Subscribe / Share

Toggle

NEWS

クイズにかけた熱い夏! 『第2回ニュース・博識甲子園』観戦記(PART1)

2019年8月24日、株式会社スマートニュースのイベントスペースにて、日本クイズ協会主催の高校生向けクイズ大会『第2回ニュース・博識甲子園(全国高等学校総合クイズ大会)』全国大会が行われた。会場に集結したのは、7月に全国8都市で行われた予選会を勝ち抜いた8チーム×3人の計24名。予選に参加した103校182チームから選ばれた精鋭たちは、どのような戦いを見せてくれたのか? クイズに取り組む全国の高校生の目標として新たに創設されたこの大会のレポート記事を「QUIZ JAPAN」の短期連載にてお届けする。(取材・海辺暁子、撮影・神保達也)

関連記事:クイズに賭けた青春!『第1回ニュース・博識甲子園』レポート(PART1)

素顔を見せる試合前の高校生たち

「ライバルじゃありませんよ。友達です」
試合前の選手控え室。栄東高校の安達虎太郎くんを目の前にして、桜丘高校の東言(ひがしごん)くんは少し照れながら言った。

栄東高校は昨年の優勝校であり、今回の予選ペーパークイズも全体の2位で通過した強豪。安達くんはその栄東チームのリーダーで、今大会でも他校から一目置かれる存在だ。

一方の桜丘高校は、昨年日本テレビ系で放送された『高校生クイズ2018』の優勝校。今回の『ニュース・博識甲子園』にも、前述の東言くん・双子の兄の東問(もん)くん・彼らの盟友の小林雅也くんという、当時と同じメンバーで参戦した。

『高校生クイズ2018』は「地頭力」をテーマとしており、そこで出題されたひらめき問題の数々は、いわゆる競技クイズとは大きく異なるもの。そんな番組で優勝を勝ち取った3人が、全く傾向が違う『ニュース・博識甲子園』においても予選を軽々突破。今大会で解説を担当したクイズ作家の日高大介さんは「満を持して殴り込みをかけてきた」と表現していたが、まさしくそんな印象だ。しかも予選第2位の栄東高校に10ポイント差をつけ、堂々トップ通過の快挙だった。

そんな桜丘高校の東言くんに筆者が「地頭力もあって、こっち(『ニュース・博識甲子園』)も1位通過とはすごいね」と声をかけたところ、「本業はこっちです」と笑いながら、しかしきっぱりとした答えが返ってきた。実は、彼は少し前に大阪で開催された中高生向けの競技クイズの大会『若獅子杯』でも見事優勝。地頭力だけでないことは、今回の参加者の多くが知るところであった。

「では、栄東は最大のライバルということだね」と筆者が言った後に冒頭の一言。
「ライバルではなく友達」。そう言われた安達くんも照れ笑いで「お前早く自分のチームの席に戻れよ」と返す。優勝候補と目されるチームのエースどうしながら、なんとほほえましいやり取りだろうか。

高校生たちは日ごろ別の大会で顔を合わせている者も多く、他校であっても仲がいい。控え室では緊張感は全く感じられず、むしろ騒がしいほどだった。

そんな最中、隣の本戦会場ではスタッフによる早押しボタンのチェックが始まり、控え室がどよめく。何事かと思い近くの高校生に聞いたところ「ボタンの音がいい」との答えが返ってきてのけぞりそうになった。

「ボタンの音に“いい”とか“悪い”があるの?」筆者が尋ねると、「ビーとかファーとか、気持ちの良くない音を出すボタンもあるんです」とのこと。というわけで、“いい音”の早押しボタンで本戦スタート!

関連記事:クイズに賭けた青春!『第1回ニュース・博識甲子園』レポート(PART3)

誤答から始まる波乱の幕開け

『ニュース・博識甲子園』の本選では準々決勝(8チーム→4チーム)・準決勝(4チーム→2チーム)・決勝(2チーム→1チーム)の3ラウンドが行われる。

まずは準々決勝「勝ち抜け早押しクイズ」。チーム内で先鋒・副将・大将を決め、それぞれが先鋒戦・副将戦・大将戦を戦う。いずれの勝負も8人一斉の早押しクイズで、5ポイント先取で勝ち抜け。先鋒戦は3人、副将戦は2人、大将戦は1人勝ち抜けることができ、勝ち抜けた順によってポイントが付与される(先鋒戦は勝ち抜け順に10P・9P・8P、副将戦は勝ち抜け順に11P・10P、大将戦は勝ち抜けチームに12P)。また、勝ち抜け出来なかったチームにも正解した分のポイントは与えられる(ただし、誤答2回で失格となり、その場合は0ポイントとなってしまう)。

