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クイズに賭けた青春!『第1回ニュース・博識甲子園』レポート(PART1)

2018年8月25日(日)、株式会社スマートニュースのイベントスペースにて、一般社団法人日本クイズ協会が主催するクイズ大会『第1回ニュース・博識甲子園(全国高等学校総合クイズ大会)』が開催された。クイズに青春を賭けた高校生たちの舞台として、新たに創設されたこの大会の模様を、将棋ライターの松本博文が取材。そのレポート記事を「QUIZ JAPAN」の短期連載にてお届けする。

関連記事:クイズに賭けた青春!『第1回ニュース・博識甲子園』レポート(PART4)

クイズの甲子園、開幕

甲子園といえば、春夏の高校野球の全国大会が行われる、兵庫県西宮市の球場である。

それに習って、他の分野の高校生の全国大会の通称には「甲子園」がつくことが多い。例えば「俳句の甲子園」などがそうだ。

そうして今年、「クイズの甲子園」の場が新たに設けられた。それが『ニュース・博識甲子園』だ。正式名称は「全国高等学校総合クイズ大会」。オーソドックスなクイズのスタイルで、古今東西の知識を問う。

多くの「甲子園」と同様、本大会でも、地方予選が行われる。

形式は至ってシンプル。予選のペーパーテストの3人の合計点数で、一律に全国大会進出チームを決める。実力がまっすぐに評価される、ストロングスタイルである。

予選は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7か所でおこなわれた。これは地方在住の高校生にとっては、かなり助かることだろう。いずれ47都道府県で予選をおこなうことが、主催者側の夢だという。

予選が行われたのは、7月16日、海の日だった。

各地の予選に参加したのは、103チーム、316人。チーム3人がそれぞれ、三択と記述、合わせて200問を45分以内に解く。ジャンルは10に分かれていて、公民、地理、歴史、国語、科学1、科学2、生活、芸能音楽、スポーツ、趣味娯楽。文系4、理系2、その他4となる。

学校で習うこともあれば、それこそ普段のニュースを目にしてわかることもある。

Q79.プロテニス選手・大坂なおみの父の出身国は?
(1)キューバ
(2)ハイチ
(3)パナマ

この予選の後に、大坂なおみ選手は、全米オープンで日本選手と初めて優勝を飾った。全米オープンで活躍した前後ならば、知る機会が増えたかもしれないが、そのずっと前からチェックしていた選手はさすがといえようか。

最新の話題の一方で、過去の知識まで問われる問題もある。

Q99.日本相撲協会の理事長を務める八角親方の、現役時代のしこ名は?
(1)旭富士
(2)大乃国
(3)北勝海

いずれも横綱を張った名力士だ。ただしその現役時代には、現在の高校生たちは、誰も生まれていない。

予選の結果は以下の通り。

1位 栄東高等学校(埼玉県)677点
安達虎太郎、森田晃平、佐藤彰真

2位 開成高等学校(東京都)638点
後藤弘、上野李王、藤松健太

3位 旭丘高等学校(愛知県)587点
糸山剛博、木下智貴、岡田弦大

4位 松本深志高等学校(長野県)574点
楠裕人、富田玲史、富取新太

6位 川越高等学校(埼玉県) 547点
法島香月、尾崎優希、坂井隼

7位 仙台第二高等学校(宮城県)540点
鄭俊、両方菜津子、川嶋大斗

9位 福岡高等学校(福岡県)512点
中川隼太、麻生太一、藤澤守遥

10位 慶應義塾高等学校(神奈川県) 505点
高野俊、賀久登仁、町素直


栄東はいくつものチームを出して、5位と8位にも入っている。一方で開成は、ただ1チームでの参加。この両校がトップのレベル、層の厚さとともに、双璧なのは間違いないのだろう。

今回は第1回目でもあり、またいろいろな事情で参加できなかった有力校もあったであろう。しかし仮に他のどこが出てきても、栄東と開成は優勝候補であることに違いはなさそうだ。

