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INTERVIEW

運営・鈴木達郎さんと第8回大会優勝者・池田麟太郎さんに聞く
高校生経済クイズ選手権『エコノミクス甲子園』とは何か(PART1)

エコノミクス甲子園を主催する認定NPO法人金融知力普及協会の事務局長 鈴木達郎さん(右)と、第8回大会優勝者の池田麟太郎さん(左)。池田さんは、第12回全国大会で司会を務めた時の衣装を着て、インタビューに臨んでくれました。

2019年2月に13回目の開催を控えた、全国高校生金融経済クイズ選手権『エコノミクス甲子園』。金融・経済といったエコノミクスというジャンルにフォーカスした高校生対象のクイズ大会だが、金融や経済と聞くと「なんだか難しそうだな」と、反射的に身構えてしまう高校生は多い。しかし、エコノミクス甲子園は、むしろそういう人にこそ興味を持ってもらいたいというスタンスで開催しているという。運営を務める、認定NPO法人金融知力普及協会の鈴木達郎さんと、第8回大会優勝者であり、現在も大会OBとして運営に協力する池田麟太郎さんへの取材を通じて見えてきた『リアルな現場の声』は、本大会が持たれがちな『お堅いイメージ』を払拭するほど、愛と信念に溢れたものだった。

国が動かないのなら自分で作る
手探りで始まったクイズ大会

——まずはエコノミクス甲子園が、どのような大会なのか教えてください。
鈴木 大会の一番のコンセプトは、「今、本当に必要なお金の知識を、クイズを通して高校生に身につけてもらいたい」というものです。大会を勝ち抜くための勉強や練習の過程で、楽しく経済学を学んでもらえるように、毎回趣向を凝らしています。

——なぜ経済学を高校生に学んでもらいたいのでしょうか。
鈴木 欧米諸国は、NPO団体が学校教育のカリキュラムを組むなど、国が経済教育に精力的に取り組んでいます。それに比べ日本はかなり遅れていて、ほぼ何もしていないといっていい状態です。以前から、各学校に授業をやらせてもらえないか打診したりしていたのですが、思っていたような反応を得られず実現には至りませんでした。なので、「もう国が動くのを待ってても仕方ない」「学校の外で楽しく学べる機会を作ってしまおう」と、始めたのがエコノミクス甲子園なんです。

——鈴木さんは元々クイズに関する知識はあったのですか。
鈴木 それがまったくなかったんです。ですので、1回目は完全に手探りでの運営でした。アメリカに、ゴールドマンサックスをはじめとする金融・投資機関が何億円も出す「エコノミクス・チャレンジ」という、学校や州で対抗する経済クイズ大会があって、これを参考にしつつも経済学に特化した問題を出題したのですが、果たして高校生が答えられるのかも分からなくて……。こちらも色々考えて、あるクイズでは「3問難しいのを出して、4問目から普通のレベルで」みたいなシナリオを描いていたのに、2問目であっさり正解されちゃったんですよ。考えてみれば無理もなくて、第1回大会の参加者は、みんな高校生クイズの決勝常連みたいな子たちばかりだったんです。あの頃は高校のクイズ研究会がどんどん少なくなっていた時期だったんですが、裏を返せば『それでも残っている精鋭部隊』ということ。だから、簡単な問題を出していたらみんな全問正解されてしまうと、2回目からめちゃくちゃ難しくしたんです。そうすると今度は参加して頂いていた地方銀行さんから「これは難しすぎるよ!」と言われてしまって。それくらいスタートは手探り状態でした。

——手探り状態だったスタートから、現在のような大会にまで成長したきっかけは何だと思いますか。
鈴木 やはりプロにクイズ監修をしてもらうようになったのが大きかったです。これはあとから知ったのですが、第1回を開催する前に、クイズファンの間では「なんか怪しい団体が大会やろうとしてるぞ。誰か繋がってるのか?」と噂が飛び交っていたらしくて。こちらはそういうファンの人たちがいることさえ知らないのに(笑)。
池田 クイズファンのみなさんも、まさか素人が大会を開こうとは思っていなかったんでしょうね。
鈴木 そう、それで実際に何人か大会に観に来てくれたんです。第1回というのが、東京、大阪、福岡での地方大会のあと、東京で決勝大会を行って、優勝したらニューヨーク研修に行ける、という現在の基盤となっていたものでした。決勝は早押し勝ち抜け問題。全体的に難しい問題を続けて、ちょっと答えられそうになかったら難易度を下げる、という手法を取っていたら、それを観たクイズファンの方から「あれは良くなかったね」と指摘が入りまして。
池田 出場経験のある身としても理解できる指摘だと思います(笑)
鈴木 例えば難易度を下げたタイミングの解答者が女子高生だったりしたら、参加者を見て手加減して問題を選んでいると思われかねない。そういうときは問題に番号を振っておいて、解答者に選ばせるといいよ、とアドバイスをもらったんです。こちらはクイズの作法さえ知らない素人だったので、「なるほど!」と納得したのと同時に、そういうところもしっかり考えないといけないのだと学ばされました。