エースを先鋒戦に起用し確実にポイントを狙うか、大将戦に登板させてたった1席しかない勝ち抜けの大量点を狙うか……。各チームの戦略が勝敗を大きく左右する形式だ。

まずは先鋒戦。

鄭 俊 (宮城・仙台第二高校3年)
鈴木直路(埼玉・栄東高校3年)
越川大輝(神奈川・横浜翠嵐高校2年)
山田純也(長野・松本深志高校2年)
山下知大(愛知・旭丘高校2年)
東 言 (三重・桜丘高校3年)
山川李成(大阪・大阪星光学院高校2年)
井本和樹(兵庫・灘高校2年)

ここは8人中3人勝ち抜けることができる比較的広き門。それだけに、なんとしてもポイントをモノにしておきたい。筆者は「確実に取ろうとエースを投入するチームが多いのでは?」と思ったのだが、チーム内で予選成績が2番目のメンバーを持ってきたチームが多かった。

各校の選手紹介の際には、モニターに予選成績のレーダーチャートが映し出される。苦手なジャンルを補い合っているチーム、得意不得意が全員似通っているチームなど様々だが、やはり高校生。歴史・地理・国語など学校で勉強する分野では高得点を取っている者が多い。逆に芸能・スポーツは全体的に弱いように見受けられる。余談だが、予選のペーパークイズを解いてみた筆者は、ほぼ芸能・スポーツでしか点を稼げなかったのであります……。

いよいよ第1問。問題読みは昨年同様、クイズ協会代表理事の齊藤喜徳さんが行う。

「問題。デコボコのデコと/いう……」

かなり早いタイミングで旭丘高校の山下くんがボタンを押し、悩んだ末、制限時間の5秒ぎりぎりで答えを絞り出す。

「5」

しかし、無情にも不正解のブザー。問題の全文はこうだ。

「凸凹(でこぼこ)の“凸”という漢字のように中央が高くなったスコアボードは立体商標に登録されている、兵庫県西宮市にある「高校野球の聖地」と呼ばれる球場は何でしょう?」(正解:阪神甲子園球場)

山下くんはデコ(凸)やボコ(凹)の画数を答える問題だと早合点し、「5」と答えたのだった。クイズ解説担当の日高大介さんがここで選手たちに一呼吸置かせる。「まだ問題の傾向がわからないとは思いますが、ストレートではなくちょっと一捻りあるんだなと、ここで戦い方のコツを掴んでもらえたらなと思います」

この問題に関しては、問題作成の田中健一さんが後に次のように語っていた。
「確かに一般的なクイズ大会ではデコボコのデコ(凸)の画数を問う問題は多いんですけど、この大会はストレートにはいかないということをここでわかってほしかったし、まず1問目でそのことが周りに伝わったのではないかなと思います」
また「昨年の問題を分析していれば、早いタイミングで押すのは危険だということがわかるはず」とも(昨年も田中さんが問題作成)。

とはいえ筆者からすると、テレビカメラも入っており緊張感が半端ではないこの場面で、1問目から果敢に押す勇気には「さすが高校生だな」と感心せずにはいられなかった。分析していたとしても反射的に押してしまうこともあるだろう。つい押してしまったが故、時間ぎりぎり一杯悩んでの解答だったのではないか思う。

1問目から誤答が出てしまい、緊張感が走る会場。あと1つ誤答をすると失格となってしまうため、山下くんに大きなプレッシャーがのしかかる。日高さんのアドバイスがあったからか、2問目は皆慎重になった。

「アメリカの新聞『ワシントン・ポスト』では、政治家の発言の真偽を検証するファクトチェックの格付けに用いられている、嘘をつくと鼻が/伸び……」

押したのは大阪星光学院の山川くん。

「ピノキオ」
「正解!」
(問題の続きは「嘘をつくと鼻が伸びる童話の主人公は誰でしょう?」)

最後まで聞けば多くの者が正解を出せるだろう問題だけに、早すぎるポイントで押して間違ってしまうと非常にもったいない。しかし待っていては解答権を取られてしまう。押しのポイントは勝負の要だ。

