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クイズに賭けた青春!『第1回ニュース・博識甲子園』レポート(PART5)

2018年8月25日(日)、株式会社スマートニュースのイベントスペースにて、一般社団法人日本クイズ協会が主催するクイズ大会『第1回ニュース・博識甲子園(全国高等学校総合クイズ大会)』が開催された。クイズに青春を賭けた高校生たちの舞台として、新たに創設されたこの大会の模様を、将棋ライターの松本博文が取材。そのレポート記事を「QUIZ JAPAN」の短期連載にてお届けする。

決勝

『第1回ニュース・博識甲子園』には、全国の高校から103チームが参加した。全国大会に進んだのは8チーム。そしていよいよ、2チームのみが決勝の舞台に残った。

栄東高校は、予選1位、全国大会1回戦3位、準決勝1位。
開成高校は、予選2位、全国大会1回戦2位、準決勝2位。

奇しくもどちらも『高校生クイズ』の準優勝者を要するチーム同士の対戦となった。優勝候補本命同士の頂上決戦と言って、異論はないだろう。

栄東・安達「知識の必要なボード系はかなり上位でつけてきているのかな、と思うんですけど、全国1回戦の早押しが3位と、その他のボード、筆記に比べると、ちょっと危ない感じだったので、決勝のルールは早押しなので、そこらへん、ちょっと気を引き締めて、臨みたいなと思っています」

開成・後藤「知識量は栄東に負けていることは自覚しているんですけど、早押しでなら負ける気はしないです。上野なんかは(高校からクイズを始めて)2年目なんですけれども、他の(中学から始めた)5年目かそれ以上の実力を持っていて。藤松は5年やってて、その実力はよく知ってるので、ちゃんとやれば、勝てるんじゃないかと思います」

決勝の形式は「ノルマ制早押しクイズ」。3人対3人でおこなう、早押しクイズである。1問正解で1ポイント。先に15ポイントあげたチームが優勝となる。

ただし、チームのメンバー1人が獲得できるのは、5ポイントまで。そのノルマを達成したメンバーは壇上から降りて、以後の解答権はない。

チームメイト同士の相談はできない(ただし、アイコンタクトはOK)

お手つき、誤答は、問題を読み切って、相手チームに解答権が移動する。シンキングタイム、スルーカウントは、いずれも5秒。

クイズの形式は多様で自由である。しかし、伝統的に最後の決勝は、できうる限り、シンプルな形式の早押しクイズが採用されることが多いようだ。例えば『ウルトラクイズ』や、かつての『高校生クイズ』の決勝は、早押しの10ポイント先取だった。

『ニュース・博識甲子園』の決勝も、その伝統の上に立った形式といえそうだ。ただし、3人ずつの団体戦という性格をうまく考慮に入れている。

決勝戦開始

両チームの選手がボタンに手をかけて、いよいよ決勝戦が始まった。

第1問:今年4月、「映画を残す、映画を活かす。」をミッションとしてオープンした、「NFAJ」という略称を持つ6番目の国立美術館は何でしょう?

これは誰もボタンを押さずにスルー。正解は「国立映画アーカイブ」。テレビのクイズ番組であれば、問題の合間に解説や出場者のトークなどが多くはさまれるが、競技クイズの場合はテンポよく、あっという間に進んでいく。

第2問:ハイブリッド車や電気自動車のモーターに使われる磁石の主な原料となる、原子番号60、元素記号Nd/…

ランプがついたのは開成・藤松君。「ネオジム」と答えてまず1P。隣りの後藤君が、ぽんぽん、と肩を叩いた。

第3問:サッカーの試合で審判を補助するシステムで、GL/…

栄東・森田君もボタンを押したが、ランプがついたのは開成・後藤君。「GLTはゴール・ライン・テクノロジーの略ですが、VARは何という言葉の略でしょう?」。先まで読んで、「ビデオ・アシスタント・レフェリー」を答え、後藤君も1P。

第4問:シャツ、バンド、ホテルなどの名前に使われている、沖縄の方言で「めでたいこと」「縁起の良いこと」という意味の/…

栄東の森田君、安達君が押して、森田君のランプがついた。「かりゆし」と答えて1Pを返した。

両校実力伯仲を思わせる立ち上がりである。会場には競技クイズ日本一を決める『第3回Knoock Out』で優勝した徳久倫康さん(30歳)も姿を見せ、熱心に観戦していた。

第6問:国際光学委員会、国際コーヒー機関、仮想通貨を用いた資金調達に共通する、アルファベット3文字の略称は何でしょう?