——プロの監修が入るようになったのは、そういったクイズファンの方からの繋がりですか。
鈴木 そうです。第1回から観に来てくれた、クイズのプロデュースをしているユークレイル・エイトの藤田雄亮さんに「色々助けてください!」と、ゴリ押しでお願いして。早速2回目から監修して頂いたおかげで、やっとクイズの大会として形になったと思います。

ルールの戦略性をいち早く掴み
有名進学校チームを制した

——そんなエコノミクス甲子園も、現在では全国から517校、参加チームは1,297という大規模な大会になりました。
鈴木 各都道府県の銀行さんや、金融会社のみなさんからも協賛して頂いて、本当にありがたく思っています。それに、池田くんもそうですが、大会の運営スタッフは100%参加者OBなんです。もう彼らなくては運営不可能なので、感謝しています。

——池田さんが参加して優勝されたのはいつの大会でしょうか。
池田 1,023チームが参加していた、第8回です。
鈴木 第1回から7回まで、ラ・サールや開成、灘、東大寺といった、有名男子進学校が順繰りに優勝していたので、「今年はラ・サールかなぁ」なんて思っていたら、池田くんの県立千葉高校という男女共学公立校が優勝して。
池田 それからはずっと公立高校が優勝していますよね。
鈴木 そう、まさに池田くんのチームは大会のジンクスを打ち破ったんです。

——有名進学校の強豪達に勝つことができたのは、何か理由があるのでしょうか。
池田 クイズに正解する知識は必要なのですが、答えを導き出すために瞬発力が試されるクイズより、戦略性が重視されるルールが多い大会だったからかもしれません。そういう背景もあって、大会ではドラマチックな展開になることが多々あります。
鈴木 3人1チームで行った大会の話です。チームごとに横並びになり、2択問題に正解したら次の人にバトンタッチ、不正解なら正解するまで交代できないというルールのクイズでした。有名進学校のクイズ研究会に所属しているチームが優勝有力候補だったのですが、1問の責任が大きいルールだからプレッシャーに負けてしまったんでしょうね。間違えるごとに焦りすぎて、9問連続で外してしまって早々と敗退していったこともありました。
池田 僕が参加した大会でも、伝説になった1戦がありまして。
鈴木 ああ、『産業スパイクイズ』だね(笑)
池田 当時の参加者の間ではいまだに語り草になっていますよ(笑)。2人1組ペアの合計18チームを、6チームずつ3つに振り分けた架空の企業として争うという形式です。4択問題に札をあげて答えるのですが、この6チーム中2チームは他社からの産業スパイなんです。スパイが正解すると本来の自分のチームに得点が入るので、見た目の正解チーム数と実際に入るポイントにズレが出てきます。そこから誰がスパイなのか推測しなくてはいけないという……。
鈴木 クイズの問題以外に考えなくてはいけないことが常にある状態だよね。
池田 問題と問題の間に『取締役会議』を開いて、半数以上の賛成が得られれば怪しいチームを追放することができるという、『人狼』的な要素があるルールなのですが、もうみんな疑心暗鬼でドロドロです(笑)
鈴木 スパイじゃないチームが追放されちゃったりして。
池田 そうです。スパイじゃないチームが追放されると、自分のチームの得点自体も減ってしまうので二重に痛いんです。
鈴木 池田くんはそのスパイ役だったよね。
池田 はい、スパイでした。追放されると困るので、会話の端々で取締役会議自体を開かせないような発言を盛り込んだりして、騙しまくりました。
鈴木 当時の参加者が池田くんと同じように運営スタッフとして入ってくるんですよ。それでみんな言うんです。「あんな人間不信になりかねないルールは絶対嫌だ!」「後輩達には味あわせたくない」って。でも一部は「もっと痛い目に遭わせてやろう」とか言う人もいて。
池田 僕は……後者ですね。
鈴木 あははは、そうだろうね(笑)
池田 僕のチームは、相方が頭もよくて、クイズもできる知識担当。僕はいかに戦略を早く理解して最善のプレーに徹するか、という分業制だったのが、戦略性が重要なクイズに上手くハマったのかなと思います。有名進学校に勝つことができたのは、それが大きいですね。
鈴木 こういった逆転もあり得る仕様のルールにしているのは、もちろん意図的にやっていることなのですが、悩みどころでもあります。転機といいますか、以前第5回の大会に参加する学校の子に、「僕らのクイズ研究会にとって、夏の甲子園が『高校生クイズ』で、冬の甲子園は『エコノミクス甲子園』なんです!」と言ってもらえたことがあったんです。その時はとても嬉しかったのですが、よくよく考えてみると、それってどうなんだろうと。一番の目的はたくさんの参加者に楽しく学んでもらうことなのに、クイズ研究会じゃなきゃ優勝できないようなものにしてしまうと、門が狭まってしまうという危機感を感じたんです。