個人成績のランキングは、壮観である。詳細はこちらのページを御覧いただきたい。

もちろん、一発勝負のペーパーテストなので、出来不出来はあるだろうが、おおよその実力は反映されているだろう(全国大会では、学校ごとに、さらに詳細な成績が公開された)。

まずこちらは予選総合1位の栄東。

2年前の『高校生クイズ』で決勝まで進んだのは、当時1年で、現在は3年の森田晃平君(230点、3位)。残念ながら今年は地方予選で姿を消した。栄東では『高校生クイズ』が終わった後に競技を引退するのが通例である。しかし今年はこの大会があるため、森田君はここまで活動を続けた。

「どんな分野でも全てのクイズを愛する」というのがモットーだという。

全国トップの佐藤彰真君(240点、1位)はまだ1年。学業の成績も学内でずっとトップだという。部長で2年の安達虎太郎君(207点、7位)とともに、強力なトリオで臨む。

「中学1年の頃から、この栄東のクイズ研究部でクイズに真面目に取り組んでいるメンバーで、得意ジャンルも3人それぞれ違って個性があるチームなので、そのへんで、チームワークをいかしていけたらな、と思います」(森田君)

続いて予選総合2位は、クイズ界の名門中の名門、開成。

開成の後藤弘君(201点、11位)は昨年の『高校生クイズ』で決勝に進出。最後は桜丘(三重)のさわやかカップルに敗れた。

「男子校の友情ではカップルの愛は破壊できないなと思いました」

後藤君の名言に、多くの視聴者がうなった。ただし、後藤君は相当なイケメンである。ゆくゆくは先輩の伊沢拓司君や水上颯君のように、女性人気が沸騰するものと予想される。

チームメイトはTBS『東大王』に出演していた2年の上野李王君(233点、2位)。そして藤松健太君(204点、9位)。全員2年生である。

特筆すべきは松本深志。3人ともに高校に入ってからクイズの勉強を始めたという。1年生の富取新太君はまだ数ヶ月の勉強期間である。それで3人の総合が、全国4位の成績は立派である。

関連記事:クイズに賭けた青春!『第1回ニュース・博識甲子園』レポート(PART2)

開会式

8月25日。夏休み終盤の日曜日に全国大会は行われた。

会場はスマートニュースのイベントスペース。渋谷と原宿、いずれからも歩いていけるところだ。

会場は8チームが戦うにはほどよいスペースだった。選手だけではなく、家族や友人の応援団も入ることができる。

13時。開会式が始まる。真夏の太陽が照りつける屋外の甲子園とは違って、本大会は涼しい屋内で開催されることはありがたい。

まずは「甲子園」らしく、学校名が記されたプラカードを掲げての、選手入場。栄東、開成、慶應義塾、福岡は、白い半袖シャツに黒いズボンの制服。仙台第二と旭丘はカジュアルな普段着。川越はえんじのシャツの上に、「くすのき祭」と書かれた青いはっぴ。松本深志高校は「MATSUMOTO FUKASHI」と書かれた青いTシャツで統一していた。

選手入場後、栄東キャプテンの安達虎太郎君が選手宣誓をする。

「われわれ選手一同は日頃身につけた知識やリテラシーをもとに、正々堂々戦うことを誓います」

簡潔にして、本大会の趣旨をよく汲んだ上での、決意表明だった。

関連記事:クイズにかけた熱い夏! 『第2回ニュース・博識甲子園』観戦記(PART1)

団体戦の妙味

決勝1回戦(準々決勝)は「勝ち抜け早押しクイズ」。
各チームの3人が先鋒、中堅、大将に分かれて、5問正解で勝ち抜けの早押しクイズを行う。

3ラウンドともに、1問正解で1P(ポイント)。2問誤答すると失格となり、0Pとなってしまう。ここまでは3ラウンドとも共通だ。

あとは以下のように、勝ち抜けのチーム数と、ボーナスポイントが少しずつ違う。

先鋒戦:3チーム 1位10P 2位9P 3位8P
中堅戦:2チーム 1位11P 2位10P
大将戦:1チーム 1位12P

最後は3人の合計得点によって、総合順位が決定。8チームのうち、上位4チームが準々決勝に進出する。もし同点の場合には、大将同士の早押しクイズによって決定戦を行う。

ここは十二分に戦略が問われるところだ。誰をどこに配置するかで、まったく展開が変わってくる。ボーナスポイントだけに注目すると。

1位の得点は、大将戦(12P)>中堅戦(11P)>先鋒戦(10P)
配点の合計は、先鋒戦(27P)>中堅戦(21P)>大将戦(12P)