問題文が読み切られた後で、開成・後藤君が押した。ランプがついた後、机に指で字を書く仕草をした。後藤君が口を開く。

「ICA」。しかし、これは不正解だった。

「うーん、惜しい」

司会の日高さんが、思わずうなった。1回戦の大将戦では、実力に裏打ちされた手堅い押し方で制した後藤君。早押しでは、ここで初めてのミスが出た。最後を「A」にしたのは、「機関」を「Agency」と考えたからだろうか。

さて、惜しい、となれば正解は何か。解答権は栄東に移る。ややあって、森田君が押した。

「ICO」

正解のチャイムが鳴って、森田君が2P目。手を合わせて「ごめんなさい」という仕草をしたのは、拾わせてもらった、という意味だろう。

国際光学委員会(International Commission for Optics)
国際コーヒー機関(International Coffee Organization)
仮想通貨を用いた資金調達(Initial Coin Offering)

いずれも略称は「ICO」である。

第6問「正岡子規」は栄東・安達君が、第8問「阿寒摩周国立公園」は開成・上野君がそれぞれ正解し、1P獲得。

第8問:日本国憲法第25条第1/…

開成・後藤君が、確信を持った手つきで押した。

「生存権」

不正解のブザー。後藤君がチームメイトの方を向いて、手を合わせて謝る。1回戦大将戦でパーフェクトに近い勝ち方をした後藤君が、決勝では手痛い連続ミス。解答権は栄東に移って、問題文が読み切られる。「日本国憲法第25条第1項の条文からタイトルを付けた、福祉事務所の職員・義経えみるを主人公とする柏木ハルコの漫画は何でしょう?」

問題文が読まれる間に、栄東の3人がめくばせをして、誰が押すかを決める。そして押したのは、佐藤君。『健康で文化的な最低限度の生活』を答えて、佐藤君も初の1Pを獲得した。

第10問「一入(ひとしお)」は開成・安達君が正解し、ここまでの総合ポイントは、開成3P、栄東5P。開成のミスの分だけ、わずかに栄東がリードをしていることになる。

第11問:日本でも今年から名前が変更され、略して「AS」と呼ばれるようになった、曲に合わせてさまざまな動きを/行い…

栄東・森田君が「アーティスティックスイミング」を正解。以前は「シンクロナイズドスイミング」と呼ばれていた種目だ。

クールな開成とは対照的に、栄東のメンバーはみな、正解するとよく笑う。

第12問『螢雪時代』を栄東・森田君が獲り、これで森田君が4P。ノルマ達成まで、あと1P(開成3P、栄東7P)
第13問「北川悦吏子」を開成・藤松君が正解し、開成4P、栄東7P。
第14問「スルタン」を栄東・安達君が正解し、開成4P、栄東8P。
第15問「ユニコーン企業」を開成・後藤君が正解し、開成5P、栄東8P。
第16問「ゲーテ街道」を開成・上野君が正解し、開成6P、栄東8P。

第17問:村上春樹が2007年から10年かけて長編全7作の翻訳を完成させた、私立探偵フィリップ・マーロウ/が登場…

栄東の佐藤君と安達君に押し勝ったのは開成・後藤君。しかしここで、少し逡巡した。

「マクドナルド」

不正解のブザーが鳴る。後藤君はチームメイトに謝った後、がっくりと落ち込む。決勝に入って、冷静沈着だったはずの後藤君に、ミスが目立ち始めた。解答権が栄東に移り、問題文が全て読まれる。「…フィリップ・マーロウが登場するハードボイルド小説で知られる、アメリカの作家は誰でしょう?」

先ほどは押した安達君は動かない。佐藤君、少し迷った様子だったが、押してしっかり「チャンドラー」(レイモンド・チャンドラー)を答えて正解。じっと見守っていた隣りの森田君が、大きく拍手をした。これで開成6P、栄東9P。

ちなみに開成・上野君が解答した「マクドナルド」も、ハードボイルド小説の巨匠である。

第18問「チャーン賞」を開成・藤松君が正解し、開成7P、栄東9P。
第19問「宙組(そらぐみ)」を開成・上野君が正解し、開成8P、栄東9P。

第20問:幕末に6度に渡って蝦夷地を訪れて、アイヌの人々との交流を深め、明治時代に北海/…

開成の上野君と後藤君の手が動いた。しかし、ランプがついたのは、栄東・森田君。

「松浦武四郎!」

北海道という地名をつけた、伊勢出身の探検家の名。森田君のはっきりした声の後に、正解のチャイムと、大きな拍手が響いた。6人のうち、最初に5Pのノルマを達成したのは栄東・森田君だった。

