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『高校生クイズ』に受け継がれた『アメリカ横断ウルトラクイズ』のスピリット

『高校生クイズ』に受け継がれた『アメリカ横断ウルトラクイズ』のスピリット

秋の到来を告げるように、今年も『高校生クイズ』の季節がやってきた。『高校生クイズ』とは、実は通称であり、正式名は『全国高等学校クイズ選手権』という。その名の通り、「高校野球」(=全国高等学校野球選手権大会)をオマージュした「クイズの甲子園」だ。1983年の番組スタート以来、参加資格を「高校生・高専生など同じ学校に通う2人1組(第33回までは3人1組)のチームであること」と制限することで生まれる青春ドラマが、多くの視聴者に愛されてきた。

他局の長寿クイズ番組とは異なり、『高校生クイズ』は、何度か大きなリニューアルが行われてきた。一つは司会者の交代による若返り。そしてもう一つは、問題傾向やロケ場所などの大幅な刷新である。近年では、天才高校生たちが超難問クイズを解き続ける「知の甲子園」(第28回~32回)が話題を呼んだが、こちらの路線は『最強の頭脳 日本一決定戦!頭脳王』という特番へと受け継がれ、現在はアメリカをクイズで横断するシリーズが好評を博している。

9月9日に放送された『第36回高校生クイズ』は、そのアメリカ横断クイズ路線の3年目。今年も筋書きのないドラマに胸を躍らされた。そこで展開されるクイズ形式、そして「これぞアメリカ」というロケ地の数々は、かつて同じ日本テレビで放送された、あの伝説の番組を彷彿とさせる。そう、『アメリカ横断ウルトラクイズ』である。

18歳の年(1992年)に『アメリカ横断ウルトラクイズ』が打ち切りになった42歳の筆者からみれば、よもや子供の世代が、グアムで「どろんこ」に飛び込んだり、自由の女神の目前で早押しクイズを競う時代が来るとは、夢にも思わなかった。1998年に1回だけ復活したものの、『ウルトラクイズ』が地上波の番組として新たに制作されることがいかに難しいかという現実を、関係者の証言からもうかがい知ることができたからだ(その辺りの事情は、弊誌『QUIZ JAPAN』でも詳しく特集してきたので、興味のある方は参照されたし)。

それにしても、『高校生クイズ』による『ウルトラクイズ』オマージュは感激的ですらある。「どろんこクイズ」「大声クイズ」「バラマキクイズ」は言うに及ばず、昨年は『第13回ウルトラクイズ』の「コンボイクイズ」が、そして今年は『ウルトラクイズ』で何度も行われた「奇襲クイズ」が再現された。おそらくスポンサーの兼ね合いと思われるが、決してオフィシャルでは”『ウルトラクイズ』の「○○クイズ」”などという表現は使わず、でもわかる人には確実にわかるという、実に巧妙な作りになっている。まさにハリウッド映画のリメイク作品や日本の特撮番組のように、親子2世代で楽しめるのが、近年の「アメリカ横断クイズ」路線の『高校生クイズ』なのである。

では、なぜ不可能とまで言われた『ウルトラクイズ』のリブートに、『高校生クイズ』は成功したのだろうか?

そもそも『ウルトラクイズ』は9月に海外ロケが行われるため、社会人には参加が厳しいという弱点があった。どんなに「人間ドキュメンタリー」を標榜しても、番組サイドが求めるような深みのある社会人は1ヶ月も日本を留守にはできないのだ。『ウルトラクイズ』の後期に、出場者の大半を大学生が占める結果となったのは、クイズを研究する大学生たちに原因を求めがちだが、むしろ、そのスケジュール的な制約に理由があったと感じる。番組が求める「深みのある大人の社会人」の確保がアキレス腱となった元祖『ウルトラクイズ』から、夏休みを利用した「若さあふれる高校生たち」によるアメリカ横断クイズへ。まさに「この手があったか!」と膝を打つ発想の転換だ。もちろん『高校生クイズ』のスタッフは、『ウルトラクイズ』を復活させようとしたわけではなく、あくまで高校生の魅力を引き出す手段として、アメリカロケに行き着いたのだろう。だが、『ウルトラクイズ』の弟分として生まれた『高校生クイズ』が、長い年月を経て兄貴分であった「アメリカ横断クイズ」に回帰したことは、長いテレビ史、クイズ史を俯瞰して見れば、それは歴史的必然の帰結であったとしか思えないほど、ピタリとハマっている。

また、『ウルトラクイズ』が個人戦だったのに対して、2人1組の『高校生クイズ』は、友情や恋愛感情など、出場者に感情移入できるのも強みだ。タレントが出る番組と違い、素人参加型の番組は出演者かどういう人物なのかを説明しなければならないというハンデがある。かつて『ウルトラクイズ』は4~5週間かけて出場者の個性や内面を描き出していたが、リモコン普及によるザッピング時代の到来により、画面をつけた一瞬でキャラクターを把握できるように、わかりやすい肩書きや学歴が必須とされるようになった。いまの視聴者は、個性が確立されるまで「待ってくれない」のだ。

何より『高校生クイズ』は、たった2時間半のオンエア尺である。開始30分(「どろんこクイズ」まで)で、視聴者が追いかけるべき対象を絞り込まなければならないのだ。それゆえ、1回戦で姿を消す8割近くの高校生たちにフォーカスされないことへの不満を例年ネット上で目にするが、制作サイドにとってもこれは苦渋の編集なのだろう。兎にも角にも、素直に感情を発露させ、友や彼氏彼女と泣いて抱き合える高校生たちの姿を観て、胸を打たれない大人はいない。そこには、かつての自分の姿を重ねたり、はたまた自分にはなかったものを羨ましく思いながら観られる仕掛けが施されているからだ。高校生たちの一夏の体験のドラマは、大人たちにとっても青春との再会という、甘酸っぱい2時間半になるのだ。

時代や技術の移り変わりにより、SD画質がHD画質となり画面の味わいは大きく変わった。スタジオパートや画面端のワイプがあることも、『ウルトラクイズ』を親しんだ世代には抵抗感が強いのも事実だろう。それでも、画面の味わいこそは変わったとしても、本質的な面白さは損なわれるどころか、飛躍しているとさえ思う。かつて日本の津々浦々を舞台に高校生たちの青春を描写した『高校生クイズ』が、35年の歳月を重ねて、国内を飛び出して、「アメリカ横断クイズ」という頂(いただき)にたどり着いた。予算やコンプライアンスなど様々な要因で番組をクローズせざるを得なかった『ウルトラクイズ』を知る世代としては、そうしたハードルの山々を乗り越えて企画を実現し、不可能と言われたアメリカ横断クイズを実現させた現スタッフの志と制作能力の高さに敬意を表したい。そして一人でも多くの高校生が普段体験できない感動を味わえるように、番組を長く続けてほしいと切に願う。(QUIZ JAPAN編集長・大門弘樹)

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