関連記事:3年ぶりの現地開催を制したのは初優勝・東大寺学園! 『第5回ニュース・博識甲子園』全国大会の模様をレポート

怒涛の追い上げ! 前回王者の落ち着きと責めが光る

10問ほど終えたところで全く動きがない前回王者の栄東高校。しかし先鋒の鈴木くんは「今までは問題の傾向を掴む時間だと思っています」と、焦った様子はない。さすが王者の風格だ。

17問目、1問目で間違えていた旭丘の山下くんが再び誤答、失格となる。途中で1問正解していたので、そのまま終えれば勝ち抜けられなくても1ポイントは獲得できたのだが、失格により痛恨の0ポイントとなった。

まず4ポイントで王手をかけたのは堅実にポイントを積み重ねた大阪星光。直後に灘も正解し4ポイント到達。桜丘・松本深志が3ポイントで後を追う。そこで出されたのがこの問題。

「オリーブ公園、エンジェルロード、二十四の瞳/……」

大阪星光の山川くんが「小豆島」を正解し、一抜けが決定。

「攻めと守りがしっかりできました」と山川くん(問題の全文は「オリーブ公園、エンジェルロード、二十四の瞳映画村などの観光スポットがある、香川県に属する瀬戸内海で2番目に大きい島はどこでしょう?」)

残る席は2つ。王手をかけた灘、3ポイントの桜丘・松本深志の争いになるかと思われたが、ここから怒涛の3連続正解を見せ、一気に王手を掛けたのは栄東の鈴木くん。1問誤答しており、「もう間違えられない」というプレッシャーの中での見事な連答だった。

その後、桜丘の東言くんが正解し、こちらも4ポイントで王手。灘・桜丘・栄東の3校が勝ち抜けまであと1問に迫る。

「パークロロエチレンや石油系溶剤を使い、洗濯物を水に/……」

押したのは栄東の鈴木くん。

「ドライクリーニング!」
「正解!」

大きな拍手に包まれる会場。中盤までほぼ動きがなかった栄東がここへきて一気にたたみかけ、2位通過をもぎ取った(問題の全文は「パークロロエチレンや石油系溶剤を使い、洗濯物を水に浸さずに行う洗濯のことを、英語で何というでしょう?」)

栄東高校チームメイトの安達くんは言う。
「自分だったら、桜丘が正解して並んだ時点で気持ちがはやり、そこを抑えようとして押せていなかったと思う。それでも鈴木くんは2位抜けにこだわって押しにいってくれて本当にうれしかったし、すごいと思いました」

その後、栄東と同じく1×を背負った桜丘の東言くんが正解し、勝ち抜け3チームが決定。

早々と王手をかけていながら、あと1問が答えられず悔しい表情を見せるのは灘高クイズ同好会会長の井本くん。ポイントが取れず謝る仙台第二の鄭くんに、笑顔で「大丈夫、大丈夫」と声をかける、今大会唯一の女性プレイヤー・両方菜津子さん。勝つためには知識はもちろん、チームワークの良さも重要だ。

勝ち抜けた大阪星光学院・栄東・桜丘の3チームには、順に10P・9P・8Pが与えられた。

続く副将戦はメンバー選定にチームごとの差が見られた。副将戦の勝ち抜けは2チームに対し、大将戦の勝ち抜けは1チームのみ。みな実力は十分なので、エースを大将戦にぶつけても勝てない可能性がある。2人勝ち抜けられる副将戦にエースを投入しポイント獲得の可能性を広げるチームと、エースを大将戦に温存し最後の一撃を狙うチーム。各チームの思惑が渦巻く副将戦、制するのはどのチームか?

先鋒戦の結果は以下の通り。

大阪星光学院 10
栄東     9
桜丘     8
松本深志   4
灘      4
横浜翠嵐   2
仙台第二   0
旭丘     0

(PART2へ続く)

【Paravi独占配信!】「第2回 ニュース・博識甲子園」全国大会
https://www.paravi.jp/title/45525

■Paravi(パラビ)とは?
Paravi(パラビ)は、TBSホールディングス、日本経済新聞社、テレビ東京ホールディングス、WOWOW、電通、博報堂DYメディアパートナーズの6社が設立した「プレミアム・プラットフォーム・ジャパン」の定額制見放題を中心とした動画配信サービスです。人気ドラマやバラエティといったエンターテイメントや経済番組、オリジナルコンテンツなどを配信。月額925円(税抜)で楽しめます(登録から30日間は無料)
https://www.paravi.jp/
Return Top