栄東・森田にとって、今大会は大学受験前、最後のクイズの舞台。個人としては、やるべきノルマはクリアした。

「じゃあ、あとは頑張って」

そう言いながらチームメイトの安達君、佐藤君の肩を叩いて、森田君は降壇した。森田君は抜けて、戦いは続く。開成8P。栄東10P。まさにデッドヒートだ。

第21問:イラストレーター・みふね/…

電光石火のスピードで開成・上野君が押した。栄東・安達君も反応していたが、及ばなかった。

「いらすとや」

正解のチャイムが鳴って、冷静な上野君が小さくガッツポーズ。「イラストレーターのみふねたかしが運営する、多くのかわいいイラストを提供している、フリー素材サイトの名前は何でしょう」。多くのファインプレーが出た本大会でも、屈指の早押しだったかもしれない。

開成・上野君は4Pで、ノルマ達成にリーチをかけた。

第23問:2学期が始まる9月1日、山奥の谷川の岸にある小さな小学校/…

またもや押したのは、開成・上野君。これまでのクールな表情とは少し変わって、口元に笑みが漏れている。少し自信がなかったか。『やまなし』と答えて不正解。チームメイトに向かって、手を合わせた。決勝戦、開成はこれで通算4回目の、先の誤答となる。

解答権が栄東に移って、問題文が読み切られる。「2学期が始まる9月1日、山奥の谷川の岸にある小さな小学校に突然現れた転校生を主人公とする、宮沢賢治の童話は何でしょう?」

安達君はボタンを押す気配がない。先ほどと同様に、佐藤君に譲るつもりだろう。問題を読み切られた瞬間に、佐藤君は押した。『風の又三郎』で正解。先ほど開成・上野君が答えた『やまなし』も、同じ宮沢賢治の作品である。

第26問「今田美桜(いまだみお)」を開成・藤松君が答えて、開成10P、栄東11P。上野君に続き、藤松君もこれで4Pで、ノルマ達成まであと1Pとなった。

第27問:唐揚げにして食べたり、ペットとして飼われ/たり…

いち早く開成・後藤君が押した。

「ウーパールーパー」

確信を持って答えたように見えた。しかし、不正解のブザー。後藤君は少し驚いた表情。開成は先に間違えてしまうパターンが目立つ。

観戦者としては「あれ、ウーパールーパーって、唐揚げにしたかな……。そうか、やっぱりしないのか?」と思ったところだった。

競技としては、点数が拮抗したシリアスな場面でのミスだった。しかし、間違い方が面白かったためか、チームメイトの上野君の表情が少しゆるんだ。

解答権が栄東に移って、問題文が読み切られる。「唐揚げにして食べたり、ペットとして飼われたりすることもある、日本で唯一の淡水産のカニは何でしょう?」。

ここでも安達君はボタンから手を放していた。安達君と佐藤君の目があって、うなずき合う。佐藤君が押して、解答権を得る。

「サワガニ」

開成がミスで落とした問題を、栄東が着実に拾い続けていく。これで佐藤君も4P(開成10P、栄東12P)。

改めて、「ウーパールーパー」の解答について尋ねられた開成・後藤君。

「たぶん唐揚げになると思った」

会場から笑いが起きて、少し雰囲気がゆるんだ。再び緊張感を取り戻して、いよいよ最終盤に。

第28問:光と影の対比を用いた/…

光の速さで開成・後藤君が押す。少し遅れて開成・上野君、栄東・佐藤君の手も動いていた。ランプがついたのは後藤君。

「レンブラント」

「光の魔術師」とも呼ばれたオランダの画家を答えて、後藤君が挽回する。開成11P、栄東12P。

第29問:映画化もされた宮下奈都の小説『羊と鋼の森』に登場する秋野、柳、板取、主人公の外村に共通する職業/…

開成の後藤君と藤松君が押して、後藤君にランプがついた。

「よしっ」と後藤君が小さく声を発した。

「調律師」

後藤君も4Pをあげ、開成は3人ともがリーチをかけた。後藤君の表情が大きくゆるむ。総合ポイントは、開成、栄東ともに12P。まさに実力伯仲、どちらが勝ってもおかしくはない状況のまま、最終盤を迎えた。