このあたりはどう考えるべきか。

将棋の高校選手権は、3人の団体戦である。ここでもやはり戦略がものをいう。大将から順に実力者を並べる必要はない。

例えば、相手チームが超高校級を大将に据えると予想される際には「当て馬」を出し、残る2人で2勝を狙う、という作戦もある。一方で、相手の大将がスーパーエースであろうとも、やはり一番の実力者を当てて、結果が出ることもある。

考えればキリがないところだ。

また大きな特色として、監督やサポーターは、3ラウンドのうちに1度、30秒だけ、タイムアウトを取ることができる。そこで選手にアドバイスなどを与えられる。

関連記事:クイズに賭けた青春!『第1回ニュース・博識甲子園』レポート(PART5)

先鋒戦

戦いが始まる前に、選手の紹介があった。総じてみんな、言葉が明朗で、あいさつが上手いと感じた。

また改めてチーム3人の成績が紹介された。10ジャンルごとの詳細なデータもわかる。上位チームと下位チームでは、それなりの差はある。しかし、予選の点数は、全国大会が始まってしまえば、何のアドバンテージもない。どこのチームもゼロの状態からのスタートとなる。

各チーム、先鋒戦に立てたのは、どのようなメンバーか。(順位表記は30位以内まで)

開成高校 2年 上野李王(233点、2位)
栄東高校 3年 森田晃平(230点、3位)
仙台第二 2年 川嶋大斗(228点、4位)
松本深志 2年 楠 裕人(213点、5位)
旭丘高校 3年 木下智貴(212点、6位)
川越高校 3年 法島香月(198点、12位)
福岡高校 2年 麻生太一(186点、19位)
慶應義塾 2年 賀久登仁(155点)

この布陣を見る限り、各校、先鋒戦に主力を投入した感がある。特に開成と栄東は選手層が厚い。誰が出てきてももちろん、最上位候補である。

ボタンチェックまで終わって、いよいよ競技開始。

問題作成は田中健一さん。『第16回アメリカ横断ウルトラクイズ』優勝者で、現在はクイズ作家として活躍されている、クイズ界の著名人だ。

司会進行は同じくクイズ作家の日高大介さんが、読み上げは日本クイズ協会代表理事の齊藤喜徳さんが担当した。

 第1問:古代にはフェニキア人の拠点として栄え、現在は東がキリスト教徒、西がイスラム教徒の居住区と/なって…

川越・法島君のランプがつく。予選では地理、歴史ともに高得点をたたき出している。

「エルサレム」

無情にも、鳴ったのは不正解のブザーだった。「現在は東がキリスト教徒、西がイスラム教徒の居住区となっているレバノンの首都はどこでしょう?」と続く問題に、チームメートに向かって手を合わせて謝る法島君。正解は「ベイルート」だった。「レバノンの首都」まで聞けば、多くの選手が正解がわかるだろう。法島君、得意な分野で早めに勝負に出て、ここでは結果が出なかった。

難易度にもよるが、早押しクイズでは、問題を最後まで聞いていては、間に合わないことが多い。本大会の1回戦ではこの先、スルーされた問題はほとんどなかった。しかも5○2×という設定上、最初に1×を背負ってしまうと、圧倒的に後が苦しくなる。

飛び出したのは、仙台第二・川嶋君だった。12問目で4Pに達し、リーチをかけてダブルピース。

 第16問:田中圭が演じる主人公をめぐり/…

川嶋君が押して、ランプが光る。小さくガッツポーズをして、高らかに叫んだ。

「おっさんずラブ!」

わずか16問目で5P先取。仙台第二が電光石火で、この激戦区を駆け抜けた。1位通過の仙台第二にはボーナスが加算され、全部で10Pが与えられる。一方で、栄東・森田君は0P、開成・上野君は1Pと、なかなか調子が出ない。その隙をついて、第19問で4Pまで積み、リーチをかけたのは旭丘・木下君。