「あんなのクイズじゃない」
競技性とスリリングさの間で感じたジレンマ

——クイズ研究会は圧倒的にクイズの基礎があるでしょうから、それ以外の学生とのバランスを取るのは非常に難しそうです。なかにはエコノミクス甲子園で初めてクイズ研究会の存在を知る学生もいるでしょうし。
鈴木 とはいえ、クイズが先鋭化して「競技クイズ」と呼ばれるようになっただけあって、戦っている方も見ている方も楽しい、スポーツのようなスリリングな要素も必要だと思っているんです。ですから、早押しクイズも地方大会では必ずやるし、難しい知識を持っているだけでは勝てないように、金融や経済を軸にした凝ったルールのクイズも織り交ぜているんですね。それが成功しだしたのが、池田くんが優勝した第8回大会くらいからかな?
池田 そうですね。
鈴木 エコノミクス甲子園を始めた当初はガチのクイズ研究会からは「あれはクイズじゃない」というような反応も当然あって、一時期はクイズ研究会の強豪校が一切出場しなくなったこともあったんです。

——競技性を重視してしまうと『エコノミクス甲子園』の本来の趣旨から外れてしまうというジレンマですね。
鈴木 そうなんです。あくまで金融や経済に興味を持ってもらうことが目的で、勝つことが目的でないですから。現にクイズ研究会が楽しめるクイズにしてしまうと、普通科の高校やエコ甲と親和性の高い商業高校すら出場しなくなる危惧もあったんですね。大会への出場を高校を回ってお願いすることもあるのですが、過去の出場校の中に有名進学校があることがわかると、「ちょっとうちの学校は……」と尻込みしてしまう先生も現実にいらっしゃったんです。

——第8回大会で池田さんのチームが優勝されたことは、その潮目を変えたきっかけになったのではないでしょうか。
鈴木 それはあるかもしれません。以前、四国の地方大会を見に行ったことがあるのですが、明らかに異質な集団がいたんですね(笑)。ツナギを着た6人組で、「面白い!」と思って話をしてみたら「東京行きてえから」って(笑)。

——若者らしい動機でいいですねえ(笑)。
鈴木 6人で勉強して、強い2人が中心のチームを作ったと言うんです。で、ほかの4人はというと「僕ら応援団っす」と。もう、その熱さに心打たれましたね(笑)。彼らは結局勝てなかったんですけど、エコノミクス甲子園がきっかけでそういう光景が見れたことが凄く嬉しかったですね。

——勝つことが目的でないならば、学生の出場理由はそういう理由でもいいですよね。これがきっかけで金融や経済に興味を持ってもらうことが狙いですから。
鈴木 そうなんですよ! 年金も保険も、どこまでも突き詰められるものですけど、我々はそれを求めているわけではありません。何を調べたらそれが分かるとか、そもそも経済や金融に関する法律があるんだということを知ってるだけで、人生のどこかで役立つ時がくるはずなんです。少なくともその四国の子たちは、友達の中では一番経済や金融に詳しいはずだし、彼らからきっかけをもらう人も出てくると思うんです。ですから、そういう門戸を広げられるという意味で、クイズは凄く懐の深い世界なんだと気付かされましたね。入試やテストのようなイベントだったら、きっと四国の彼らとは会えなかったでしょうから。

——独立した知人に「確定申告って何?」と言っている人がいるのですが、彼も学生時代にエコノミクス甲子園のことを知っていたら、今とは状況が変わったかもしれません。
鈴木 金融・経済だけではなくて、社会に出ると保険も税金も年金も、知らなければならないことが急に増えるわけじゃないですか。だけど、まだまだ日本では高校でも大学でも習う機会は少ないので、そのまま社会に出ることになる人がたくさんいます。ですから、そういうことにならないためにも、クイズを通して金融や経済を勉強してもらいたいですし、そのきっかけになるかもしれないエコノミクス甲子園ならではのクイズ形式にもこだわっていきたいんです。

——瞬発力よりも戦略性や理解力が重視されるのは、そういった理由だからなんですね。
鈴木 クイズのルールをいかに早く把握するかは、ビジネスにも通ずる資質ですよね。株のルールを全然知らないで株を買ったら負けるじゃないですか。だから優勝をつかむ学校というのは、本当にミスがないんですよね。もちろん誤答をすることはあるけど、その時はちゃんとリスクを減らす動きをしてたりするんです。

——素早く本質を把握することが大事ということですね。
鈴木 おっしゃる通りです。経済の現場でも、何に投資するとか、何かを売買するということに正解はないわけです。

PART2に続く)

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