第29問:シルクロード経済ベルトと、21世紀海上/…

開成・藤松君が押した。

「一帯一路!」

中国の習近平国家主席が提唱した、経済圏構想のことである。正解のチャイムが鳴り響く。すぐに藤松君に、後藤君が抱きついた。

ミスの分だけ、ずっと苦しい状況が続いていた開成は、ここでついにポイントで栄東を逆転(開成13P、栄東12P)。そして、まずは藤松君がノルマを達成した。

藤松「後藤と上野には、予選も決勝も今まで引っ張ってもらったので、あとは二人に託したいと思います」

ここで藤松君も降壇。開成、栄東ともに、壇上に2人ずつが残されている。

第30問:「プレドミネンタリー・ホワイト」というルールによって、白いウェアや/…

いち早く押したのは、栄東・佐藤君。

「ウィンブルドン!」

白いウェアやシューズの着用が義務付けられてる、テニスの四大大会の一つ。正解のチャイムが鳴って、佐藤君は大きく手を叩いた。会場からも大きな拍手。

これで両校ともに13Pでイーブン。そして佐藤君もノルマを達成した。

降壇する際、佐藤君は安達君について、こう語った。

「今の栄東の部長なので、あとはもう、部長が最後ビシッと決めてくれる……。落ち着いてお願いします」

苦笑する安達君。決勝の間中ずっと、安達君は手元のタオルを握りしめていた。

栄東・安達君は3Pで、あと2P。開成は後藤君、上野君がともに4Pで、あと1Pずつとなっている。

第31問:街全体が世界遺産に登録され、オランダのレーワルデンとともに今年の欧州文化首都に選ばれている/…

観戦していた、競技クイズ日本一の徳久倫康さんも、思わずうなるような鋭利な押しだった。クールな表情で押したのは、開成・後藤君。

「ヴァレッタ!」

地中海に浮かぶマルタ共和国の首都を答えて、見事に正解。後藤君と上野君が肩を叩き合っう。これで後藤君はノルマ達成で勝ち抜け。序中盤ではややミスが目立ったが、最後は確固たる知識量を示すかのような、堂々たる戦いぶりだった。

『第1回ニュース・博識甲子園』。先にチャンピオンシップポイントを取り、優勝に王手をかけたのは、名門・開成高校だった。残る上野君が1Pをあげれば、それまでとなる。

「あと1点なんで、ぱぱっと決めて欲しいなと思います」

上野君にそう言葉をかけて、後藤君が降壇した。

一方、中盤ではずっとリードを保っていた栄東は、いまは逆に追い込まれた。安達君はあと2Pを残す。

開成・上野君。栄東・安達君。両者がボタンに手を置いて、問題が読み上げられる。

第32問:「愛」「夢」「幸せ」を示す英単語の頭文字から名付けられた、「E-girls」「EXILE」「三代目 J Soul Brothers」などのグループが所属する、芸能事務所は何でしょう?

問題文は全て読みきられた。そして押したのは、栄東・安達君。

「LDH」
「その通り!」

司会の日高さんが大きく叫んだ。安達君が4P目をあげ、土壇場で追いついた。

開成・上野君も「LDH」は頭に浮かんでいた。押せていたところを、慎重に見送った。後で振り返ってみれば、ここは大きな運命の分かれ目だったかもしれない。

開成14P、栄東14P。両チームがリーチをかけ、最後に1P取った方が優勝。作っても作れないような展開で、決勝戦は最終局面を迎えた。

開成の藤松君、後藤君。栄東の森田君、佐藤君。ノルマを達成して、解答者席を離れ、壇上から降りたチームメイトも、祈るような心持ちだっただろう。

最後の問題が読み上げられる前、開成・上野君は両手をこすった。栄東・安達君は左手で眼鏡に触れた。

第33問:インフレの種類で、「駆け足」という/意味…

両者ともに、ほぼ同時に押した。

「しまった」という表情が浮かんだのは、栄東・安達君。

赤いランプがついた。解答権を得たのは、開成・上野君だった。

上野君の表情は、自信に満ちているように見えた。観戦者の多くが、ここで開成の優勝だと思った。上野君がゆっくりと解答を読み上げる。

「ギャロッピング・インフレ」

観戦者の多くが、ここで正解のチャイムが鳴るものと思った。しかし鳴ったのは――。

鳴ったのは、正解のチャイムではなかった。不正解を告げるブザーの音を聞いて、上野君の口元がほんの少し動いた。手がほんの少し、ゆらりと揺れて、どういう反応をしていいのか、とまどっているようだった。