ずっと押し負けていた栄東・森田君に、初めてランプがついたのは第21問。「リーマンショック」と答えてようやく1P。今年2018年9月は、世界を揺るがした金融危機から、ちょうど10年目にあたる。続く22問目も正解して、ここから怒涛の追い上げを見せた。

第23問。慶應・賀久君は、気持ちがはやったか、速く押しすぎてしまった。押した瞬間にミスに気づき、頭を抱える賀久君。痛恨の2回目の誤答となってしまった。そこまで2Pを積んでいただけに惜しまれる。

 第28問:ブドウ糖を分解して乳酸や酢酸を作る働きを持つ/…

解答権を得たのは松本深志・楠君。既に2○1×の状況だった。ここで間違ってしまえば、失格で2Pも消えてしまう。そして――。

無言で黙っているうちに、非情にもブザーが鳴る。「ブドウ糖を分解して乳酸菌や酢酸をつくるはたらきを持つ、人の大腸菌の99.9%を占めている菌は何でしょう?」、正解は「ビフィズス菌」だった。

正解を聞いた瞬間に、「ああ……」と声をあげる、がっくりとうつむく楠君。脳裏にはその「ビフィズス菌」が浮かんでいた。しかし、確信を持てなかったために、口に出すことができなかった。

答えなければ無条件で失格という状況。ならばダメ元で、答えて損にはならない。答えるしかない。そして楠君は、正解とおぼしき言葉まで浮かんでいた。しかし、黙ってしまう。極限の状況の中では、そうしたことも起こりうる。

慶應義塾に続き、松本深志もこのラウンドは失格で0P。松本深志にとって、この失格は当然ながら大きく、最終盤で、ギリギリの状況を迎えることになる。

続く第29問では、旭丘・木下君が誤答で4○1×となった。1×を抱えただけで、途端にシリアスな状況に追い込まれる。ここで仮に他のチームに抜けられ、2位9P、3位8Pのボーナスポイントを得られずとも、このままじっとしておけば4Pは得られる。一方で2×となれば失格で、0Pになってしまう。

自分の状況。さらには他者の状況。それらを踏まえながらの戦いだ。

第30問:「人をバカにしたり傷つけたりしない笑いを届ける」という意味で名付けられた、「あらぽん」と/…

押したのは4○の栄東、森田君。

「ANZEN漫才!」
「抜けたー!」

日高さんの声が響いて、栄東が2位通過決定、9Pを獲得した。仙台第二の川嶋君が抜けた時点で、森田君は1問も正解できていなかった。そこから、驚異のまくりを見せたわけだ。

残る通過枠はあと1つのみ。

第32問:「いつも使うもの」という意味があり、黒・柿色・/…

開成・上野君が「定式幕」と答える。定番の問題を手堅く取って、4○1×。旭丘に並んだ。

 第33問:自分の容姿にコンプレックスがあった作家・アンデルセンの自伝的物語といわれている/…

1×のリスクを背負う中で、旭丘・木下君が押した。

「ついたのは、旭丘高校!」
「みにくいアヒルの子!」
「抜けた!!!」
「よっしゃあ!!!」

正解のチャイムが鳴り響く。木下君、ガッツポーズ。場内からは大拍手。これで旭丘の3位勝ち抜けが決まった。

劇的な展開に、次の中堅で出場する岡田君は「エンターテイメントでした」と評していた。

開成・上野君は、残念そうな表情を浮かべていた。しかし、しっかり4Pは取った。

先鋒戦の結果は以下の通り。

仙台第二 10
栄東   9
旭丘   8
開成   4
福岡   2
川越   1
松本深志 0
慶應義塾 0

PART2へ)

【Paravi独占配信!】「第1回 ニュース・博識甲子園」全国大会
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