戦を避けるため、20分の制限時間が設けられた。
このコースは企画名から内容の想像がつきやすかったこともあって、早押しクイズに自信を持つプレイヤーが集結。激しい押しが繰り広げられる中で、最初に3ポイントを獲得して通過問題への挑戦権を得たのは、菊地晃史・岩田浩幸ペアだった。そして注目の通過問題。
「現在、上野動物園に/いる……」
いち早く解答権を獲得したのは能勢。まずはボタンを押した能勢が「リーリー」と答えると、続けてペアの脇屋恵子が自信なさそうに「シンシン」と答え、見事に両者正解。そして、これが能勢・脇屋ペアにとって3ポイント目となり、入れ替わりで通過問題に挑戦することに。
「文部科学省の/……」
解答権を獲得したのは、またしても能勢。この時点では自信がなさそうな脇屋だったが、能勢が先に「文化庁」と答えると、間髪入れず「スポーツ庁!」と解答。『ウルトラ』王者・能勢と『決戦!クイズの帝王』4週勝抜・脇屋の「キング・アンド・クイーン」が、電光石火の早業で準決勝進出を決めた。
【第3ラウンドD:イントロクイズ】
第3ラウンド最後の企画は『クイズ ドレミファドン!』風のイントロクイズ。1問10点のイントロクイズ、20点のウルトライントロクイズ、30点の超ウルトライントロクイズを各10問・計30問出題し、終了時点で最高得点を獲得していたペアが勝ち抜け(同点の場合はサドンデスで決着)となる。
このコースは序盤から阿部秀樹・小笠原信周ペア、松本順司・新崎盛吾ペアが飛ばし、それを道蔦岳史・中村知弘ペアが追うという展開で進み、第2セット終了時点で阿部・小笠原ペアが110点、松本・新崎ペアが80点、道蔦・中村ペアが80点という得点状況となった。
迎えた第3セット。5問目終了時点で阿部・小笠原ペアと松本・新崎ペアがともに170点まで点を伸ばし、一方の道蔦岳史・中村知弘ペアは80点。後がないこの局面で爆発したのは道蔦。6問目から9問目までを4連答と、29問目で見事に200点とトップに! しかし、阿部・小笠原ペアも負けじと最終問題を正解し、200点で同点首位に。注目の同点決勝のサドンデスで出題された『スローモーション』(中森明菜)を奪取したのは道蔦! 今大会のベストバウトともいえる三つ巴の大激戦を制し、中村・道蔦ペアが準決勝最後の切符を手にした。現役時代に得意としたチャージを思わせる鋭い押しを連発し、「全部取らないと勝てないという状況になれば、自然と力が出るものですね」と語る道蔦には、場内から大きな拍手が巻き起こった。
【準決勝(8人→4人通過)】
準決勝は「札上げ三択クイズ」。問題と選択肢が読み上げられた後、正解と思う番号のボードをボードをかかげ、正解なら1ポイントというシンプルなルール。先に7ポイントを獲得した4人が決勝進出となる。
このラウンドより小倉アナがタキシードを着て登壇(!)。しかも、ここから小倉アナ自ら問題を読みあげるとあって、厳粛な雰囲気が漂う。そんな中で、1問目から5問連続正解というロケットスタートを決めたのは『第12回ウルトラクイズ』覇者の瀬間。そのあとを同じく『ウルトラ』覇者の長戸・能勢と『第4回史上最強』準優勝の五十嵐が追いかける。結果的に、この4人がそのまま決勝進出を決め、ビッグタイトルの保持者ならではの大舞台での強さを見せつけた。
予選1位の道蔦は、残念ながらここで敗退。この日の道蔦は、ここまで予選1位 → 2ラウンド免除 → イントロコース勝ち抜けということで、残念ながら通常の早押しクイズをせぬまま敗退となってしまった。場内のクイズファンからは「道蔦さんの早押しが見られなかったことは残念」声が少なからず聞かれたことを、ここに記しておこう。
【決勝】
決勝はシンプルな早押しクイズ。1問正解で1ポイント、お手付き・誤答は3回休みで、先に7ポイントを先取した者が、栄えある「マンオブシニア」の初代優勝者となる。
決勝進出者は『第12回ウルトラ』優勝者・瀬間、『第13回ウルトラ』優勝者・長戸、『第15回ウルトラ』優勝者・能勢、『第4回史上最強』準優勝者・五十嵐。テレビでは実績十分の4者ながら、学生時代に『マンオブ』のタイトルを手にしているのは長戸ただ一人(ちなみに2Rの横ローリングを突破したのも長戸のみ)。長戸が『マンオブ』に続いて『マンオブシニア』のタイトルまでも手にするのか? それとも瀬間・能勢・五十嵐が阻止するのか? 第1問、
「若者にはよく聞こえるが中高年に/は聞きとりにくい……」
で「モスキート音」を正解したのは瀬間。その後も「卒業」「韋駄天」「さくら友蔵」「人類の進歩と調和」を次々と正解。早々に5ポイントを積み重ね、優勝まであと一歩と迫る。しかし16問目、勝利を焦ったか
「パスポートはふつう海外旅行に必要な旅券/のことですが……」
で「査証」と答えてしまい、痛恨の誤答に(問題は「スポーツ大会のドーピング検査に使われるパスポートといえば“何”パスポート?」と続き、「生体パスポート」が正解)。ここで訪れた瀬間の3問休みという大チャンスを活かしたのは能勢。
「その名は先住民の言葉で「偉大なもの」という意味。2015年8月/マッキンリーから……」
で「デナリ」を正解し、いち早くリーチをかける。さらには長戸も
「形は似ているが重さは比較にならないことから、ことわざで釣り合わない/……」
で「提灯に釣鐘」をひねり出し、5ポイントに到達。瀬間に追いつき、さらに能勢をも射程圏内にとらえる。そして、能勢6点・瀬間5点・長戸5点・五十嵐2点で迎えた21問目。
「今年2月に、未完に終わった幻の小説『四つの手記』が発見され話題となった、『土曜夫人』『夫/婦善哉』…」
確定ポイントで完璧な押しを決めたのは……能勢! 直後「織田作之助!」と答え、栄えある「マンオブシニア」の優勝者となった。2点差の2位には瀬間・長戸が同点で並び、なんと歴代『ウルトラ』優勝者がワン・ツー・スリーフィニッシュという決着となった。
かくして幕を閉じた「Man of the Year Senior 2015」。エンディングで、小倉アナからは「来年、もっと大きな会場でお会いしましょう!」との挨拶があったものの、実際に次回以降が開催されるかは、現段階では未定という。しかし、この日集まったプレイヤーたちの情熱は、そして、クイズファンたちの期待は、きっと「マンオブシニア」を一夜限りの夢で終わらせることはないはずだ。それが来年になるのか、数年後になるのかはわからない。しかし、この日クイズファンが見た夢の続きが、いつかまた見れることを期待しよう。
なお、この日の模様は、2月に『イチゲンさん』(テレビ東京系)で放送される予定だ。興味のある方は、ぜひチェックをしてほしい。
(レポート:湯本敏樹)