そして、上野君は次の瞬間、自分がどのようなミスをしたのか理解した。問題の構造を理解した。これは、パラレルだ。机に両肘をついて、手のひらを合わせた。チームメイトに向かって、謝っているようだった。

解答権は栄東・安達君に移る。問題文が最後まで読み上げられる。「インフレの種類で、「駆け足」という意味があるものは「ギャロッピングインフレ」ですが、「忍び足」という意味があるものは何でしょう?」

壇の下では栄東・佐藤君が、手を組んで、祈るように安達君を見つめた。壇の上では開成・上野君が、手を合わせたまま、ずっと顔を伏せていた。

栄東・安達君は最後まで問題文を聞いて、ボタンが押した。緑のランプが光る。安達君がマイクに口を近づける。そして、しっかりと答えた。

「クリーピング・インフレ」

鳴ったのは、正解のチャイムだった。全身で喜びを表す、栄東の安達君、森田君、佐藤君。

ずっと顔を伏せ、机に肘をつき、手を合わせたままだった開成・上野君は、そのままの姿勢で、拍手をした。

『第1回ニュース・博識甲子園』、優勝を飾ったのは、栄東高校だった。

安達君は、苦しい状況からの逆転勝ちだった。

最後の問題で先に上野君に押された時には「ああ、やばいな」と思った。しかし、安達君には確信がなかった。インフレには複数の種類があるのはわかっている。だから、そのままくるのか、それとも「ですが」で続くのか。

栄東・安達「(開成・上野君に)ボタンを取られたこと自体に、『ああ、やばいな』と思ったんですけれど、誤答だったので……。自分で押し勝っての優勝ではなかったですけど、本当に嬉しいです」

そしてすぐさま、森田君と佐藤君が、壇上の安達君のもとに駆け寄る。

栄東・安達「森田先輩が受験生ながら、めちゃくちゃ強かった。後輩の佐藤が予選から通じて、知識量では圧倒していたので。ボードだったりとか。決勝も、相手の誤答でかなり取ってくれたので、あれがなかったら、全然、変わっていたと思います」

敗れたとはいえ、開成の戦いぶりも見事だった。

開成・上野「こういう場で、あと1点に苦しめられることが多くて、今日はそれを払拭しようかなと思ってきたんですけれど。まあ、最後もそういう感じになって、不甲斐ない結果に終わってしまって、後藤と藤松が積み上げてくれたポイントも、無駄にしてしまったわけなので……。ちょっと、苦しい展開でしたね」

いやいや、名勝負でした。司会の日高さんがそう振り返る。最初からずっと見守った観戦者も、同じ思いであろう。

表彰式の設営がおこなわれる間、選手は会場の椅子に座って待っていた。壇上から降りて、チームメイトの元に戻った開成・上野君は、ずっと顔を伏せて、うなだれたままだった。

表彰式

表彰式に先立って、まずは記念撮影がおこなわれた。

優勝の栄東高校が壇上に立つ。『東大王』の水上颯さんから、優勝カップが贈られた。

こうして『第1回ニュース・博識甲子園』は幕を閉じた。知識を愛する高校生たちの夏休みの終わりを飾るにふさわしい、素晴らしいイベントだったと思う。

もちろん、初回ということもあって、いろいろな課題はあった。それでも、筆者が見る限りでは、「大成功」と評価されてよいと思われる。誰よりも間近で選手を応援していた指導者や保護者の皆さんからは、その結果にかかわらず、おおむね好評の声を聞いた。

そして何よりも、参加した選手がみな、とても満足そうだった。

クイズは自由である。定まった形式はない。いろいろな形式のクイズ大会が存在すればよいだろう。それでも本大会のような、オーソドックスに広く深く知識を問う形式の、全国規模のクイズ大会が存在し続けることは、クイズを愛する多くの高校生から望まれていることだろう。

クイズは、青春を賭けるに十分な競技である。日頃から、広く深く知識を習得することによってはじめて、一瞬の勝負を制することができる。

クイズは老若男女、どんな人にも開かれている。それでも同じ高校の仲間とチームを組んで、団体戦で真剣な勝負ができるのは、高校の3年間をのぞいて、他にない。

本大会がこの先もずっと、知識を愛する高校生たちが輝ける舞台であり続けることを、願わずにいられない。
(文:松本博文)

【Paravi独占配信!】「第1回 ニュース・博識甲子園」全国大会
https://www.paravi.jp/title/30740

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